どんなお金でも経済に回すのが「金融」
――外資系金融機関に勤めている人のカルチャーが詳しく描かれている箇所も、この本の読みどころですね。意外とケチで驚きました(笑)。
藤沢:ケチなのはトレーダーですね。なんでも安く買うことばかり一日中考えていますから。外資系金融機関のトレーディング・デスクは、ほんの数年前までオタク学生だった人が、ちょっと上手くいくとすぐに年間何千万円もの報酬を得る世界です。彼らがどのような生活をしているのか、お金に対してどのような感覚を持っているのかも、この本で伝えたかった。
まあ、一言でいってケチな人が多いですね(笑)。でもこれはトレーダーに限らないかもしれません。最近の小金持ちは一昔前とはイメージが違って、外見とか雰囲気では、この人が何千万円、時に何億円も稼いでいるといったことはわからない。お金持ちっぽくなくて、ある意味では、親しみがある。みんなと変わらない生活をしていたりするんです。
――でも、お金持ちがお金を使わないと経済としてはマズいのではないでしょうか。
藤沢:いや、そんなことはありません。お金持ちがお金を使わなくても、経済を回す仕組みが「金融」なんです。金融機関に預金をしていれば、その預金を金融機関が勝手に誰かに貸したり、何かに投資したりします。こうして世の中にお金が回っていくんです。このようにとにかくお金があれば、それを経済に回すのが金融のすごいところであり、世界をここまで豊かにした仕組みなのです。
日本のお年寄りは金持ちだけど、一方で若者は貧乏で、年金も今後は破綻してしまうし、税金面でも不利を被るといわれている。でも、金融という視点からみると、日本の銀行は、日本のお年寄りが銀行に預けているお金で国債を買っています。つまり、日本政府は、お年寄りのお金を勝手にバラまいている、と見ることもできるわけなんです。
もしこの後、幸運にも財政破綻することなく、財政赤字の分は、若い労働者から税金として絞りとり、それを銀行に利子を含めてお金を返すのであれば、今の若者は搾取されているといえるでしょう。でも、財政破綻して、インフレが起きるなどすれば、これまで政府が負ってきた借金は吹き飛びます。お年寄りの預金とともにね。もしそうなるならば、むしろ若者世代が老人を搾取しているともいえるわけです。他人のお金を勝手に使って返さないわけですから。もちろん、財政破綻はインフレが起こるだけでなく、社会のインフラを破壊しますから、オススメしませんが(笑)。
――なるほど! 金庫に入れておかない限り、大丈夫だと。
藤沢:いえ、厳密に言えば、金庫に入れておいても問題ありません。お金というのは、刷り過ぎるとインフレになります。通貨の価値が下がってくるわけですね。でももし、お金持ちが金庫にお金を入れっぱなしにして、死んでしまったらどうなるでしょうか。その金庫のお金は出てこないとしましょう。この状況を金融的に読み解くと、「自社株買いをした株式会社が、その自社株を消却した」のと同じことなんです。つまり、市場に流通するお金を減らすということは、すでに流通しているお金の価値を上げることになるわけですね。ですから、そのお金が市場に出てこないことがわかれば、その分、政府と中央銀行がお金を刷っても、通貨の信用は毀損されない。こうしたことを含めて考えると、金融というシステムがあるかぎり、経済の中でお金はちゃんと回るのです。繰り返しますが、資本主義社会において「金融」は、極めて大切な仕組みなんです。
ただ、金融機関に勤める人たちが受け取っていた高額報酬は、金融という経済に欠かせないサービスを提供するという付加価値よりも高いものだったのかもしれません。だって、大失敗したら、政府や中央銀行の信用を使って、さまざまな形で補填されるのですから。政府や中央銀行の信用というのは、徴税権に他なりません。つまり、金融機関は儲かったら自分のもの、損したら納税者のもの、というビジネスをしていたことになります。結局、大きすぎてつぶせないような巨大金融機関は、こうした「暗黙の政府保証」という補助金をもらっていたわけですから、本来であれば、その分は何らかの名目で課税されてしかるべきであって、彼らの出していた利益自体が不当なものだったともいえるのです。
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