※高城未来研究所【Future Report】Vol.417(2019年6月14日発行)より

今週は、インドのダラムサラにいます。
インド北部の小さな町は、1953年に中国人民解放軍がチベットを軍事制圧したチベット動乱により、ラサを追われたダライラマ14世に対し、インド政府がダラムサラの一角(マックロード・ガンジとカンチェン・キション)を提供したことから、ここにチベット亡命政府が発足し、世界的に注目を集める場所となりました。
もともとこの街は仏教が盛んな土地で、19世紀にはチベット人による僧院の建立もあったことから、チベット動乱の際に、逃げ出した数万のチベット人が当地に移住。
しかし、彼ら(と二世)はいまも「難民」であり、正式なパスポートを保有していない状況が続いています。
通称「上ダラムサラ」には、1万5000人以上のチベット人が生活をするマックロード・ガンジと、亡命政権の官庁があるカンチェン・キション(雪有る幸福の谷の意)のふたつのエリアがあり、もともと静かな町でしたが、現在、マックロード・ガンジの大半は、涼しさを求める人たちと、「フリーチベット」を声高く上げる観光客によって占められています。
インド北部にあるデリーでさえ、日中は40度を超える日が続くため、この時期にはインド全土から観光客が避暑地を求めて続々と到来。隣のラジャスタン州では、今週50度を超えています。
中間層が爆発的拡大を続けるインドでは、国内観光客も増大しており、ヒマラヤの麓で、チベット人が住むダラムサラに人が大挙して押し寄せ、ちょっとした観光パニック状態。
山の中腹にある小さな町の小さな路地に、何万という車が四方八方から押し寄せるので、市の中心地は毎日大渋滞が続き、酷い日には、2時間で1メートルも車(エアコンなし)が進みません。
信号もない上に、交通警察官の姿を見ることは稀で、町の青年がボランティアで交通整理をしている様を、何度も目撃しました。
渋滞がひどいことで有名なインドですが、この時期、ダラムサラのマックロード・ガンジは、常軌を逸しています。
そこで、中心地は歩くに限りますが、日々30度で(インドでは涼しい)、高度も2000メートルを超えていることから日差しが強く、その上、渋滞と焼畑農業により空気は酷い有様で、歩くと目も喉も痛くなってしまうほど。
本来、ダラムサラは「ピースフル」や「スピリチュアル」な地と呼ばれていましたが、実態はそれらと大きくかけ離れた状況です。
実は30年ぶりに訪れたのですが、かつての印象は、荘厳な山にある静かな町の印象でしたが、世界的な観光バブルは、小さな仏教都市にも訪れていることを、実感しました。
21世紀の黄金は、静寂である。
そう考える、今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.417 2019年6月14日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
その他の記事
|
5年前とは違う国になったと実感する日々(高城剛) |
|
自分をさらけ出そう(家入一真) |
|
【第3話】見よ、あれがユニオンズの星だ!(城繁幸) |
|
家入一真×上祐史浩悩み相談「宗教で幸せになれますか?」(家入一真) |
|
【第1話】日本型雇用の未来は君の肩に……(城繁幸) |
|
中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き(津田大介) |
|
インターネットに期待されてきた理想と現実の落差(やまもといちろう) |
|
大手企業勤務の看板が取れたとき、ビジネスマンはそのスキルや人脈の真価が問われるというのもひとつの事実だと思うのですよ。(やまもといちろう) |
|
厚労省統計問題の発生理由が“プログラムのバグ”とされていることに感じる疑問(本田雅一) |
|
過疎化する地方でタクシーが果たす使命(宇野常寛) |
|
「USB-C+USB PD」の未来を「巨大モバイルバッテリー」から夢想する(西田宗千佳) |
|
サウンドメディテーションという新しい旅路を探る(高城剛) |
|
いわゆる「パパ活」と非モテ成功者の女性への復讐の話について(やまもといちろう) |
|
百田尚樹騒動に見る「言論の自由」が迎えた本当の危機(岩崎夏海) |
|
21世紀型狩猟採集民というあたらしい都会の生き方(高城剛) |











