高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

「いままでにない気候」で訪れる「いままでにない社会」の可能性

高城未来研究所【Future Report】Vol.408(2019年4月12日発行)より

今週は、金沢にいます。

桜が咲きながら、雪も積もるような今週の日本各地ですが、金沢も他ではありません。
市内も二月の気温に戻り、山間部では10センチ以上も雪が積もりました。

世界を見渡しても、昨年冬にはシベリアでマイナス67度を記録し、サハラ砂漠に雪が降るなど異例の気象現象が発生しています。
その原因は、太平洋のラニーニャ現象や世界的な地球温暖化などが指摘されていますが、最新刊「2049年 日本がEUに加盟する日」にも記載しましたように、真実は「宇宙気候変動」にあると、僕は考えています。

この新刊に図解しましたが、寒さに震える北半球と対照的に、南半球のオーストラリアは歴史的猛暑に見舞われ、シドニー郊外のペンリスでは、47.3度まで上昇。
この猛暑のためテニスの「シドニー国際」が一時中断され、一部の道路ではアスファルトが溶けて大規模な渋滞が発生する社会問題も発生しています。

その昔、晴れているのに、同時に雨が降るような「天気雨」は、非日常的な光景から「キツネの嫁入り」と呼ばれていましたが、桜に雪が積もるような景色が日常化すれば、そのうち「白ぎつねの入学式」などのあたらしい慣用季語が次々と生まれるのかもしれません。
映画「ブレードランナー」をはじめとする近未来映像のインパクトは、テクノロジーの進化より気候の変化に見受けられます。

もはや、事実上地球の温暖化を認めなくなったIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「第5次評価報告書」によれば、気候変動がもたらす8つのリスクをあげており、そのひとつが「極端な気象現象によるインフラ機能停止」です。
これは、地震同様、「今後、起こりえること」として、誰もが考える必要があるはずです。
気候は寒冷化へと向かうと同時に、急激に上り下りする「いままでにない気候」に突入し、同時に「いままでにない社会」へと変わってゆくのです。

実は、かく言う僕も、冬服をスーツケースの奥に仕舞い込んでしまいましたが、今後、衣替えのタイミングも大きく変わるのかもしれません。
神事や祭事に基づき、かつて平安時代の宮中行事から始まった衣替えの習慣は、いまも出雲では、6月初旬の出雲大社「凉殿祭」をもって衣替えとする伝統が残りますが、5月が夏日ばかりになれば、日々の生活に影響が出るため、「かつての習慣」を変える必要があるはずです。
その上、年々大きく変わる可能性も否めないゆえ、「過去に例を見ない」因習を、すべて忘れる必要があるのです。
つまり、今後「歴史と現実」の戦いが、あらゆる場所で生まれるものと思われます。

今後、生き残るため、早い速度の変化に対応する柔軟な個人と社会。

「過去に例を見ない」ことを、ことごとく排除してきた「日本式システム」を壊すのは、実は厳しい気候変動なのかもしれない、と考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.408 2019年4月12日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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