高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

日本初の「星空保護区」で満喫する超脱力の日々

高城未来研究所【Future Report】Vol.356(2018年4月13日発行)より


今週は、日本最南端の島、波照間島にいます。

人口わずか490人のこの島は、日本国内では南十字星を好条件で観測できる数少ない地域で、また、周囲に人工的な灯りが極めて少ないため、他の場所では見えにくい星を肉眼で観測することができる素晴らしい場所です。

今月、石垣市と竹富町(西表島や波照間島など)にまたがる「西表石垣国立公園」が、「ダークスカイ・パーク」と呼ばれる日本初の「星空保護区」として暫定認定されました。

米国アリゾナ州に本部を置く国際ダークスカイ協会(IDA)によれば、683基すべての外灯がIDA認定基準を満たしていないことから、今回の認定は暫定認定となりましたが、2023年度までに全基改修を行う計画のほか、3年以内に基準を満たして本認定を目指すと、石垣市と竹富町は発表しています。

また、住民とともに暗い夜空の維持と保護に取り組むため、住民意見を集めて光害を抑える「星空保全条例」の策定を計画。
住民の保全意識を高め、防犯灯や宿泊施設などの民間照明を抑制する方針です。
町長は「まず、波照間島からライトダウンを徹底して星空を眺められるようにする」と述べています。

確かに、この10年で、世界の光害は驚くほどに増えています。
米科学誌「サイエンス・アドバンス」 に掲載された論文によると、2012年〜2016年にかけて、人工の光で照らされた屋外面積は毎年2%以上広がり、多くの国で「夜が失われる」ことで、動植物や人間の健康に悪影響を及ぼしていると、科学者たちは指摘しました。

この指摘を受けることなく、周囲を見渡しただけでも不眠が増えており、光害と大いに関係があると考えられます。
人間の睡眠力は、脳の松果体から分泌されるメラトニン次第で、眠るタイミングは、実は朝一で浴びる光で決まるのです。

朝、光を浴びると、脳にある体内時計の針が進み、リセットされて活動状態に導かれます。
その後、体内時計からの信号で、メラトニンの分泌が止まります。
そして、メラトニンは目覚めてから14〜16時間ぐらい経過すると体内時計からの指令が出て再び分泌され、その作用で深部体温が低下して、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになり眠ります。
つまり、「強烈な光を浴びてから14〜16時間ぐらい経過すると眠る」ように、人間は設計されているのです。

しかし、現代社会は24時間LEDに煌々と照らされ、誰もが四六時中画面を見て、強烈な光を浴び続けています。
こうなると、「強烈な光を浴びてから14〜16時間ぐらい経過すると眠る」ような人間の基本設計が破綻してしまいます。
それゆえ、不眠や夜型などという本来の活動とは異なった不自然な状況が生まれ、気がつかないうちに心身共々疲弊することにつながります。
ですので、時には「ダークスカイ・パーク」のような「光の圏外」に足を運び、体をリセットする必要があると感じます。

今週滞在している波照間島では、「自然な暗さ」によって超脱力の日々を送り、1日のうち、大半を寝て過ごしています。

もうじき新月。
くつろぐには、最高の時が訪れます。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.356 2018年4月13日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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