本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

元を正せば……という話

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.017(2018年3月23日)からの抜粋です。




元を正せば……という話は、意外にも数多く、そして近くにあるものだ。

先週、総務省に近い与党国会議員に電波行政についてヒアリングをしていたところ、放送免許の費用見直しをかけようとしている……という話が出てきた。単純に免許の価格を引き上げて、国庫の収入を増やすだけという単純な話だと思ったが、実は現在の免許更新額は特殊な事情のもとに引き下げられていたのだ。

特殊な事情とはアナログ放送からデジタル放送へと移行するため、国策として地上デジタル放送への切り替えを行ったことだ。このための多額の設備投資が必要な中で、一時的に免許更新料を引き下げて負担軽減を図ったのが現在の価格。おおよそ年額で700億円(全局合計)になる。

しかし、新たに4K放送が始まるとはいえ、カメラはすでに4K化しており、アナログからデジタルへの切り替えに比べれば総投資額は比較的少なくて済む。さらに当時とは電波そのものの経済的な価値も異なるとして、免許更新料の“再算定をしよう”というのが、放送局側が警戒している“値上げ”の真相なのだそうだ。

へぇ〜と思っていたところ、みんながSuicaやICOCAなどで使っているFeliCaという非接触通信技術。最初の施策が生まれてから20周年ということで、ソニー社内にあるカフェテリアで記念展示が行われていた。外部には見せられない試作もあり、写真は撮影できないものの興味深い内容だったのだが、それをSNSでつぶやいたところ「なぜソニー本社で?」という疑問を持つ人が多かったのだ。

現在、FeliCaの技術はフェリカネットワークス社が管理しているが、もともとはソニーの技術。当初、バッテリーが必要だったところを「電池が必要じゃ駄目だ」とNGを出され、電源なしで機能するカードが生み出された。

次に「FeliCaみたいな独自技術を無理やり推し進めたから、日本の非接触通信規格はガラパゴス化した」という意見が僕に届いたが、これも誤り。NFCとして基本的な通信部分を規格化しようとした際、すでにFeliCaは日本で普及した後だったのだ。FeliCaの責任でガラパゴス化したわけではない。

他にもいろいろなパターンがあるだろうが、元を正してみなければわからないことはたくさんある。そして、経緯を辿ってみると、現在なにかの問題が起きている場合に、正しい対処ができるというケースもあるはずだ。

 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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