人はどうやってものを選ぶのか
小寺 僕の持論はですね、そもそも販社が強すぎる会社は商品が面白くないんですよ。
西田 うんうん、わかります。
小寺 というのは、マーケティングして物を作ろうとするから、出てきた頃にはもう遅いんですよ。
でもね、そうは言ってもやっぱり技術を中心に据えていく会社というのは、売る方、セールスは大変ですよ。「これの何がいいのかよくわからないけどとりあえず売上は立てなければいけない!」みたいなミッションが降りてくるので、モノは悪くないけど営業は大変、っていう状況になると思うんですよね。
僕ね、こないだX-Gamesの取材でロスに行って。ソニーさんのアテンドだったんで、ビバリーヒルズにあるソニーストアにも行かせてもらったんですよ。
西田 はいはい。
小寺 でね、そこは全米のソニーストアのアンテナショップみたいなことになっていて、店長が非常に大きな権限を任されていて、かなり実験的な試みもどんどんやらしてるんだけど、その中で非常に面白かったのは、テレビの並び方を変えただけで、顧客が製品をよく見るようになった、ということなんですよ。
西田 ほぉー。
小寺 これまではどうやってたかというと、BRAVIAってほら、ラインナップが複数あるじゃない? たとえば4ラインナップとか。で、それぞれのラインナップごとにサイズがあるわけですよ。これまでは、ラインナップごとにくくって、横に並べててたと。そうなると、顧客はテレビの前に置いてあるスペックシートを一生懸命見始めちゃって、全然テレビを見てないっていう状況になって、全然決まらないんですって。
で、それで考えて、並び方を変えた。単純にサイズごとにまとめて並べた。
西田 ああ、ああ、なるほど。
小寺 結果32インチコーナーにラインナップ4つぐらい並んで、42インチにまた4つ並んで、51インチが並んで…、みたいになってると。顧客は大体どの大きさのを買うっていうのは、最初の目星からそんなには変わらないと。
西田 そうでしょうね。
小寺 あとは、何が違うの、という話だから、そうなった時に画を良く見て、同じサイズの中で選ぼうとするから、商品そのものをよく見てくれる。
西田 はいはいはい、なるほど。
小寺 で、さらにそこを深く知りたいと思って、初めて下にあるスペックの紙を見るようになった、という流れがあるんですって。
西田 なるほど。
小寺 つまり人はどういう風に物を選んでいって、絞り込んでいくのかというプロセスを、本当はもっと研究しなくてはならなくて。もっと言えば、商品のラインナップというのは、今までのようにこの価格帯・このレベル・この機能でサイズ違い、みたいな作り方をするのが本当に正しいのか、というところをもう一回考えないと、ダメなんじゃないかと。
その他の記事
![]() |
どうすれば「親友」ができるのか–赤の他人に興味を持つということ(名越康文) |
![]() |
大きくふたつに分断される沖縄のいま(高城剛) |
![]() |
岸田文雄さんは「6月14日解散・7月23日投開票本線」を決断できるのか(やまもといちろう) |
![]() |
俺たちのSBIグループと再生エネルギーを巡る華麗なる一族小泉家を繋ぐ点と線(やまもといちろう) |
![]() |
米国の変容を実感するポートランドの今(高城剛) |
![]() |
「負けを誰かに押し付ける」地方から見た日本社会撤退戦(やまもといちろう) |
![]() |
「キレる高齢者」から見る“激増する高齢者犯罪”の類型(やまもといちろう) |
![]() |
2022年夏、私的なベスト・ヘッドフォン(高城剛) |
![]() |
過去最高益を更新したトヨタ自動車の今後に思うこと(本田雅一) |
![]() |
「5類」強行の岸田文雄政権が僕たちに教えてくれたもの(やまもといちろう) |
![]() |
迷走ソフトバンクのあれやこれやが面倒なことに(やまもといちろう) |
![]() |
閉鎖性こそがグローバル時代の強みにもなる可能性(高城剛) |
![]() |
ポスト・パンデミックのキューバはどこに向かうのか(高城剛) |
![]() |
言語を問うことの意味(甲野善紀) |
![]() |
日本のものづくりはなぜダサいのか–美意識なき「美しい日本」(高城剛) |