経営者としての決断、父親としての苦悩

父親が次男に事業を継がせた深~い理由

時間をかけて腹に落としていくしかない

ただ、老舗や名家と言われる実業の世界では、親族間の争いが起きやすいのも事実であります。株の分配や遺産を巡る相続の争いというのは、金が目の前に詰まれたときに豹変してしまう人間の弱さを突きつけられる思いがします。

いま、まさに貴殿が悩み、苦しんでいる状態と言うのは、文字通り貴殿のお父様の考えが正しかったという可能性を示唆するものです。つまり、お父様はそういうことで飯が喉を通らないほど思い悩んでしまう貴殿に対して、仕事を引っ張り、組織を率いて人の上に立つ器量を感じなかったのかもしれません。

もしも、継ぐべき会社などなくなっても独りで俺は喰っていけるというような自負があったならば思い悩むことなどほとんどないでしょうし、また弟が上に居ても俺はここで仕事ができれば満足だとなれば唯々諾々と継ぐ弟さんのため家業のため部下のために働くこともできるのです。ただ、貴殿はまだその割り切りができない。俺が社長を継ぐはずだと強く思っていたからこそ、弟さんに継がせるというお父様の決断にショックを受けたのではないでしょうか。

私が自分の経験や考えを元に、貴殿に「受け入れましょう」というのは簡単です。でも、貴殿は納得できないだろうと思います。もう少し、時間をかけて腹に落としていくしか方法はないんだろうと感じますので、くれぐれも自暴自棄になったりせず、自分の人生は自分で切り拓くのだという、普通に生きている人であれば普通に覚悟をすることを普通に考えて行動されるのがよろしかろうかと思います。

私も親父から事業を継ぐことは結構な苦労を伴いましたが、二桁億のマイナスからスタートしたことと比べれば、貴殿の立場は相当恵まれていると思いますよ。もし生まれ変わるならば、貴殿のようなポジションにいたかったと感じるぐらいの話です。

もっと広く世間を見て、自分自身の足で生きていく感覚を持ちながら前を向いて生きていくことをお奨めします。

 

やまもといちろうメルマガ『人間迷路』Vol.24、「迷子問答」より>

1 2 3
やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

NHK Eテレ「SWITCHインタビュー達人達 片桐はいり×甲野善紀」は明日(7月2日)22時放送です!(甲野善紀)
実に微妙な社会保障議論についての11月末時点での総括(やまもといちろう)
最近ハゲ関連が熱い、あるいは新潟日報と報道の問題について(やまもといちろう)
貧乏人とおひとり様に厳しい世界へのシフト(やまもといちろう)
「リボ払い」「ツケ払い」は消費者を騙す商行為か(やまもといちろう)
福永活也さんの「誹謗中傷示談金ビジネス」とプロバイダ責任制限法改正の絶妙(やまもといちろう)
メディアの死、死とメディア(その3/全3回)(内田樹)
Appleがヒントを示したパソコンとスマホの今後(本田雅一)
サイエンスニュースPICK UP by カワバタヒロト(川端裕人)
クリエイターとして成功したければ本を捨てろ(岩崎夏海)
AV女優だからって、特別な生き方じゃない 『名前のない女たち~うそつき女』サトウトシキ監督インタビュー(切通理作)
日本はどれだけどのように移民を受け入れるべきなのか(やまもといちろう)
Kindle Unlimitedのラインナップ変更は「日本への対応」不足が原因だ(西田宗千佳)
週刊金融日記 第277号 <ビットコイン分裂の経済学、ハードフォーク前夜の決戦に備えよ他>(藤沢数希)
「モテる人」が決して満足できない理由(岩崎夏海)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ