※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2018年3月23日 Vol.166 <春はケジメの季節号>より
仕事柄、筆者は、アメリカの大手IT企業を訪れることが多い。会社風土はそれぞれで、違いを見ているとなかなか面白い、と思う点は少なくない。
3月上旬、筆者が訪れていたのはNetflixだ。いくつか記事も執筆したので、お読みになった方もいるかも知れない。同社はロサンゼルスとロスガトス(サンフランシスコ近郊、いわゆるシリコンバレーにある)に拠点があって、今回はその両方を訪れた。ロサンゼルス・オフィスは初訪問だが、ロスガトスには、これで都合3回目の訪問となる。
アメリカのIT企業にありがちな文化として、「そこら中にカフェテリアスペースがあり、自由に飲食できる」というものがある。これはNetflixも同じ。ロサンゼルスの場合もロスガトスの場合にも、各フロアの階段に近いところに、大量の食べ物と飲み物が置かれている。もちろん、食堂は別にある。以前Netflix社員に、「この会社の利点は、絶対飢えないことだが、欠点は太ること」と言われたが、さもありなん、という気がする。
・Netflix社内には、至る所にスナックと飲み物が。確かに飢えない。


変わった仕組みとして、備品の管理がある。写真は、ケーブルやキーボードなどの備品が入った「自販機」だ。といっても、売っているわけではない。社員は自由に中からとりだして使っていい。返す必要もない。さらには書類処理も必要ない。そこで厳密な管理を行うことによって効率が下がったり、管理コストが発生したりすることを省く方が効果的、という判断があるからだ。
・細かな備品は、自由にこの中からとってつかっていいシステム。申請などは一切不要。

社員は社内であれば、好きな場所で働いていい。時間も決められてない。社員はIDカードをもっていて、それで社内に出入りするのだが、それは「働いている時間を管理する」ためのものではなく、単にドアをあけるためのカギとしての役割しかない。唯一あるルールは、「定められた仕事をこなす」ということをベースにした評価システムだ。
会社によって風土は違う。だから、「Netflixのような働き方が素晴らしいので日本全国に広めよ」という気はない。しかし、「働くのはなんのためか」「仕事の仕方を評価するとはどういうことなのか」「働きやすいとはどういうことなのか」ということを、訪れるたびに考えるきっかけにはなる。
管理のための管理のコストをなくすことこそ、いわゆる「働き方改革」の最初のステップではないか、と、自己裁量で働いているフリーランスの筆者は考えてしまうのである。
なお、会社の風土は会議室の名前にあらわれる、と筆者は思っている。そこにある種の思い入れが出てくるからだ。Netflixの場合には、会議室などの名前はすべて「映画」や「Netflixオリジナル作品の名前」になっている。オリジナル作品は増え続けているので、そのうち、みなオリジナル作品の名前になってしまうのでないか……と思っている。この命名ルールは、アメリカだけでなく、日本のオフィスでも同じである。
・今回訪れた時に発見した会議室名。「タクシードライバー」にと「フェリスはある朝突然に」だった。


筆者が知る別の会社のルールとしては、Evernoteは「古今東西のゲームの名前」を会議室名にしていて、アップルは「おもちゃの名前」を会議室名にしている。Amazonは有名な川の名前が会議室名だ。
なお、この種のルールがある会社で働く人々に聞いてみると、「よく使う会議室については、とてもわかりやすいのだが、あまりつかったことのない会議室だと、どうしても会議室名が覚えられないことがある」のが難点なんだとか。まあ、確かに。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2018年3月23日 Vol.166 <春はケジメの季節号> 目次
01 論壇【小寺】
EMA解散で、ネットの安全はどうなる?
02 余談【西田】
Netflix訪問で考えた「社内風土」と「働き方」
03 対談【西田】
Cerevo・岩佐さんと語る「出展する人のためのCES講座」(5)
04 過去記事【小寺】
PTA広報紙を電子化したった (6)
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。 ご購読・詳細はこちらから!
その他の記事
|
東京と台北を比較して感じる東アジアカルチャーセンスの変化(高城剛) |
|
ママのLINE、大丈夫?(小寺信良) |
|
東京15区裏問題、つばさの党選挙妨害事件をどう判断するか(やまもといちろう) |
|
カビ毒ダイエットという新しい考え方(高城剛) |
|
うなぎの蒲焼は日本の歴史と文化が凝縮された一皿(高城剛) |
|
素晴らしい地中海食(高城剛) |
|
「#metoo」が本来の問題からいつの間にかすべてのハラスメント問題に広がっていくまで(やまもといちろう) |
|
「価値とは何かを知る」–村上隆さんの個展を見ることの価値(岩崎夏海) |
|
実は湿度が大きな問題となる温暖化(高城剛) |
|
時の流れを泳ぐために、私たちは意識を手に入れた(名越康文) |
|
海のノマドの起源を求めて台湾山岳民族の村を訪ねる(高城剛) |
|
「国際競争力」のために、何かを切り捨ててよいのか(やまもといちろう) |
|
iPad Proは何をどうしようとしているのか(小寺信良) |
|
ITによって失ったもの(小寺信良) |
|
ビジネスマンのための時間の心理学――できる人は時間を「伸び縮み」させている(名越康文) |










