高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

驚き呆れるしかないセイシェルの変貌ぶり

高城未来研究所【Future Report】Vol.266(2016年7月22日発行)より


今週は、セイシェルにいます。

先日、インターネットがつながる環境まで電気のない村から出てきた際に、近隣でどこかに行こうと突如思い立ちまして、およそ十年ぶりにセイシェルにやってきました。
正直、この十年の変貌ぶりに驚き、呆れています。

まず、美しい島々が最大の資産のセイシェルは、次々と人工島の建設を続けています。
外資大手デベロッパーと政府が一緒になり、不動産を立てやすい人工島を作り上げ、投資目的の外国人に高額で販売しています。

また、中東から大きな資金を呼び込み、豪華絢爛なホテルを島中に乱造していますが、中身というかサービスは本当にヒドイもので、ハリボテばかりになっています。

空港を見れば、その国がわかるとは最近の僕の口癖で、セイシェルの空港は、建物も相当ヒドイのですが、係官の対応も最悪で、これでよく観光立国を目指していると言えたものだと思いました。
人工島の建造より、早急に立て直すのはこちらです。
また、空港から一歩出れば、ボッタクリタクシーの行列で、空港職員が我が身はさておき「タクシー価格に気をつけろ!」と話すほどです。
これでは、一番大切なリピーターの確保は不可能だと思われます。
いつから、この国の人たちの心は、こんなに荒んでしまったのでしょうか?

離島を回れば、かろうじて自然破壊が進んでいないように見えますが、それもここ何年かの話だと思います。
なにしろ、国民が争うように、外貨を奪い合っているからで、肝心の旅行者を見ていません。
美しいことで世界的にも名高かったプララン島には、すでに中東オイルマネーで建造された華美なホテルが出来上がり、自動車やバイクが通行禁止のラディーグ島には、ディズニーランドのような観光バスが走るようになってしまいました。
ここまで、価格と内容が見合わない国も珍しいと思います。
いまのセイシェルは、驚くほどに何でも高額です。

また、中東の人たちが、この島にリターンが見合わないほどの多くの投資をしている理由のひとつは、自国では羽目を外せないことにあります。
宗教的に戒律が厳しく、また、自国では目につきますが、この島であれば、大酒を飲み、酔っ払っても目に付きません。
事実、羽目を外している富裕層イスラム教徒が、この島には多くいます。

さて、国家としてはシンガポールを目指しているそうですが、言うまでもなく、素晴らしい資産である自然の切り売りを止め、国民を徹底的に厳しく管理しながらも、各人自己努力を怠らないかどうかに、その鍵があります。
でも、ここには無理でしょう。
なにしろ、島の人たちが「やる気」ではなく、「ボる気」満々なのですから。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.266 2016年7月22日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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