名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

「近頃の新入社員は主体性に欠ける」と感じる本当の理由

無意識のうちに発している「この範囲の中で」というメッセージ

 

「やってもいいこと」だけをやり、「やらなくてもいいこと」や「推奨されないこと」には手を出さない。

 

少なくとも、日本社会全体が人に「好き嫌い」をわからなくさせるような土壌を持っているということは間違いないでしょう。では、その土壌はどこから生まれてきたものなのでしょう? なぜいつの時代も、日本では「近頃の若いものは積極性に欠ける」ように感じられてしまうのでしょう?

 

例えば職場の上司や学校の先生、あるいはお子さんをお持ちの親に、一人ひとり聞いてみてください。おそらく誰一人、「クリエイティブになるな」と言う人はいないでしょう。僕らは誰も、クリエイティブになること、創造性を発揮することを否定してはいません。少なくとも表向きには。

 

にもかかわらず、子育てでも、教育でも、職場のOJTにおいても、一人ひとりの自発性やクリエイティブ性が発揮される空気や土壌が育ってこない。むしろ、創造性の芽を摘むようなことばかりが起きてしまう。なぜこんなことになってしまうのでしょう?

 

それはおそらく、日本社会には常に<ただし、この範囲の中で>という言葉が重く、僕らの無意識(前意識)にのしかかっているからです。

 

「クリエイティブになりなさい(ただし、この範囲の中で)」

「自由にやりなさい(ただし、この範囲の中で)」

「好きなものを選んでね(ただし、この範囲の中で)」

 

家庭でも、学校でも、会社でも、日本には常に、こういうダブルバインド的なメッセージがあふれています(あるいは、自分が親や教師といった立場に立ったときには、そういうメッセージを無意識のうちに発しているのです)。

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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