高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

暗黙の村のルールで成功した地域ブランド「銀座」

高城未来研究所【Future Report】Vol.525(2021年7月9日発行)より

今週は、東京にいます。 

昨年は晩夏まで沖縄で過ごした後、東京の拠点を丸の内にしましたが、今年の拠点は銀座。
旧ソニービルが好きだったこともあって小さな時から通い慣れた銀座ですが、いままで自分が住む場所として考えたことは一度もありませんでした。

ですが、街のど真ん中にある高級ホテルが、現在、一泊あたり1万円を切るのは、この時代ならでは。
都心に住んでいた多くの人たちが次々と郊外へと転居する中、昨年に引き続き天邪鬼な僕らしく、今年の東京の拠点もセンターに捉え、昼の喧騒と夜の静寂の間を漂うように暮らしています。

あまり知られていませんが、銀座には暗黙のルールがいくつもありまして、そのひとつがどこへ行くのも「通り名で伝える」という「村民の掟」があります。晴海通りや中央通りならわかるところですが、「みゆき通りとすずらん通りの角」などと言われても、村民以外にはパッとわかりません。
その他「金春通り」や「電通通り」、「御門通り」など、村民以外にはあまり知られていないストリート名が多々あります。

また、タクシーに乗るのにも、「銀座ルール」があります。
銀座5丁目から8丁目にかけて、土日・祝日及び休日を除く午後10時から翌午前1時まで、タクシー乗り場以外でタクシーに乗車することが禁止されていますので、流しのタクシーを捕まえて乗ってはいけません。
迎車だろうが、域内での乗車は禁止です。
その上、域外に止まって列をなす空車の個人タクシーがいても、実はそのタクシーは長距離のお客様限定との暗黙の決まりがあり、近場だと乗車拒否されてしまうどころか、「銀座ルールを知らないのか!?」とトクトクと説教されてしまうこともあるほどです。

建造物や広告の高さ制限にも、「銀座ルール」があります。
表通りに面していないビルは、高さ48メートル以上の建物を建てるのはご法度で、屋上に掲げる看板や広告も10メートルまでとする暗黙のルールがあります。
以前、銀座に200メートル近い超高層ビルを建てる計画が浮上した際、銀座らしさを壊すと大きな反対運動が起き、結局、計画は頓挫しました。
広い空こそ、銀座の宝。
このような「法律ではない村のルール」が、結果的に地価を高めることに成功します。

戦後、日本でもっとも成功した地域ブランド「銀座」。

ちなみに個人的な問題は、周囲にブランド店は山のようにあっても、コンビニやスーパーなどの生活必需品店が、まったくないことです!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.525 2021年7月9日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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