※高城未来研究所【Future Report】Vol.491(2020年11月13日発行)より
今週は、和歌山、大阪、奈良、東京、金沢と移動しています。
どんなに慌ただしい日々を送っていても、僕にとって国内移動が楽なのは、時差ぼけがないことに尽きます!
欧州や米国へと向かう長い機内で過ごす時間は、長年に渡る旅行生活の慣れもあって、もはや苦になることはまったくありませんが、時差ぼけだけはなかなか解消できません。
時差ぼけは、数時間以上の時差がある地域間を飛行機などで短時間で移動した際に起こる、心身の不調状態を称する一般通称で、おそらく皆さんにも、相当のご経験があると思います。
特に著しい苦痛や体調不良を伴う場合は、「時差症候群」または「非同期症候群」と呼ばれ、中長期に渡って睡眠障害を引き起こします。
また近年、「社会的時差ぼけ」と呼ばれる「ソーシャルジェットラグ」にも注目が集まるようになりました。
これはドイツの時間生物学者、ティル・ローネンバーグ教授が提唱した新しい概念で、過度な仕事や飲み会、それに自由な出勤形態といったソーシャルな環境の変化によって就寝時間が日によって大幅に異なることに加え、それを解消するため、週末に長めに寝る(つまり、寝溜め)が、問題をさらに悪化させていく「移動なき時差ぼけ」として、欧州では健康問題として表面化するようになりました。
実は、休日の2日間朝寝坊しただけで、体内時計が30〜45分狂ってしまうことが複数の試験で確認されており、移動による時差ぼけ同様、1度ずれてしまったリズムをもとに戻すのは容易なことではありません。
眠気や日中の疲労感がドンドン蓄積していきますが、当人は「社会的時差ぼけ」の自覚がないのも特徴です。
これら時差ぼけのメカニズムは、旅行などによる長距離移動を短時間に行ったり不規則な生活を送ったりすると、周囲の影響による「外因性リズム」と、身体に刻まれている生活リズム=「内因性リズム」に同期のずれが生じることに原因があります。
この同期のずれが修正されるまでの期間、身体に発生する不調状態を総じて「時差ぼけ」と呼ぶのです。
時差ぼけが解消されるまでの期間(同期のずれが修正されるまでの期間)は、個人差や移動量、そして移動した方角によって地域差があり、一般的に年齢が若く、体力のある方が解消までの期間は短いと言われますが、僕の場合、20代でも50代になった今でも、ヘヴィな時差ぼけは変わりませんので、おそらく遺伝的要因も深く関係しているのではないか、と推察しています。
生体リズムを作り出す基本システムは「時計遺伝子セット」が担っており、全身の細胞や臓器が担う時計活動のマスタークロック(親時計)と、末梢時計(子時計)のズレが、ホルモン分泌や神経伝達をおかしくすることも判明しています。
音楽制作や映像制作を営みとする方ならご存知のように、CDの44.1kHz、ハイレゾと呼ばれる96kHzや192kHzなどの音楽を刻む周波数(サンプリングレート)を作り出すのがクロックで、CDプレイヤーからオーディオ・インターフェイスまで、デジタルをアナログに変換する機材には、必ずクロックが搭載されています。
腕時計だとクォーツと呼ばれる仕組みがこれにあたり、共に再生時に時差が生まれないよう「タイミングを管理」するのが仕事です。
しかし、非常に正確といわれるクォーツ時計でも、1か月で数秒のズレが生じ、また、クロックの周期には揺れも発生します。
この揺れがジッター(つまりノイズ)で、これを解消してノイズを軽減するために、マスタークロックジェネレーターと呼ばれる高額な外部機器と接続し、例えばアンテロープ社の「10MX」(https://bit.ly/3eSUs6m)などのマスタークロックを使って、完パケでは必ず音を整えねばなりません。
このように、音楽再生機器同士のクロックをあわせることによって音質が格段に良くなるのと同様に、外部から体内のマスタークロックを整え、体調をよくするひとつの方法が、サプリメントとしても売られている「メラトニン」なのです。
「メラトニン」は、動物、植物、微生物に存在するホルモンで、人間なら松果体でメラトニンを生成し、概日リズムによる同調を行います。
効能は、概日リズムの調整に役立つ他、血液脳関門も容易に通り抜けることが出来るため、体全体に行きわたる抗酸化物質として、つまりノイズを軽減する効能があります。
ただし、日本ではメラトニンを製造・販売することは認められていません。
そのため、利用する際には個人輸入の形で入手するか、あるいは米国渡航時・旅行時に入手するしかないのですが、医薬品医療機器等法により、個人の輸入量は1度に2月分までと制限されています。
一般的に時間管理といえば、いわゆるスケジュール・マネージメントを指すのでしょうが、実は体内の時間管理を怠れば、体調不良に陥り、スケジュールを乱してしまうのは誰でも同じはずです。
そこで、自身のマスタークロックの管理を怠ってはいけないわけですが、さて、皆さんの体内時計のマネージメント=マスタークロックは、本当に正確でしょうか?
目安のひとつは、朝、無理なく爽快に起きられるかどうか。
今週、日々移動続きでしたが、朝の目覚ましをかけることなく起きていますので、どうやらいまのところ、僕のマスタークロックは、正確のようです。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.491 2020年11月13日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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