津田大介
@tsuda

『メディアの現場』特別号外より

メルマガの未来~オープンとクローズの狭間で

※この特別号外は、メルマガスタンド「夜間飛行」による企画・制作で作られたものです。夜間飛行を通じて購読をしていただいている読者の方のみへの配信となります。今後も不定期で配信していく予定です。よろしくお願いします。

〈聞き手〉
井之上達矢(株式会社夜間飛行代表取締役)

 

特別号外が出ることになった背景

井之上:夜間飛行限定「津田マガ特別号外」のインタビュー、さっそくはじめたいと思います。よろしくお願いします。

津田:よろしくお願いします。

井之上:まず読者のために、この特別号外が出ることになった背景を説明させてください。ええ、そうです。ぶっちゃけた話、「ブロマガ」さんへの対応です(笑)。先月末、弊社とは比べ物にならない圧倒的な資本力を持つドワンゴ社がメルマガ界に参入してきました。『メディアの現場』も配信プラットホームの一つとして利用されていますね。先方は「動画」という新しい付加価値を持っていますし、宣伝力など規模が重要になる分野で勝負をしてもまったく歯が立ちません。夜間飛行としては、何とか競争力を保つためにできることはないかと頭をひねりました。その結果、こうした「テキスト」によるオリジナルコンテンツを夜間飛行で独自に企画・作成して、『メディアの現場』の読者にお送りしてみようということになりました。津田さん、今日はお忙しい中、お時間をいただき感謝しています。それでは前置きはこれくらいにして、さっそく本題ですが……。

津田:せっかくですから、メルマガ論について議論しませんか。実は僕、あちこちで細切れには話しているんですが、しっかりとまとめてメルマガ論を語ったことがないので。実は、井之上さんも出演した9月5日のニコ生「メルマガの未来~ネットはオープンorクローズ...どちらに進んでいくのか」をタイムシフトで見たんですがあれについても、言いたいことがたくさんありまして。(注)

井之上:なるほど。では特別号外第1回は「津田大介の語る最新メルマガ論」でいきましょう。

 

naoyaさんは勘違いしていたと思う

津田:まず、先日のニコ生番組が放送されることになったそもそものきっかけを確認しておくと、元・はてな執行役員最高技術責任者のnaoyaさんが、

「アルファブロガーとか言われてた人のメルマガって、一線退いた芸能人のその後のディナーショーみたいなもんでしょ? 嫌すぎるよねw」
https://twitter.com/naoya_ito/status/237826261022568448

という発言をして、ネット上で賛否が沸き起こったことですよね。その賛否の渦の中から問題提起された「ネットの進む先はオープンかクローズか」というテーマは、僕にとっても非常に興味深い問題です。今日のインタビューでも、その点については、じっくり掘り下げていくつもりです。でも、その話に進む前に、番組全体を通して思ったのは、naoyaさんに「メルマガとはこういうものだ」という思い込みが強過ぎて、現実と乖離があったところですね。

彼は、有料メルマガが「閉じている」理由として、「お金を払わなくては読めない」ことを挙げていました。これはドワンゴの川上会長もつっこんでいましたが、「お金を払わなければ読めない」のは紙の書籍でも同じです。でも紙の書籍は「閉じている」とは言われませんよね。「書籍は立ち読みができるじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、僕の『メディアの現場』ように、無料のサンプルを付けて対応することもできます。加えていえば、アマゾンに並んでいる書籍は立ち読みができない場合がほとんど。ですから、「お金を払わなければ読めないし、立ち読みもできないメルマガというメディアは閉じている」という認識は、そもそも間違っています。新聞にしても、CS放送にしても、世の中の多くの有料の情報はそもそもお金を先に払わないと中身を見ることができないわけです。

また、メルマガには「引用」などの言及可能性が少ない、ともnaoyaさんは指摘していました。これも別にメルマガが「閉じたメディア」だからではなくて、単純に、世の中に出回っているメルマガの量がまだ少ないからに過ぎません。というか、ブログを見てみれば分かりますが、「書籍」を適切に引用言及して話している人もそもそも少ないんですよ。ブログの引用というのは、圧倒的に無料で読めるネット上の情報を引用して話していることがほとんどであって、全体に流通する量が少なければ、引用事例も少なくなるのは当然の話です。メルマガ界でもっとも多くの購読者を持つ堀江さんのメルマガでさえ、毎週1万数千通くらいの規模です。毎週発行される週刊誌や書籍の総冊数に比べても少ないし、これまでに発行されたすべての書籍の数と比べたら、まだまだ圧倒的に少ない。

現在のメルマガは読者とのコミュニケーション要素が目立つため、クローズドに見えるだけであって、他のメディアに比べて「閉じている」という指摘は、間違った印象批評に過ぎないと思いますね。

井之上:カルト化するメルマガがあるのは、メルマガというシステムの問題ではないですよね。

津田:そうです。お布施代わりに書籍や雑誌を買わせてベストセラーにしている団体もありますけど、あれに対して「書籍というシステムがカルトを生み出すのだ」と指摘するのはナンセンスですよね。先日の放送では、川上会長から「でもさ、カルトの方が面白いよね」という本質を突いたコメントも出たわけですが、とにかく、「メルマガは閉じたメディアである。だからメルマガはカルト化する」といった「間違った思い込み」が刷り込まれることで、読み手だけでなく、せっかくの優秀な書き手もメルマガから遠ざかってしまうのは、本当にもったいないことだと思いますね。

1 2 3 4 5 6
津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

その他の記事

少ない金で豊かに暮らす–クローゼットから消費を見直せ(紀里谷和明)
光がさせば影ができるのは世の常であり影を恐れる必要はない(高城剛)
ウェブ放送&生放送「脱ニコニコ動画」元年(やまもといちろう)
フースラーメソード指導者、武田梵声の大阪講演2017開催決定!(武田梵声)
受験勉強が役に立ったという話(岩崎夏海)
ジェームズ・ダイソンのイノベーション魂(本田雅一)
真っ正直に絶望してもいいんだ(甲野善紀)
教育としての看取り–グリーフワークの可能性(名越康文)
世界のクリエイターに愛されるノートの物語(ロバート・ハリス)
2016年米国大統領選候補、スコット・ウォーカー氏が思い描く「強いアメリカ」像(高城剛)
日本が世界に誇るべき観光資源、温泉について(高城剛)
総務省調査に見るネット利用の姿(小寺信良)
なぜ今? 音楽ストリーミングサービスの戦々恐々(小寺信良)
日本人に理想的な短期間ダイエット「七号食」(高城剛)
人間関係は人生の目的ではない <つながり至上社会>の逆説的生き残り戦略「ひとりぼっちの時間(ソロタイム)」(名越康文)
津田大介のメールマガジン
「メディアの現場」

[料金(税込)] 648円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回以上配信(不定期)

ページのトップへ