津田大介
@tsuda

津田大介のメルマガ『メディアの現場』より

国民投票サイト「ゼゼヒヒ」は何を変えるのか――津田大介、エンジニア・マサヒコが語るゼゼヒヒの意図

国民投票サイト『ゼゼヒヒ』の射程

――ゼゼヒヒを公開して1週間が経ち、さまざまなフィードバックがあったと思います。そうした反響を受けて、どんな感触を得ましたか?

マサヒコ:ゼゼヒヒは意外とズレていなかった、という感触を掴みました。ゼゼヒヒへの感想やコメントを見ると、「多数決を目指していないのがいい」「意見がたくさん読めるのがいい」「理由がわかるのがいいよね」と、僕たちの狙い通り、意図通りの反応が得られている。いろんな人から評価をしていただけているので、立ち上がりとしてはしっかりハマったなという印象です。

 

――目下の課題としてはどういうことがありますか?

津田:まずはスマートフォンへの対応とFacebookアカウントでのログインへの対応。この二つをやった上で、より多くの人に使ってもらうことですね。それから、ゼゼヒヒを使って意見を集めたいという人にコミットしてもらって、質問を出してもらいつつユーザーを拡大していく、というのもありかなと考えています。ゼゼヒヒでの意見表明が日常的に行われるようになったタイミングで、質問の作成機能をユーザーに広げるということも考えています。企業向けにも調査、マーケティングツールとして提供して、その代わりに広告を出稿してもらうというようなコラボもできるかもしれませんね。

マサヒコ:ゼゼヒヒのコア機能については、現状でほぼ出揃っているので、スマホ対応、Facebook対応などの細かいところを粛々と進めていきます。大きく変えていくというより、ユーザーが気持ち良くサイトを使えるように細かいところをブラッシュアップしていくという感じですね。サイトを開いていると、投票した人の意見がリアルタイムで追加されてグラフがどんどん変わっていくとか、自分の意見が同意されるとランプが点灯するとか、そういったリアルタイムの要素を入れていく予定です。

津田:あとはみんなが答えたくなるよう質問を着実に更新していくことですね。ツイッターのトレンドや時事ニュースに関連した質問はどんどん出していこうと思います。たくさんの質問を重ねていくことで、トレンドやニュースに対する多角的な見方を提供する、というところを明確にしていきたいですね。

 

――最後に、ゼゼヒヒの今後の展望について訊かせてください。

津田:将来的には、一つひとつの質問をプラットフォーム的に使えるようにしたいですね。その意味でも、東京五輪誘致の質問は面白かったんですよ。賛成意見でも反対意見でも「なるほど、なるほど」と思わせる論点がたくさん書き込まれました。そうした意見を猪瀬直樹都知事に見てもらいたいんですよね。知事に見てもらって、反対意見に答えてもらう。さらに発展させて、ゼゼヒヒを使って都民に意見を求めることもできると思うんですよ。「こういう問題があって、こういう解決策がある」ということを質問にして、それに対する都民の意見をリアルタイムで表明してもらう。審議会や委員会で募集するパブリックコメントとは違う、リアルタイムのパブリックコメントになりますよね。ゼゼヒヒはそのような形でオープンガバメントを実現していくためのツールにもなりうると思っています。今度そのあたりを画面で見せながら猪瀬都知事にきちんとプレゼンをしたいですね。そういうさまざまな政治家との接続方法を考えることで、インタビュー冒頭で答えたような「政治家が日常的に利用できる意見表明場」になっていくと思うので。

マサヒコ:ゼゼヒヒは、社会問題に対するみんなの賛否を反映して、「これが民意です!」と示すためのものではなくて、社会問題をどうしていけば良いのかを考えるときに、具体的に役に立つ意見を出すもの、というイメージがあるんです。「賛成」か「反対」の多数決ではわからない「どうしてそう思うのか」というニーズの部分を抽出することで、「何が問題なのか」「何を解決すればいいのか」が浮かび上がってくる。それを政治家に対して示していけるような存在にしていきたいですね。政治家はニーズを汲み取って解決に導くことができる能力を持っていると僕は思っていますから。

津田:ゼゼヒヒをオープンさせて良かったと思ったのが、いろんな可能性が見えてきたことです。まずはアクセスを増やすことですが、広告などでマネタイズしていって、ゼゼヒヒ専属の編集者を雇えればと考えています。そうすれば、硬軟さまざまな質問を作りつつ、ソーシャルで「今話題にすべき」というタイミングでコミットできる体制を整えていけるかなと。また、ゼゼヒヒにはデータジャーナリズムやオープンガバメント的な方向性もあるし、いろんな可能性があると思っています。そういった部分で、多方面に広げていきたいですね。いまツイッターやFacebookのようなフローなメディアで流れて消えていってしまう「もったいないよね」的なものをストックする場として、Togetter [*29] やNAVERまとめ [*30] が成長していますが、ゼゼヒヒはToggeterやNAVERまとめとは異なるストックの場になりうるんじゃないかと。すごく限定的なサービスではあるのですが、限定しているがゆえの強さもある。実際にオープンしてみたら思った以上にいろいろなかたちで応用できそうだという手応えを感じているので、うまく育てていきたいと思っています。みなさまもぜひ、ゼゼヒヒを楽しみつつ、お友達にも広めていってくださいね!

 

◎国民投票ゼゼヒヒ
http://zzhh.jp/

 

《この記事は「津田大介の『メディアの現場』からの抜粋です。ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。》

 

[*1] http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1212/19/news111.html

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1212/20/news123.html

[*2] 開始から10日間のページビュー数は約50万PV。月間150万PVペース。

[*3] http://shindanmaker.com/

[*4] http://live.nicovideo.jp/watch/lv115221366

[*5] http://news.nicovideo.jp/watch/nw438475/6

[*6] http://blogos.com/discussion/

[*7] http://seiji.yahoo.co.jp/vote/

[*8] https://twitter.com/zzhh/status/283897798913572864

[*9] http://support.twitter.com/articles/266149

[*10] http://b.hatena.ne.jp/

[*11] http://kotonoha.cc/

[*12] http://zzhh.jp/questions/35

[*13] http://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/news/CK2012122202000100.html

[*14] http://zzhh.jp/questions/26

[*15] http://zzhh.jp/questions/27

[*16] http://zzhh.jp/questions/15

[*17] http://zzhh.jp/questions/77

[*18] http://e-words.jp/w/E382AFE383ADE383BCE382BAE38389E38399E383BCE382BF.html

[*19] http://zzhh.jp/questions/18

[*20] http://zzhh.jp/questions/3

[*21] http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%8D%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%AE%E3%81%93%E6%88%A6%E4%BA%89

[*22] http://zzhh.jp/questions/23

[*23] http://zzhh.jp/questions/29

[*24] http://zzhh.jp/questions/55

[*25] http://zzhh.jp/questions/40

[*26] http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%F3%A5%E2%A5%C6

[*27] http://zzhh.jp/questions/36

[*28] http://zzhh.jp/questions/57

[*29] http://togetter.com/

[*30] http://matome.naver.jp/

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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