「好き嫌いがわからない」のはアイデンティティ障害の兆候
自分のやりたいこと、あるいはやりたくないことがわからない、というのは端的に言えば「好き嫌い」がわからない、ということです。そして「好き嫌い」がわからなくなるということに、僕は「アイデンティティ障害の兆候」を感じます。
コウモリが明るい場所を嫌い、暗い場所へと逃げ込むように、あらゆる生命は、「好き嫌い」を軸に行動し、その命をつないでいます。つまり、「好き嫌いがわからなくなる」というのは、生命としてのアイデンティティが壊れつつあるといってもいいぐらい、危機的な兆候だということです。
アイデンティティ障害に陥っている人間は「やってもいいこと」だけをやり、「やらなくてもいいこと」や「推奨されないこと」には手を出しません。社会もひとつの「生命」です。もし、社会そのものがある種のアイデンティティ障害に陥っているとすれば、その結果として、個々の組織や人々からも創造性が失われることになります。
「言われたことはやるけれど、自分から新しいことに取り組むことを嫌う」新入社員が毎年のように現れるのは、社会全体がアイデンティティ障害に陥っていることの「結果」に過ぎないのかもしれません。
子育てや教育はもちろんのこと、それこそ社会人となった後の新入社員教育の場面においてすら、僕らは「言われたことを素直にやる」ということを手放しに評価しがちです。でも、「これをやりなさい」と言われたことをそのまま素直にやる、ということは「病み」の兆候といっても過言ではないと僕は捉えています。
なぜなら、「言われたことを素直にやる」というのは、別にそれを「やりたい」からではないからです。他人から言われた事を素直にやるのは、「やりたくないこと」が明確でないことの結果に過ぎません。人間というのは、元気であればあるほど人から言われたことに反発するし、病気になって元気をなくすと、人から言われたことに素直に従う。そういう生き物です。

その他の記事
![]() |
観光バブル真っ直中の石垣島から(高城剛) |
![]() |
武術研究者の視点—アメフト違法タックル問題とは? そこから何かを学ぶか(甲野善紀) |
![]() |
猥雑なエネルギーに満ちあふれていた1964年という時代〜『運命のダイスを転がせ!』創刊によせて(ロバート・ハリス) |
![]() |
ベトナムが暗示する明日の世界絵図(高城剛) |
![]() |
吉野彰さんノーベル化学賞に想う、リチウムイオン電池と現代デジタル製品(本田雅一) |
![]() |
一流のクリエイターとそれ以外を分ける境界線とは何か?(岩崎夏海) |
![]() |
「道具としての友人」にこそ、友情は生まれる(名越康文) |
![]() |
Amazon(アマゾン)が踏み込む「協力金という名の取引税」という独禁領域の蹉跌(やまもといちろう) |
![]() |
スターウォーズとレンズとウクライナ紛争(高城剛) |
![]() |
フェイクニュースか業界の病理か、ネットニュースの収益構造に変化(やまもといちろう) |
![]() |
「代替」ではなく「補完」することで「統合」する医療の時代(高城剛) |
![]() |
「ウクライナの次に見捨てられる」恐怖から見る日米同盟の今後(やまもといちろう) |
![]() |
小商いと贈与(平川克美) |
![]() |
視力回復には太陽の恵みが有効?(高城剛) |
![]() |
急成長を遂げる「暗闇バイクエクササイズ」仕掛け人は入社3年目!?–「社員満足度経営」こそが最強のソリューションである!!(鷲見貴彦) |