高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

全てを飲み込む神仏習合こそが日本の本質

高城未来研究所【Future Report】Vol.685(8月2日)より

今週は、東京にいます。

夏休みとも言うこともありまして、海外から多くの友人たちが東京を訪れ各地を案内していますが、皆さん日本の神道をなかなか理解できないんだと、毎夜のように痛感しています。

一般的に日本は世界から無宗教国だと思われていますが、多くの日本人の根底に流れるのは神道であり、これは全国初詣の参拝者数4000万人超を見ても紛れもない事実です。
初詣以外にも赤ん坊が生まれればお宮参りに神社へ出向き、地鎮祭や七五三、そして政治的にも一定の影響力を及ぼす存在で、広告キャンペーンによって定着したクリスマスと結婚式、墓地利権を握る仏教葬儀を除けば、神道の信仰は日本人の生活のなかに深く溶け込む民族宗教に他なりません。

日本で尋ねられる事は滅多にありませんが、海外では日常会話の中で「信仰する宗教は何か?」と聞かれることは頻繁にあります。
キリスト教やイスラム教、仏教のような世界宗教と違って、神道には開祖、もしくは教祖にあたるような人物がおらず、教義や偶像も教会もないので分かりづらく、また、他の宗教のように救いを与えるものも救済に結びつくこともありません。
その上、悟りのような目指すべきゴールもありませんので、来日しなければなかなか感じることができない、これこそ本当の日本「観光」なのです。

仏教なら普遍性があり、海外の仏教徒以外の人たちもそれがどういう宗教なのかある程度の理解できますが、形がない神道についてはほとんど理解されることはなく、日本に来たことのある海外ゲストで伊勢神宮や厳島神社などに訪れたことがあっても、神社と寺院の区別もついていない人たちが大半どころか9割以上なのが現実です。

神道では、八百万の神々がいると考えられ、この数から言っても神々はあらゆる自然の中に宿り、また死者の霊を尊ぶ文化とも深く関わります。
こうした多神教的な、あるいはアニミズム的な祭祀はかつては世界各地にありましたが、社会の近代化とともに宗教はグローバル化し、自然崇拝やそれに基づく神々は消え去りました。
一部、南北アメリカやアフリカの地域、またオセアニアのアボリジナル居住区などでは、ブードゥー教はじめアニミズムは「未開文明」と断罪され、現代社会から排除されてきました。

ところが、日本ではそのようなアニミズムや古代の神々の祭祀が、神道というかたちをとることによって生きのび、科学によって社会が近代化した現在も日本に深く根付いているのです。
これは、実に不思議な現象であり、真の日本の魅力です。

個人的には神仏融合のようなハイブリット宗教感こそ日本特有だと考えており、古代日本における自然崇拝や祖先崇拝を基盤とした神道に、仏教が6世紀頃に中国や朝鮮半島を経由して日本に伝来した際、対立よりも共存を選び習合したことに源流があると思われます。
これが「和」であり、日本の神々は仏教の守護神としても認識されるようになっていきました。

ところが、時の為政者が仏教を利用して既得権としたため、大化の改新から幕末まで神道は長い間封印されてきました。
その後、仏教から神道へと移り変わった宗教戦争としての側面もあった明治維新を経て、時の明治政府は神仏分離政策を実施し、多くの日本人のなかでは、自然崇拝も神道も仏教も「すべてミックスする独自の感覚」を覚えるようになるのです。
こうして、一神教の「超越するもの」とは違った、日本特有の「調和するもの」が、いまも根付きます。

日本でもっとも信者数を誇る浄土真宗より多い、自覚なき「ステルス神道信者」たち。
自意識なくとも、全てを飲み込む神仏習合こそ、日本の本質であり秘密なのだろうな、と考える今週です。

しかし、暑いですね。
シンガポール29度で東京40度は、もはや「暑い」を超えて、生活スタイルを改善しなければいけない注意報のように感じています。
マグネシウムをしっかり飲むのを、どうかお忘れなく。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.685 8月2日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

英語圏のスピリチュアル・リーダー100(鏡リュウジ)
人生の分水嶺は「瞬間」に宿る(名越康文)
父親の背中、母親の禁止–『ドラゴンボール』に学ぶ好奇心の育み方(岩崎夏海)
快適な日々を送るために光とどう付き合うか(高城剛)
9月は世界や各人の命運が分かれる特異月(高城剛)
面接やプレゼンにも効果的! 「他人を味方に変える」ための3つのアプローチ(名越康文)
クラウドの時代、拠点はシリコンバレーからシアトルへと移り変わるのか(高城剛)
『君の名は。』『PPAP』…ヒットはどのようにして生まれるか(岩崎夏海)
AIの呪縛から解き放たれ、なにかに偶然出会う可能性を求めて(高城剛)
「実現可能な対案」としての『東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』(宇野常寛)
「最近面白くなくなった」と言われてしまうテレビの現場から(やまもといちろう)
四季折々に最先端の施術やサプリメントを自分で選ぶ時代(高城剛)
動物園の新たな役割は「コミュニティ作り」かもしれない(川端裕人)
小さな仏教都市にも訪れている世界的な観光バブル(高城剛)
週刊金融日記 第309号【東大現役合格率上位15校すべてが男子校か女子校だった、麻生財務大臣は森友問題でG20欠席】(藤沢数希)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ