やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

内閣支持率プラス20%の衝撃、総裁選後の電撃解散総選挙の可能性を読む


 というわけで、安倍晋三さんが健康面を理由に総理辞任を表明してから即座に各種調査が走っているわけなのですが、まずは共同通信の緊急電話調査の結果が安倍政権の支持率がプラス20%で50%台回復という結果になり、民意ってそんなもんだよなあと思います。

 このまま9月14日15日あたりの両院議員総会で行われる自民党総裁選で一年限りの新総裁選出に向かうわけですが、安倍晋三さんは政権成立の後見人の一人である麻生太郎さんのアドバイス通り、短期休養、その間に臨時代理で副総理である麻生さんに託すという選択肢を取らず、自らの言葉で辞任を語り、総裁選に打って出たというのはさすがだなとも感じます。

 こうなると、総裁選レースの中身と出走馬が気になるわけですが、来年に控えた任期満了まで待たずにこの支持率であり野党も分裂したままの状態ならば、8月30日から7週間後の10月25日で解散総選挙という風向きも強くなるのは道理であります。

 まず、今回の見立てでは安倍政権の政策継続性を考えて、官邸にいた官房長官・菅義偉さんへの後継を企図し、自民党幹事長職に留まりたい二階俊博さんとの「野合」が焦点となります。幹事長であるにもかかわらず、二階派は早々に菅さん支持を表明。麻生派もこれに続いて、安倍政権のレガシーというか政権安定を担ったこの仕組みを菅さんが引き続き切り盛りしますよ、という話は非常に分かりやすいとも思います。

 一方で、岸田文雄さんについては最大会派細田派との関わりも含めて党内の軋轢を回避する目的であれば最大公約数的には最適の候補者ではあるのですが、では岸田さんをトップにしてこの支持率を背景に解散総選挙を打って出られるのかとなればそうもいかず、一度菅さんにショートリリーフをお願いしつつ、来年改めて行われる自民党総裁選で菅さんが岸田さんに禅譲という形での空手形が振り出されることで立候補自体を見送ることも想定されてしまいます。

 「だから岸田は駄目なのだ」と言われる所以でもありますが、しかし、切り崩されるのは今回の選挙方針によっては立候補しないと表明した石破茂さんや、すでに勢いが失われて久しい小泉進次郎さん、本人に意欲があっても20人の推薦人すらなかなか集められないであろう野田聖子さん、稲田朋美さん、茂木敏充さん、下村博文さんあたりも同じように不戦敗になります。

 そして、突然支持率の上がったダークホース、河野太郎さんは所属する麻生派が、密約でもあったのか菅支持を表明したためになし崩し的に立候補は流れてしまったようです。

 あとは二階俊博さんが幹事長として党員投票はやらないという選択肢を公言するタイミングはいつなのかです。単純な話、二階さんの頭の中には具体的な政治の現場を知らない一般の党員さんは普通の国民と同じく石破茂さんのアカン感じを知らないので声望が高いこともあって、うっかり党員投票で石破茂さんがトップになってしまい、議員票、都道府県代表の票と併せても菅義偉さん総裁選任で間違いないのでしょうが、党員が支持した石破茂さんを無碍にして組閣するのもむつかしいという状態になります。石破茂さんというのは、いつまでも冷や飯を喰っていてもらい、自民党内野党の人たちの不満を「そうだよね」「そうだよね」と吸収し自民党内にも正論を言う人がいるのだというアリバイのために存在している人物ですから、それが数字として目に見える形で「自民党員から一番支持されている石破茂」にならんようにすることが大事なのです。力をつけさせ過ぎず、かといって脱藩されないようにする、そういう微妙な湯加減である必要があります。

 同じようなことは橋下徹さんや小池百合子さんにも言え、いわば実質的な閣外協力野党であり、自民党外菅派とまで揶揄される日本維新の会の象徴でもある橋下徹さんや、ジャーナリスト三浦瑠麗さんあたりの電撃的な閣僚起用とか審議会主要メンバーへの選任、さらには安倍晋三さんの外相起用なども考えられ、そうなると官房長官に次世代のエースと目す河野太郎さんを起用する人事もあり得るんじゃないのというのは容易に想像がつきます。

 閣僚の変更も小幅で留まらせるであろうことは確実で、少なくともコロナ禍で矢面に立った西村康稔さんの重要閣僚への起用とともに加藤勝信厚労相の留任あたりもあり得ます。

 いわば、野党が混乱している間に打てる手は全部打って、早期解散論をブチ上げて大勝してしまえというのがマスタープランなのではないかと思いますので、連立を組む公明党としてもかなり神経質な動きになっています。公明党代表の山口那津男さんが大阪で「11月1日の大阪都構想の住民投票と選挙日程が被るのは困る」と発言したのは恐らく本音で、まあ17年の選挙のときも事前ギリギリまではっきりとは選挙決断したとは伝えらえなかった公明党としても今回はそういう憂き目には遭いたくないといったところではないかと思います。

 そして9月下旬 所信表明、代表質問に続いて早々に解散総選挙を宣言、ついでにコロナ対策総合プランの打ち出しと併せ「消費税の減税」を菅政権が公約に掲げて10月13日公示、25日投開票日で自民党・公明党が大勝して10月下旬に大幅な内閣改造が断行される、という流れが自民党的に考えるベストシナリオであることは間違いありません。

 もちろん、そこに何か別のアクシデントやスキャンダルが出て騒ぎが広がって一気に解散風がしぼむことはあるのかもしれませんが、亡くなってはいない安倍晋三さんが「辛かったんだね」ということで国民のご祝儀的な支持率アップをしているうちに新総裁が固まり、そこで国民の生活を考えて消費税減税しますと言えば自民党からすればコロナと経済低迷のダブルパンチ下でも善戦できる条件は揃うことになります。

 ここで党内不一致で石破茂さん一派が離党するなんてこともあり得ませんし、公明党にも今回は特にきちんと仁義を切るでしょうし、維新もイソジン発言事件で大幅に全国的な声望は衰えたとはいえ吉村洋文さん中心に大阪では盤石ですので、このあたりも踏まえた神経質な動きになるのではないかと思ったりもしています。

 蛇足ながら、ここ数日安倍さん辞任会見後の調査においては、一時的なものなのかもしれませんが総理として相応しい人の3位に河野太郎さんが急伸してきています。ネット調査では、年齢性別バイアス調整済みの数字ですでに石破さんに迫る数字になっていて、特に強いのは「前回投票に行った」人の中ではトップ目もあり得る展開になっていることです。正直、突然河野太郎さんが人気になっているのは理由が良く分かりません。小池百合子さんや吉村洋文さんの人気が全国的にはすでに失墜しているからというのもあるかもしれませんが、いずれにせよ次世代リーダー争いでは小泉進次郎さんよりも河野太郎さんのほうが上に来たというのは意外です。フロックなのかもしれませんが、念のために書き添えておきます。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.307 総裁選後における電撃解散総選挙の可能性を思案しつつ、アプリストア税問題や我が国のインテリジェンス活動が抱える課題などを語る回
2020年8月31日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】内閣支持率プラス20%の衝撃、総裁選後の電撃解散総選挙の可能性を読む
【1. インシデント1】スマホプラットフォーマーがゲームアプリ事業者に課す税の問題
【2. インシデント2】米中対立という状況下で覚悟を求められる我が国のインテリジェンス事情
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

沖縄、そして日本の未来を担う「やんばる」(高城剛)
“日本流”EV時代を考える(本田雅一)
今の京都のリアルから近い将来起きるであろう観光パニックについて考える(高城剛)
成功する人は「承認欲求との付き合い方」がうまい(名越康文)
少子化問題をめぐる日本社会の「ねじれ」(岩崎夏海)
タレント候補が減った理由–戦い(の見物)を終えて(やまもといちろう)
ゲームにのめりこむ孫が心配です(家入一真)
「報道されない」開催国ブラジルの現在(宇都宮徹壱)
古い日本を感じる夏のホーリーウィークを満喫する(高城剛)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
株の運用、まずはゲームから(石田衣良)
『外資系金融の終わり』著者インタビュー(藤沢数希)
交渉の天才としての桃太郎(岩崎夏海)
東大卒のポーカープロに聞く「場を支配する力」(家入一真)
僕たちは「問題」によって生かされる<後編>(小山龍介)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ