織田成果主義が崩壊したワケ
ただ、彼のしがらみの無さは、家中に静かな動揺をもたらした。そして彼自身、想像もしなかったような形でそれは顕在化してしまう。そう、本能寺の変だ。
「このままいけば織田家の天下統一は間違いない。でも、仕事が無くなったら、戦自慢の俺たちはどうなるの?」という疑問は、光秀でなくとも抱いただろう。
「いやあおまえたち、これまでよく頑張ってくれたね。長年の年功に応じて所領を分配するから、これからはゆっくり茶でも飲んで暮らしなさい」なんてことを信長が絶対に言わないであろうことは、家臣ならみんなよく分かっていたはず。
こうして、中途採用エリートの出世頭である明智光秀の謀反につながるわけだ。
そして、もう一つ、彼の成果主義には負の影響があった。彼の死後、織田家は他に例をみないほどのスピードで崩壊する。一応、(あまり出来のよろしくない)子供をそれぞれ担いで派閥争いという形を取ってはいたが、その後の家臣の争いは完全な覇権争いだ。事実、その争いを制した羽柴秀吉は、名実ともに天下人としての道を歩むことになり、かつて担いだ信長の嫡孫は田舎にポイ捨てされてしまった。
織田家は、年功序列という価値観が全否定された稀有な組織だ。だから信長という最強のストッパーが外れた後、誰も彼の「年功の残り」を担ぐ人がいなかったのだろう。そういう意味では、本能寺で信長が死んだ瞬間に、織田家も滅んだと言えるかもしれない。
余談だが、筆者はユニクロの柳井社長を見るたび、なぜか信長を思い出してしまう。

その他の記事
![]() |
コロナとか言う国難にぶつかっているのに、総理の安倍晋三さんが一か月以上会見しない件(やまもといちろう) |
![]() |
オーバーツーリズムでニセコ化する草津(高城剛) |
![]() |
有料のオンラインサロンを2年やってみて分かったこと(やまもといちろう) |
![]() |
2023年は「人工知能」と「公正取引」の年に(やまもといちろう) |
![]() |
衰退する日本のパラダイムシフトを先導するのは誰か(やまもといちろう) |
![]() |
ポストコロナという次の大きな曲がり角(高城剛) |
![]() |
「テレビを作る側」はどこを向いているか(小寺信良) |
![]() |
FATF勧告でマネーロンダリング日本不合格の後始末(やまもといちろう) |
![]() |
自民党党内処分と議員組み換え狂想曲(やまもといちろう) |
![]() |
大人の女におやつはいらない 上質な人生を送るための5つの習慣(若林理砂) |
![]() |
【号外】「漫画村」ブロッキング問題、どこからも被害届が出ておらず捜査着手されていなかった可能性(やまもといちろう) |
![]() |
今週の動画「太刀奪り」(甲野善紀) |
![]() |
想像もしていないようなことが環境の変化で起きてしまう世の中(本田雅一) |
![]() |
『一人っ子政策廃止』は朗報か?(ふるまいよしこ) |
![]() |
米朝交渉を控えた不思議な空白地帯と、米中対立が東アジアの安全保障に与え得る影響(やまもといちろう) |