高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

「大テレワーク時代」ならではの楽しみ

高城未来研究所【Future Report】Vol.484(2020年9月25日発行)より

今週も再び東京に戻っています。

丸の内滞在が僕にとって楽しい理由のひとつに、歩いて秋葉原まで行けることがあります。

この1〜2年で、いわゆるストリーミングと言われる定額音楽配信サービスの音質がグンと向上したことから、いままでのヘッドフォンやスピーカーでは、再現性がなかなか追いつかなくなってきました。

ブルートゥース接続のワイヤレスヘッドフォンやモバイル・スピーカーは、SpotifyやApple Musicから提供される音楽を、より良く再生することを中心に考えられ設計されてきましたが、現状、ハードウェアがあたらしいサブスクリプションの定額音楽配信サービスの音質に追いついていません。

データ量を見れば明らかですが、SpotifyやAppel Musicは、320kbps程度の情報しか持たないのに、新しくはじまったAmazon Music HDや高音質がウリのTIDALは、24bit 96KhzとCDの倍以上もの情報量があり、何十倍もの開きがあります。
一聴すれば明らかで、音の解像感やヴォーカルの伸び、低音の気持ちよさなど、比較になりません。
5年ほど前には、320kbpsの圧縮音源でも違いがわからないと思ってましたが、ここまで音質が違うと、なかなか元に戻れないのが、正直なところです。
先行する米国を見れば、レコードと高音質ストリーミングサービス市場が急拡大し、時代は利便性ばかり求めて行き過ぎたデジタルを是正するように、失われた音楽情報を戻すような運動が起きているようにも見えます。

そこで東京にいる間に、あたしいサウンドシステムを作り上げようと、時間があれば秋葉原に通うようになりました。

実は近年、スピーカーにもイノベーションが起きています。

スピーカーは、もともと箱を鳴らすことに基本的な発想があります。
大きな音を出したいなら、それなりの大きさの箱と空間が必要でしたが、近年、スピーカーのなかにアンプとDSPを入れ、さらに空間(部屋)をコンピュータが測定し、残響を補正するシステムが定着しつつあります。

これにより、箱の大きさに依存せず、コンピュータで環境を補正すれば、デスクトップでも良質な音楽が聴けるようになったのです。

その上、アンプもソフトウェア化してきましたので、クラシックを聴くアンプとミニマルテクノを聴くアンプを、瞬時に入れ替えることもできるようになりました。

しかし、高音質と良い選曲がウリの音楽ストリーミングサービス「TIDAL」は、日本でサービスを展開していません。
その理由は、日本の芸能プロダクションの権利があまりに複雑で「グレー」だからだと、実際に権利をまとめようとする人たちは口々に話します。
「TIDAL」が日本でサービスを受けられないのは大変残念ですが、実はいくつか抜け道もあります。
ひとつは、海外に出た時にサービスを申し込むというものですが、現在の状況下では、少し難しいと思われます。

そこで、IPを偽装するVPNを使うのです。
例えば、「Tunnel Bear」(https://www.tunnelbear.com)などを使えば、IPアドレスを指定した国に偽装できますので、「TIDAL」の申し込みはもちろん、まだ日本ではじまっていない各種サービスやアプリケーションの取得をはじめ、いま滞在している場所を隠すゆえ、セキュアな使い方もできます。

また、以前もお伝えしたことがございますが、航空チケットを扱うサイトでも、IPアドレスと言語を変えることで、料金が大幅に変わる場合があることは、まだまだ知られていません。

実際は、日本国内にいるのに、まるで米国にいるように、移動せずに移動する。
これも、「大テレワーク時代」ならではの楽しみのひとつだと思います。

さて、連休だった今週、驚くほどの人出でビックリしました。
スペインの友人から聞くと、マドリッドでは再ロックダウンがはじまり、ロンドンの友人が言うには、ロンドンもロックダウンがはじまるとのこと。
今週、英国のハンコック保健相は、ロイターの取材に「われわれには選択肢があり、それは誰もが規則を守ることか、規制の強化を余儀なくされることだ」と語っています。

このように世界的には新型コロナウィルス感染拡大が治まった様子はありませんが、一方、連休中の日本は、繁華街も行楽地も大混雑で驚きました。
なにより、それに対するマスメディアの論調が突然のように大きく変わったように見えます。
政府は、来月から全世界からの入国を一部解禁にすると発表していますが、まるで「なにか」を行うこと前提に進めているように思えてなりません。

この余波は、来月後半あたりから冬にかけて一気に押し寄せるんだろうな、と肌寒くなった雨模様に秋を感じる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.484 2020年9月25日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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