「好き嫌いがわからない」のはアイデンティティ障害の兆候
自分のやりたいこと、あるいはやりたくないことがわからない、というのは端的に言えば「好き嫌い」がわからない、ということです。そして「好き嫌い」がわからなくなるということに、僕は「アイデンティティ障害の兆候」を感じます。
コウモリが明るい場所を嫌い、暗い場所へと逃げ込むように、あらゆる生命は、「好き嫌い」を軸に行動し、その命をつないでいます。つまり、「好き嫌いがわからなくなる」というのは、生命としてのアイデンティティが壊れつつあるといってもいいぐらい、危機的な兆候だということです。
アイデンティティ障害に陥っている人間は「やってもいいこと」だけをやり、「やらなくてもいいこと」や「推奨されないこと」には手を出しません。社会もひとつの「生命」です。もし、社会そのものがある種のアイデンティティ障害に陥っているとすれば、その結果として、個々の組織や人々からも創造性が失われることになります。
「言われたことはやるけれど、自分から新しいことに取り組むことを嫌う」新入社員が毎年のように現れるのは、社会全体がアイデンティティ障害に陥っていることの「結果」に過ぎないのかもしれません。
子育てや教育はもちろんのこと、それこそ社会人となった後の新入社員教育の場面においてすら、僕らは「言われたことを素直にやる」ということを手放しに評価しがちです。でも、「これをやりなさい」と言われたことをそのまま素直にやる、ということは「病み」の兆候といっても過言ではないと僕は捉えています。
なぜなら、「言われたことを素直にやる」というのは、別にそれを「やりたい」からではないからです。他人から言われた事を素直にやるのは、「やりたくないこと」が明確でないことの結果に過ぎません。人間というのは、元気であればあるほど人から言われたことに反発するし、病気になって元気をなくすと、人から言われたことに素直に従う。そういう生き物です。

その他の記事
![]() |
どんなに撮影が下手な人でも人を美しく撮れる黄昏どきの話(高城剛) |
![]() |
スマホが売れないという香港の景気から世界の先行きを予見する(高城剛) |
![]() |
歴史が教えてくれる気候変動とパンデミックの関係(高城剛) |
![]() |
なんでもアリのハイレゾスピーカー「RS-301」を試す(小寺信良) |
![]() |
「完全ワイヤレスヘッドホン」に注目せよ!(西田宗千佳) |
![]() |
不可解なフジテレビのインタビューねつ造シーン(小寺信良) |
![]() |
「温かい食事」だけが人生を変えることができる #養生サバイバル のススメ(若林理砂) |
![]() |
お悩み相談室 スナックりさちゃんへようこそ!(若林理砂) |
![]() |
まだ春には遠いニュージーランドでスマホ開発の終焉とドローンのこれからを考える(高城剛) |
![]() |
季節の変わり目の体調管理(高城剛) |
![]() |
緊張して実力を発揮できない人は瞬間的に意識を飛ばそう(名越康文) |
![]() |
東芝「粉飾」はなぜきちんと「粉飾」と報じられないか(やまもといちろう) |
![]() |
「現在の体内の状況」が次々と可視化される時代(高城剛) |
![]() |
「HiDPIで仕事」の悦楽(西田宗千佳) |
![]() |
夕日が映える豊かな時間をゆったりと楽しんで生きる(高城剛) |