やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

明石市長・泉房穂さんが燃えた件で


 こんがりと燃えていたので、どういうコンテキストなんだろうと思い、暴言の前後の言葉も併せて読んでみたら読後感が全然違ったのでYahoo!ニュースの記事にしたところ、これまた賛否両論となりました。よせばいいのに取材依頼とかもあったんですが、別にその方面で有識者でもないし、泉さんとは面識もないのでお断りしたんですよね。

明石市長・泉房穂氏の暴言をよく読むと、市民の命を守るための正論である件

 で、問題の骨子としては「目的のためには手段を択ばないことが許されるか」的なところがあります。今回の件では、まあ明らかに「燃やしてこい」とか「お前が個人保証しろ」などという文言を部下に言い放つのはパワハラ的ではあります。実際、それで揉めて炎上しているわけですし、まあ言い過ぎよねと思います。

 ただまあ、組織の長として、人間の素で部下を叱責することは私なんかはすることもされたことも多々経験します。どこぞのICTコングロマリットとして一大帝国を築いた社長に灰皿を投げられたこともあれば、優秀だけど微妙な部下の独立を申し入れられたときは「そのままやってもお前絶対うまくいかないよ」と言ったりすることもありました。本当に駄目なやつには「駄目だなあ」と直接本人にそう言ってしまうことも少なくありません。

 私は別に人の上に立つ器の人間ではなくそういうタイプでもないので放言していてもTwitterがたまに凍結されるぐらいでたいした問題にはならないわけですが、市長や経営者となると話は違います。どこかから、パワハラは絶対に許さんという人たちが湧いて出てきて炎上するのもまた仕方のないことです。

 一方で、物事を強力に進められる人間というのは、有無を言わさず、人の首に縄を括りつけてでも前進させようという気魄や根性を抱えていることがあります。泉市長は特に、市民のために安全を企図した工事をするための用地買収を7年ほっといた問題についての叱責がパワハラ的な行きすぎをした事例ですから、聖人君主ではないトップとして起きがちなことだよなって思うわけです。

 そして、こういう事例というのはおそらく世の政治家、経営者に数多あることであって、ブラック企業から剛腕為政者まで様々な人たちがその類型に入ってきます。このネタなら燃える、話題にできる、謝罪に追い込めるということであれば、みんな録音、しますわな。

 暴言を吐くことが正しいとは言えないのは当然として、そういう相手の発言を監視し、録音して、いざとなれば公開してやろうという社会が普通になっていくようであれば、もちろんそういう発言は減っていくことでしょうが、やられるのは前に進められるタイプの人たちで、守られるのは働かない人たちである可能性もあります。それが活気ある優れた社会になる一歩だとするならばまあ一意見として尊重はしますが、泉市長のパワハラ暴言が次々と暴露されるということでもない限り、辞任ではなく明石市民の民意を尊重する方向でいいんじゃないかと考えます。

 ま、私も暴言は良く吐きますのでその点では同情するところが多いんですけどね。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.249 暴言で炎上することについてを語りつつ、海外プラットフォーマーとのおつきあいをあれこれ論じる回
2019年1月31日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】明石市長・泉房穂さんが燃えた件で
【1. インシデント1】公正取引委員会のヒヤリングがさらに進んでややこしくなるの巻
【2. インシデント2】なんとなく不調なAppleのあれこれから感じる時代の変わり目
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

自分の身は自分で守るしかない世界へ(高城剛)
今週の動画「飇拳(ヒョウケン)」(甲野善紀)
東京丸の内再発見(高城剛)
『ご依頼の件』星新一著(Sugar)
クラウドの時代、拠点はシリコンバレーからシアトルへと移り変わるのか(高城剛)
これからのビジネスは新宗教に学んだほうがいい!(家入一真)
【号外】安倍官邸『緊急事態宣言』経済と医療を巡る争い(やまもといちろう)
バーゲンプライスが正価に戻りその真価が問われる沖縄(高城剛)
『好きを仕事にした』人の末路がなかなかしんどい(やまもといちろう)
ガースーVS百合子、非常事態宣言を巡る争い(やまもといちろう)
人生の分水嶺は「瞬間」に宿る(名越康文)
日本の第二の都市の座も遥か昔の話し(高城剛)
無駄に混迷する都知事選、都知事・小池百合子が迎え撃つ堀江貴文、宇都宮健児の勝ち筋(やまもといちろう)
ハロウィン:あの世とこの世の境界線が曖昧になるとき(鏡リュウジ)
平昌オリンピック後に急速に進展する北朝鮮情勢の読み解き方(やまもといちろう)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ