※高城未来研究所【Future Report】Vol.658(1月26日)より
今週も東京にいます。
毎回アーユルヴェーダの施設に2〜3週間ほど滞在したあと、大都会に戻って感じるのは、現代医療に「時間」という概念がないことです。
同じカロリーの食事であれば、朝食でも夕食でも同じように体内で消化吸収されると多くの人は考えているかもしれません。
分子栄養療法でも「時間」の概念が語られることはあまりなく、血液やバイオロジカルデータを基に、数値を補うことを第一としています。
しかし、体の機能は時間帯や季節によって変化します。
消化力は、朝や昼に高まって夕方には低下する傾向があるため、同じものを食べても体への反応は異なり、体温も朝は低くて午後から夕方にかけて高くなっていくのが一般的です。
精神も1日や季節、1年といった一定のサイクルで変動します。
思考力は午前10時頃をピークに達し、午後2時頃から著しく低下するため、仕事を片付けるには朝がもっとも効率いいのですが、よく言われる「タイムパフォーマンス」でも、この基本的な人間や自然のリズムは無視されているのは不思議で、多くの人たちは「数字」だけに捉われていると言わざるを得ません。
五感は午後4〜8時頃に鋭さを増し、時間感覚については、早朝や夜遅くには速く感じることが多く、午後から夕方にかけては遅く感じます。
当然、運動効率も違い、例えばウェイトトレーニングするのでも、人によって午前10時までに行うとの午後18時以降に行うのでは、効果がまったく異なるのです。
それゆえ、アーユルヴェーダの施設では、提供される食事や薬が、各人の体質だけでなく時間によっても考慮されています。
近年、米国の先端医学会でも「時間栄養学」が注目を集めるようになってきました。
「時間栄養学」とは、体内時計の働きに合わせて食事のタイミングや内容を調整する栄養学のことで、体内時計は消化、吸収、代謝などの生理機能に影響を与え、朝食は体内時計を整える役割を持ちますが、逆に夜の食事は体内時計を乱し、肥満や糖尿病などの病気のリスクを高めることがわかっています。
しかし、実際には夕食に重い食事を摂る人が大半です。
いったい、なぜ現代人はこのような食生活になってしまったのでしょうか?
この背景には「お酒マーケティング」が潜みます。
昭和のテレビ最盛期にCMを支えたビールなどの「お酒マーケティング」は、朝から飲酒を即すわけにはいきませんので、仕事が終わったあとに美味しい一杯を飲むことが「いかにも常識」と国民を教化しつづけました。
「はじめにビール!」は、日本以外では聞くことがない習慣で、これも「お酒マーケティング」が積み上げてきた「昭和の常識」に他なりません。
また、大半の外食産業も利幅の高い酒を売らなければ成立せず(特に家賃が高い高級店)、欧州では各地域で出店数が制限されている酒類販売が、事実上無制限になっているのが日本の現状です。
それゆえ、飲酒習慣を止め、あわせて夜の外食を減らすことが出来れば、消化力が高い午前中や早い午後にしっかり食べ、人間本来の自然に沿った生活サイクルに戻すことができるようになるのです。
英語では「飲み会」にあたる明確な表現がありません。
夕食を意味する「Dinner」や誕生会などの「Party」が近しい表現となりますが、英語圏の様相は日本の「飲み会」とは明らかに異なります。
健康のために、本来の時間を取り戻すこと。
自然豊かな南インドにあるアーユルヴェーダ施設から東京に戻って考えさせられる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.658 1月26日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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