※高城未来研究所【Future Report】Vol.699(11月8日)より
今週は東京にいます。
この数日、米国の友人たちから「日本にしばらく移住したいんだけど、どうするのがいい?」と相談を受けます。
他ならぬ米国でドナルド・トランプが大統領選に勝ったことに嫌気がさした人たちが、米国から脱出するのを目論み、移住先を探しているのです。
近年、日本でもデジタルノマドビザを発給しはじめたことから、職種にもよりますが、長期間滞在が容易になってきました。
世界的にパンデミック以降は移住や長期滞在のハードルがグンと下がり、実際、僕の友人たちもデジタルノマドビザを申請もしくは申請中で、東京を中心に欧米からの中長期滞在者が日に日に増えています。
日本では、今年4月1日から「デジタルノマドビザ」として知られる在留資格「特定活動(告示53号)」が施行されました。
このビザは、外国の法人や団体との雇用契約に基づき、日本で情報通信技術を用いて業務に従事する外国人に付与され、具体例として、リモートワークを行うIT/ソフトウェア開発者、デジタルデザイナー、オンライン秘書、外国企業の事業経営を行う個人事業主など多岐に渡り、特に「オンライン秘書」を設けているところを見ると、かなり間口を広くとっていることがわかります。
一般的にオンライン秘書とは、海外の企業や個人に対してリモートで秘書業務を提供する職種を指し、スケジュール管理、アポイント調整、メール対応、資料作成、データ入力、経理・財務関連業務、マーケティング支援、SNS運用、Webサイト更新、広告運用などですが、エンジニアリングではありませんので定義は相当曖昧であり、僕はエンジニアやクリエイターではない友人たちに、この可能性をお伝えしています。
さて、肝心の日本の「デジタルノマドビザ」発給に関する条件は、査証免除国かつ租税条約締結国・地域の国籍であることで、英米、大半のEU加盟国、韓国、台湾、香港、さらにはメキシコやインドネシアなどの中進国までと、こちらも日本政府にしては珍しく門戸が広く開かれています。
年収の目安は1000万円以上必要で、円安だと言われる現在、欧米のIT企業やメディア等で働く30代以上の一般職なら、ほぼクリアできる条件です。
デジタルノマドの外国人は法的区分では「中長期滞在者」には該当しないため、日本国内の国民健康保険に加入することができず、民間の医療保険に加入することになりますが、クレジットカードの保険があれば医療保険に入る必要はありませんので、こちらも大半の人たちは問題ありません。
また、在留カードは交付されませんが、在留資格短期滞在や公用と同じようにパスポートに証印が貼付され、一時出国も可能です。
あわせて扶養する配偶者や子供たちにもビザが発給されるため、「オンライン共働き」であれば、さらにハードルが下がります。
ただし、日本のデジタルノマドビザには問題があります。
それは、在留許可された期間がわずか六ヶ月と大変短い点です。
しかも延長することができず、ドイツの3年やノルウェーの4年に比べると圧倒的な短さであり、今後、延長されることが待ち望まれています。
なぜなら、世界的に高度外国人材の流入は喫緊の課題であり、日本も他ではありません。
ただし、この短い期間にも抜け道がありまして、出国後6か月経過すれば再度、デジタルノマドビザを取得して滞在が可能ですので、季節の良い時期にタイなどと日本を往復しながら暮らそうと考えている人たちが相当数います。
通常の観光客同様に一度日本へ入国し、その後デジタルノマドビザを申請するのが一般的で、業務は行政書士などにすべておまかせできますが、英語が達者な行政書士が極めて少なく、このあたりも日本の課題だと思われます。
欧州一の頭脳と言われるフランスのジャック・アタリが20年近く前に予測した未来の3階層は、
1.ハイパーノマド(世界中どこでも働ける人)
2.バーチャルノマド(TVやインターネットでバーチャル空間を楽しんでいる人達)
3.下層ノマド(非常に貧しい人達)
に分かれると述べていましたが、パンデミック以降、そのハードルも大きく下がり(企業が譲歩し)、今後10年でハイパーノマド人口は二億人まで急増すると最新の予測を発表していますが、おそらくある時を境に、この階層間の移動はできなくなるでしょう。
個人がグローバル企業になる時代のいま、僕が20年近く前の自著でお話ししたように、動ける「外組」と動けなくなった「内組」に、今後ますます二極化するのだろうと考えます。
世界が動けば、人も動く。
鍵は、間違いなく短期間に高度技能人材へ自らを変化させることにあるのだろうと、友人たちのためにデジタルノマドビザを調べながら実感する今週です。
温暖だった東京も、日に日に寒くなってきました。
そろそろビタミンD3の量を増やすのをどうかお忘れなく。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.699 11月8日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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