本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

古い常識が生み出す新しいデジタルデバイド

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.056「炎上事例にみる“新しいデジタルデバイド”。見えている景色が異なることによる不幸の連鎖」(2019年11月12日)からの抜粋です。



僕も寄稿している『東洋経済オンライン』のトップアクセスに、目を疑うような記事があり、かなり驚いてしまいました。そこには、「4Kテレビの多くは輝度が不足していて、4Kテレビ放送を美しく表示するために必要な要件を満たしていない」とありました。不思議に思っていると、実はいつも取材しているメーカー担当者が「取材を受けたのでていねいに説明したのですが……」と、憤りを超えて残念そうにしていました。

記事の中では、まるでエンドユーザーを騙しているかのように書かれているのですが、事実ではありません。詳細は専門誌などで発信しようと思っていますが、明らかな誤りを強く発信することは、本来ある問題の解決を遅らせることになるでしょう。

ところが、この記事を書いている朝日新聞の記者は、自社の新聞、ウェブで発信した後に、この問題を広く知らしめようと、繰り返しさまざまな媒体に寄稿していました。そのうちのひとつが、上記の東洋経済オンラインだったということです。

この記事が極めて残念なのは、せっかくメーカーや放送局に取材しているにもかかわらず、最終的には「メーカーがエンドユーザーを騙している」という昭和的な発想から抜け出せていないことでした。現代の技術は、昔とは異なります。また、エンドユーザーが楽しむ製品と、映像を制作するプロの世界が求める要件は異なります。そうしたことを正しく認識していないと、消費者のためにと告発しているつもりが、大きな遠回りをさせることになります。

歴史的な話で言えば、従軍慰安婦問題に関して強制連行があったと告発した記事が思い浮かびますが、昨今の日韓関係が悪化している原因である輸出管理強化に関しても、甘利経産相が韓国の外交姿勢をひとつの理由としてあげたことで“報復措置”と韓国が捉え、引き下がることができない両国の争いに発展した印象があります。

少しばかり話が飛びました。立場が違えば見えている景色が異なることは当然ですが、ふだんの行動や常識が異なれば、やはり見えている景色は違っていると考える方がいいでしょう。もし、世代が違うとなればなおさらのことです。

とりわけ、デジタル製品、インターネットの使い方に関しては世代間のギャップが極めて大きい。インターネットの使い方や使うサービスの種類、あるいは使い方の違いからくる感覚や常識の違いを、私は“新しいデジタルデバイド”として紹介しています。新しいデジタルデバイドは、さまざまな面での軋轢(あつれき)を生み出しています。
 

新しいデジタルデバイドが生み出す不幸せな議論

あまり技術的な話に落とし込むと、興味のない人からは「何の話?」となるので、まずは冒頭で紹介した件の誤解について、簡単にそのアウトラインを消化するところから話を始めます。

前記の“4Kテレビが暗い”という件が「事実か、それとも誤りか」と言えば、暗く見えることは事実です。しかし、それはテレビの責任ではありません……


 
(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)
 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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