高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ヘッドフォンの特性によるメリットとデメリット

高城未来研究所【Future Report】Vol.584(8月26日)より

今週は、東京にいます。

暑さのピークも越えたように感じますが、どこかホッとしたような、どこか寂しいような不思議な感覚の日々を過ごしてます。

さて、今週はいよいよ自分にあったヘッドフォン/イヤフォン選びにつきましてお話ししたいと思います。
最初にヘッドフォンをあまりご存じない方のために、ヘッドフォンの代表的な二種、密閉型と開放型につきましてお伝えします。

密閉型ヘッドフォンとは、その名の通り樹脂や木材による密閉されたハウジングにより、外部に音を漏らさない構造が特徴です。
それに対して開放型ヘッドフォンは、メッシュなどの開放されたハウジングを採用し、ドライバーユニットの後ろから発せられる音がハウジングの外にも出るように設計されています。 

密閉型ヘッドフォンのメリットは、構造に由来する遮音性につきます。
ヘッドフォン内部の音が外部に漏れにくく、外からのノイズも耳に入りにくくなりますので、電車や飛行機など乗りものなどで音楽を聴く場合には密閉型が自分のためにも周囲のためにも最適です。
ノイズキャンセリングも構造上密閉型ヘッドフォンでなければ搭載できません。
その上、構造が胴のように共鳴するため、低音が出やすいので迫力があるサウンドが得られます。
かくありまして、よく知らない人にヘッドフォンを売ろう考えるメーカーは、安価な密閉型を量産するのです。

一方、開放型のメリットは音がハウジング内にこもらないため音の抜けがよく、広い音場感が出せること、つまりスピーカーのように聞こえる点にあります。
簡単に言えば、窮屈なヘッドフォンとは思えない「空間性」にあります。
伸びのある高音も出しやすい構造なのですが、音漏れが大きく外からのノイズも聞こえてしまうため、騒がしい屋外での使用には向かない上に、ユニットが大型で持ち運びにも適していません。

このようなことから、音楽産業では外から音が入っては録音に支障が出るレコーディングには密閉型ヘッドフォン、録った音をスピーカーとあわせて確認しながら進めるミキシングやマスタリングには、開放型ヘッドフォンが適していると言われています。

また、イヤホンは本体のサイズに余裕があり、大口径のドライバーを搭載できるヘッドフォンに音質面で敵いませんが、なにより携帯性には優れています。
このイヤホンにも大きく二種ありまして、耳介に掛けて使用するインナーイヤー型と、耳の穴に差し込んで高い遮音性を持つカナル型の2種類が存在します。

カナル型とは、イヤホンの先端に耳栓に似た形状の「イヤーピース」が付いた密閉型イヤホンのことで、イヤーピースを耳の奥に入れ込んで使用するためフィット感に優れ遮音性が高く、密閉度がもたらす低音再生に優れます。
ただし、人によっては圧迫による疲労感から「ヘッドフォン難聴」になる人の使用が多いタイプでもあります。
長時間使用には、注意が必要です。

他方、インナーイヤー型はカナル型と異なり、耳の奥へ入れ込むイヤーピースがありません。
耳の入り口にある耳甲介と呼ばれる部分にイヤホンを引っ掛けて装着することから、聴く楽曲によっては周囲にシャカシャカ音を振り撒きます。
なにより安価に製作できますのでスマートフォンの付属で付いてくるのは、このタイプです。

このようなことから、通勤通学電車等、公共の場所で聞くなら密閉型ヘッドフォンかカナル型イヤフォンしかありませんが、後者は難聴に注意が必要で、密閉型ヘッドフォンも数週間に渡ってお伝えしてきましたように、ノイズキャンセリング機能つきは、高域が聞きづらくなってしまうリスクを孕みます。

その他、個別の耳型をとって作るIEM(インイヤーモニター)や骨伝導、さらには有線、無線などの違いがありますが、このあたりは使う場所と目的、例えばジョギングからライブステージ、DJ用、Youtubeの完パケなどによっても異なるところです。

さらには、聴く音楽のジャンルによってもヘッドフォン選びは異なります。
中音域と高音域が目立つ日本のポップスならイヤホンで十分ですが、より広域な再現性と解像感を求めるクラシックだと、開放型ヘッドフォンが望ましい。
とはいえ、実際には聞いてみなければわかりませんし、なにより装着感が大切です。
通常、ヘッドフォンやイヤホンを試聴する際には自分のお気に入りの楽曲を持ち込み、店頭で試し聞きします。
しかし、これだと可聴域が固定されてしまい、耳の衰えがわかりません。

そこで、聴力テストアプリをスマートフォンにダウンロードして家電量販や専門的で試聴するのです。

こうしてショップに出向いて様々なタイプのヘッドフォンを聴き比べ、勝手に店頭で聴力検査に勤しみ、自分の苦手な帯域が聞こえるヘッドフォンを探しつづけます。
この結果、僕は用途により、いくつかのヘッドフォンを分けて使うことにしました。
なにより、人が良いと言われるヘッドフォンが自分に良いとは限りません。
この点は、食事と似ています。

もし、いまお使いのヘッドフォンで聴きづらい帯域がおわかりでしたら、その帯域が聞こえるヘッドフォンやイヤホンをお選びください。
一般的に少し高額になりますが、外でも使用できる密閉型かカナル型(特にBAドライバー複数搭載)でご自分にフィットしたものがあれば、文字通り「世界が広がる」でしょう。

次週は、いよいよ2022年夏の私的なベスト・ヘッドフォンを発表します。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.584 8月26日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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