農作業の実技講習会で講師をする
1月18日は、「田舎で働き隊!」花見川地区協議会からの依頼で、千葉の花見川区の農地で農作業の実技講習会を初めて行なう事になり、早朝家を出て、陽紀と合流し、勝田台駅へ。鍬を持つことなど20年ぶり以上かもしれないので、一体どうなる事かと思ったが、参加者の質問に応えて動いてみると、昔より、遥かに疲れず、上手になっている自分に我ながら驚く。
この実技講習会には、初心者の方ばかりではなく、現実に農業を仕事としている方も数名参加されたが、話を聞いてみると、農業の現場も介護と同じく腰などを痛めながら仕事をしている人が非常に多いらしい。そうした現代農業の実状を訴えた市原氏は、かつて私のところで、かなり武術の稽古をしていた筈なのだが、実際に鍬をふるう姿を見ると「ああ、それでは腰に無理がいくだろう」という体の使い方だった。ただ、さすがに、かつて武術の稽古、特に剣術に情熱を持って稽古をしていた市原氏だけに、私の指摘が非常に腑に落ちた様子で熱心に取り組んでいた。
私は、畑仕事の講師をしたのは初めてだが、薪割りなどの山仕事は得意で、かつて何度か薪割り講習会を行なった事がある。その時気づいた事は、私はやり慣れていて特別でもないと思っていた薪割りが、実は身体全体を微妙に関連させて行なわなければ、体を傷めず効率よくは出来ない技術だという事であった。さらに今回、初めて農作業の講師をして、それと同じように、あるいはそれ以上に、鍬や鎌の使い方も微妙な身体技術である事をあらためて知ったのである。
例えば、薪割りの斧などは、真直ぐ上段に振り上げて薪を割っていては、疲れが早く来てしまうので、体の向き変わりを使って、自然と振り上げるようにする。また、薪割り、農作業共に腰がすぐ辛くなる人の問題点として、腰を固定して前傾姿勢を保ち、その状態で手や腕を使っている事が気になった。私は腕、特に上腕は殆ど動かさず、肘から先の前腕は、腰を中心に脚足部の動きで使うようにしているのである。これは私の剣術の鉄則である「太刀は動かぬものと知るべし」を、そのまま応用したものである。そうした姿勢で鍬を地面に打ち込むと、鍬の柄と前腕、上腕が一体化しているようになる。そうして鍬の柄が非常に長くなった感覚で鍬を振り上げると、土に打ち込む時の威力が自然と大きくなる事も新発見だった。
また、鍬で土を掬いあげて、作物の根に寄せたり、畝などを作る動きも、腰を固定して腕で引き上げていれば、たちまち腰は辛くなる。それに対して私は、柔道でうずくまった状態の「亀」などを返す「平蜘蛛返し」の感覚を使って、鍬で土を掬い上げる時、自らの体重を沈め、その重さを利用して、鍬と土が上がってくるように工夫をした。こうすると、鍬で土を掬い上げる毎に、ちょっと休憩をしているような事になるから、疲れるどころか、かえって身体がほぐれてきて、しばらくやっていると心身共に楽しくなってくる。
よく昔の農作業の時、歌を歌うのは辛い作業の気分をまぎらわすためだというような説があるが、久しぶりに農作業をやってみて、むしろ歌は、農作業をやっていて、自分の身体がよく動く快感から自然と口から出たのだと思った。
鍬の他にも鎌での実習も行なったが、やっているうちに、いままでは思いつかなかった発見がいくつもあり、今回の農作業実習は引き受けて本当に意義があった。同行の陽紀も大いに得るところがあったようだ。
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