※高城未来研究所【Future Report】Vol.463(2020年5月1日発行)より
今週は、沖縄本島北谷(ちゃたん)にいます。
ゴールデンウィークということもあって、那覇から30分ほど北上し、海沿いの新興開発地のホテルに移りました。
この街は、ハロウィーン仮装のクオリティが高いことでも有名ですが、
実は、いまも北谷町総面積の52.3%が米軍施設で、パーティ慣れしたアメリカ人が盛り上げに一役買っています。
彼らが本気出すゾンビやフランケンシュタインの仮装には、そう簡単にはかないません。
なかには、本物かコスプレかわからない海兵隊もいます。
町内にはキャンプ・フォスター、キャンプ・レスター、嘉手納飛行場、陸軍貯油施設の4つの米軍関係施設を擁し、統計にはあがりませんが、人口の3分の1をアメリカ人が占める、日本全国の市区町村で外国人住居者比率が最も高い場所です。
また、米軍のハンビー飛行場跡地周辺は、いまも「ハンビータウン」と呼ばれており、隣接する海岸で新たに埋め立てらてた新興開発地は、「アメリカンビレッジ」と名づけられました。
この「アメリカンビレッジ」は、1997年から本格的な工事が始まり、2004年に初期計画が完成。
この間、僕自身が一年半ほど仕事の拠点にしていた懐かしい場所でもあります。
当時、密室で行われる会議が嫌いで、よく観覧車に乗って会議を行なっていました。
この沖縄唯一の観覧車に乗ると、上から町全体を見渡せるのですが、いったい、なぜここまで集中して米軍基地が多いのだろうか? と町を大きく分断する軍用地を見ながら考えたことがあります。
その理由は、第二次世界大戦において米軍の沖縄本島上陸地点が、この北谷と読谷だったからに他なりません。
当時、読谷には日本本土を攻撃する前線基地となりうる読谷飛行場(北飛行場)があったこと、そして北谷は、攻撃を支えるために必要な物資の荷下ろしができる浜があったことが、米軍侵攻の理由だったと言われています。
上陸後、すぐさま北谷村全域が占領地となり、終戦とともに田畑は兵舎や飛行場へと姿を変えていきました。
そのため、居住区域は基地によって分断され、産業らしい産業もなく、町民は 起伏の激しい山間谷間での生活を長年余儀なくされてきた歴史があります。
現在、これらの米軍基地から派生する騒音や様々な事件は、町民生活に大きな影響を与えています。
特に山側では、航空機騒音によって世帯が移転し、空地が増大するなどの地域コミュニティへの影響や住民の健康が、いまも懸念されています。
一方、西側沿岸域は、ダイビングをはじめとするマリンスポーツが楽しめるなど観光・リゾート地として開発が続き、いまでは町の主要産業にまで成長。
その中心地が「アメリカンビレッジ」なのです。
一説によれば、土地を返還したのは、米国人のためのリゾート施設を作ることが前提になっていたとも言われている場所ですが、普段は、県民や観光客で賑わっていますので、僕がそのように感じたことは一度もありませんでした。
しかし現在、日本人がほとんどいない中、不要不急ではないだろうと思われる米国人多数が街を闊歩しており、いまもここはアメリカなんだな、と考えざるを得ません。
新型コロナウイルスによって、賑わっていた観光客が来ず、普段とは違う顔を見せる異質な街。
いま、街の様相に限らず、様々な物事の本質を浮き上がらせているんだろうなと、改めて考える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.463 2020年5月1日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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