西田宗千佳×小寺信良対談 その3(全4回)

人は何をもってその商品を選ぶのか

人はどうやってものを選ぶのか

小寺 僕の持論はですね、そもそも販社が強すぎる会社は商品が面白くないんですよ。

西田 うんうん、わかります。

小寺 というのは、マーケティングして物を作ろうとするから、出てきた頃にはもう遅いんですよ。

でもね、そうは言ってもやっぱり技術を中心に据えていく会社というのは、売る方、セールスは大変ですよ。「これの何がいいのかよくわからないけどとりあえず売上は立てなければいけない!」みたいなミッションが降りてくるので、モノは悪くないけど営業は大変、っていう状況になると思うんですよね。

僕ね、こないだX-Gamesの取材でロスに行って。ソニーさんのアテンドだったんで、ビバリーヒルズにあるソニーストアにも行かせてもらったんですよ。

西田 はいはい。

小寺 でね、そこは全米のソニーストアのアンテナショップみたいなことになっていて、店長が非常に大きな権限を任されていて、かなり実験的な試みもどんどんやらしてるんだけど、その中で非常に面白かったのは、テレビの並び方を変えただけで、顧客が製品をよく見るようになった、ということなんですよ。

西田 ほぉー。

小寺 これまではどうやってたかというと、BRAVIAってほら、ラインナップが複数あるじゃない? たとえば4ラインナップとか。で、それぞれのラインナップごとにサイズがあるわけですよ。これまでは、ラインナップごとにくくって、横に並べててたと。そうなると、顧客はテレビの前に置いてあるスペックシートを一生懸命見始めちゃって、全然テレビを見てないっていう状況になって、全然決まらないんですって。

で、それで考えて、並び方を変えた。単純にサイズごとにまとめて並べた。

西田 ああ、ああ、なるほど。

小寺 結果32インチコーナーにラインナップ4つぐらい並んで、42インチにまた4つ並んで、51インチが並んで…、みたいになってると。顧客は大体どの大きさのを買うっていうのは、最初の目星からそんなには変わらないと。

西田 そうでしょうね。

小寺 あとは、何が違うの、という話だから、そうなった時に画を良く見て、同じサイズの中で選ぼうとするから、商品そのものをよく見てくれる。

西田 はいはいはい、なるほど。

小寺 で、さらにそこを深く知りたいと思って、初めて下にあるスペックの紙を見るようになった、という流れがあるんですって。

西田 なるほど。

小寺 つまり人はどういう風に物を選んでいって、絞り込んでいくのかというプロセスを、本当はもっと研究しなくてはならなくて。もっと言えば、商品のラインナップというのは、今までのようにこの価格帯・このレベル・この機能でサイズ違い、みたいな作り方をするのが本当に正しいのか、というところをもう一回考えないと、ダメなんじゃないかと。

1 2 3

その他の記事

なんでもアリのハイレゾスピーカー「RS-301」を試す(小寺信良)
ネットニュース界隈が公正取引委員会の槍玉に上がっていること(やまもといちろう)
貧乏人とおひとり様に厳しい世界へのシフト(やまもといちろう)
「こんな死に方もありますよ」と、そっと差し出す映画です ~『痛くない死に方』監督高橋伴明×出演下元史朗インタビュー(切通理作)
アジアではじまっているメガハブ空港の王座争い(高城剛)
日本が抱える現在の問題の鍵はネアンデルタール人の遺伝子にある?(高城剛)
「今の技術」はすぐそこにある(西田宗千佳)
週刊金融日記 第294号【怪物ビットコイン ~ハードフォークという富の複製、ビットコイン・ダイヤモンド誕生!時価総額1兆7000億円他】(藤沢数希)
失ってしまった日本ならではの自然観(高城剛)
西村博之(ひろゆき)訴追問題と4chan周辺の迷惑なネタ(やまもといちろう)
食えない中2はただの中2だ!(家入一真)
「小文字」で執筆中(平川克美)
結局「仮想通貨取引も金商法と同じ規制で」というごく普通の議論に戻るまでの一部始終(やまもといちろう)
週刊金融日記 第281号 <Pythonで統計解析をはじめよう、北朝鮮ミサイル発射でビットコイン50万円突破>(藤沢数希)
明日にかける橋 1989年の想い出(切通理作)

ページのトップへ