高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

腸のためにも脳のためにも、もっと咀嚼を!

高城未来研究所【Future Report】Vol.710(1月24日)より

今週は東京にいます。

日中、多くの時間をクリニックで読者の方々のお話しをお伺いして、夜は8weeks.aiにご参加いただいた方々のデータを参照しながら、レポートを書く日々を送っています。

そこで問題点として見えてくるのは、日本はあまりに「やわらかい食事」が多い点です。

欧州の主食であるパンは、もともと農村部や寒冷地で頻繁にパンを焼くことが難しかったため、パンを長く保存できるようにする必要がありました。
そのため、硬い外皮(クラスト)を使ってパンの内部の湿気を保ち、乾燥やカビの発生を抑える役割を果たしました。
また、欧州では昔から天然酵母(サワードウ)を使う伝統があり、この酵母が作る酸性の環境がパンを腐りにくくしている名残から、パンは固く、また食事全般も硬質です。

一方、日本の主食である米、特に短粒種(ジャポニカ米)は、粘り気があって柔らかいのが特徴です。
アジアのなかでも日本のご飯は炊飯器や鍋で水分を吸収させて炊くため、他国の硬めの米(インディカ米など)と比べても特に柔らかい仕上がりになり、なによりこれが日本人に好まれています。

煮物文化が多い点も欧州とは違う点です。
焼くことが多い欧州の調理法と比べ、煮物やおでんのような料理は、食材をじっくり煮込んで柔らかくし、また、日本料理ならではの豆腐も非常に柔らかく、納豆や味噌なども滑らかで食べやすい食品として広く消費されています。
刺身や寿司も柔らかい食感が特徴で、料理人から見ても食材の繊細さを活かすため、柔らかさが日本料理全般で重要視されています。

こうして主食からお菓子まで、日本では「口当たりが柔らかいのが勝ち」といった風潮が見られ、この結果、咀嚼回数が極端に低くなってしまい、多くの問題が起きているように思われます。

言うまでもありませんが、よく噛まないと食べ物が大きなまま胃に送られるため、胃や腸での消化が難しくなり、胃酸や消化酵素の分泌が増加して、結果的に消化不良や胃もたれを引き起こします。
僕が皆さんのお食事の写真や血液データを拝見する限り、このような状態の方が大変多く、すでに消化酵素が出ない体質に陥ってしまっています。
その上、食べ物を細かく噛み砕かないと、腸での栄養素の吸収が効率的に行えなくなりますので、腸内環境の悪化にもつながります。
こうして、大きな食べ物の粒が腸内で分解されにくくなり、腸内細菌による発酵が活発になりガスが発生。
アーユルヴェーダでは、このような未消化物(アーマ)が病気の原因の大きな要因として考えられています。

また、脳の満腹中枢が刺激されるまでには20分程度かかるため、よく噛まずに早く食べると、満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまって血糖値が急激に上昇し、インスリン分泌に負担がかかります。
その上、大きな食べ物が胃に長時間とどまることで、胃の負担が増え、胃酸逆流やSIBOを引き起こすのです。

しかも、脳への影響も多大です。
咀嚼をすると脳に送られる血流が増加し、特に前頭前野(感情、記憶、意思決定を司る部分)が活性化されますが、咀嚼が少ないと脳への血流が十分に増えず、ストレスへの対処能力や集中力が低下してしまいます。
英国のカーディフ大学の研究では、ガムを噛むことで作業中の集中力や記憶力が向上することが示されており、咀嚼は神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)の分泌を促すと近年研究を発表。
メジャーリーガーは試合中にもガムを噛んでストレスを軽減し、集中力を高めていることも知られています。

でも、長年の癖はそう簡単に変えられませんし、咀嚼は面倒臭いとお感じの人も多々いらっしゃいますが、食べ物は飲み物ではなく、「トロける」などと製品や食レポに書いてあったら要注意!だと、自戒含めてお考えいただきたいところです。

8weeks.aiメンバーからお送りいただいたお食事の写真、血液データ、そしてフリースタイルリブレのデータを参照しますと、咀嚼回数の少なさなが原因で血糖値のコントロールを見失ってしまう方々を多く見かけますが、誰も教えてくれません。

腸のためにも脳のためにも、もっと咀嚼しましょう!と声を大にしてお伝えしたいと、心底思う今週です。
ぜひ、今日の夕食から。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.710 1月24日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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