※高城未来研究所【Future Report】Vol.492(2020年11月20日発行)より
今週は、東京にいます。
都心部最大の森を有する皇居でも、紅葉がはじまりました。
皇居東御苑は、かつての江戸城の本丸・二の丸・三の丸に位置し、昭和天皇の発意により武蔵野の自然を模した二の丸雑木林には、コナラやクヌギ、モミジなどが植えられ、例年11月中旬頃に赤や黄色に色づき、見事な紅葉を見せています。
毎年、この紅葉の時期と春の桜の時期だけ、普段は立ち入ることのできない局門や蓮池濠付近の木々も楽しむことができ、今週は暖かく秋晴れが続いたこともあって、僕も毎日のように皇居や周辺に訪れました。
このあたりの散策は、とても東京にいるとは思えません。
また、この数ヶ月の間に、丸の内・大手町エリアには、新施設が続々オープン。
遅れていたフォーシーズンズ大手町や丸の内テラスなどの開業がはじまり、以前と変わらない賑わいを見せています、と言いたいところですが、実際の人出は昨年同時期の半分程度しかありません。
エリアごとの人出がわかる通信端末調査(位置情報を基に分析した滞在人口データ)によれば、丸の内・大手町エリアは昨年同月で見ると4割減。
在宅勤務が常態化し、いまも接待等の飲食が禁止されている企業が多いことから、人出は4割減でも、飲食テナントの主な稼ぎである夕食時の売り上げは、各店平均6〜7割減が続いています。
実は、丸の内エリアの飲食店は、この20年で4倍増しています。
2001年当時、丸の内1丁目から3丁目すべてをあわせても250店程度しかありませんでしたが、開発とともに1000店舗を超えるまで増えたバブル状態が続いていました。
しかもこのあと十年にわたり、東京駅周辺一帯は、さらなる大規模都市開発が続く予定です。
今後の開発重点地域は、有楽町方面と東京駅日本橋口付近。
有楽町の核となるのは駅前のビルに誕生する2つの施設で、1つは会員制コミュニティ「SAAI」。丸の内の開発が大企業型だったのにたいして、こちらは意欲的な個人事業主を集めたい意向なのでしょうが、今後、動きが早く、センスが良い個人がこの地に集まると考えづらいので、上手くいっても単なる地方企業のサテライトオフィスになるものと思われます。
もうひとつが、昨年末にオープンした「micro FOOD & IDEA MARKET」。
「SAAI」で練られたアイデアや商品の原型を世に問う場として位置づけられる予定ですが、僕が見る限り、どうみても難しい案件ばかり。
ブルックリンのような創発コミュニティを狙ったのでしょうが、この地域でもっともブルックリンらしいと僕が感じるのは、明治27年に建てられら三菱一号館を改装した三菱一号美術館だけだと思います。
一方、東京駅日本橋口付近の目玉施設は、2027年に東京駅日本橋口に開業予定の日本最高390mを誇る地上63階ビル「TOKYO TORCH」。
2,000席の大規模ホール、約4,500坪の商業ゾーンのほか、約7,000平方メートルの大規模広場を活用した帰宅困難者支援機能を備えますが、現在、賑わいを見せる完成予定図をみても、目の前の人出がないため、どこか空しく思えてしまいます。
「日本を明るく照らす希望の灯り」の意を込められた「TOKYO TORCH」。
果たして、日本のバベルの塔となるのか?
それともなにかの再生のシンボルとなるのか?
赤く色づいた葉が、季節が進むと落ちるよう、街にも国家にも栄枯盛衰があると実感する今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.492 2020年11月20日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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