「好き嫌いがわからない」のはアイデンティティ障害の兆候
自分のやりたいこと、あるいはやりたくないことがわからない、というのは端的に言えば「好き嫌い」がわからない、ということです。そして「好き嫌い」がわからなくなるということに、僕は「アイデンティティ障害の兆候」を感じます。
コウモリが明るい場所を嫌い、暗い場所へと逃げ込むように、あらゆる生命は、「好き嫌い」を軸に行動し、その命をつないでいます。つまり、「好き嫌いがわからなくなる」というのは、生命としてのアイデンティティが壊れつつあるといってもいいぐらい、危機的な兆候だということです。
アイデンティティ障害に陥っている人間は「やってもいいこと」だけをやり、「やらなくてもいいこと」や「推奨されないこと」には手を出しません。社会もひとつの「生命」です。もし、社会そのものがある種のアイデンティティ障害に陥っているとすれば、その結果として、個々の組織や人々からも創造性が失われることになります。
「言われたことはやるけれど、自分から新しいことに取り組むことを嫌う」新入社員が毎年のように現れるのは、社会全体がアイデンティティ障害に陥っていることの「結果」に過ぎないのかもしれません。
子育てや教育はもちろんのこと、それこそ社会人となった後の新入社員教育の場面においてすら、僕らは「言われたことを素直にやる」ということを手放しに評価しがちです。でも、「これをやりなさい」と言われたことをそのまま素直にやる、ということは「病み」の兆候といっても過言ではないと僕は捉えています。
なぜなら、「言われたことを素直にやる」というのは、別にそれを「やりたい」からではないからです。他人から言われた事を素直にやるのは、「やりたくないこと」が明確でないことの結果に過ぎません。人間というのは、元気であればあるほど人から言われたことに反発するし、病気になって元気をなくすと、人から言われたことに素直に従う。そういう生き物です。
その他の記事
迷路で迷っている者同士のQ&A(やまもといちろう) | |
海外旅行をしなくてもかかる厄介な「社会的時差ぼけ」の話(高城剛) | |
「iPhoneの発売日に行列ができました」がトップニュースになる理由(西田宗千佳) | |
年末年始、若い人の年上への関わり方の変化で興味深いこと(やまもといちろう) | |
『外資系金融の終わり』著者インタビュー(藤沢数希) | |
急成長する米国大麻ビジネスをロスアンゼルスで実感する(高城剛) | |
人間の場合、集合知はかえって馬鹿になるのかもしれない(名越康文) | |
毎朝、名言にふれる習慣を作ることで新たな自分が目覚める! 『日めくり ニーチェ』(夜間飛行編集部) | |
違憲PTAは変えられるか(小寺信良) | |
今年の冬は丹田トレーニングを取り入れました(高城剛) | |
継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること(名越康文) | |
乙武洋匡さんの問題が投げかけたもの(やまもといちろう) | |
明石市長・泉房穂さんが燃えた件で(やまもといちろう) | |
「けものフレンズ」を見てみたら/アマゾン・イキトスで出会った動物たち(川端裕人) | |
古い日本を感じる夏のホーリーウィークを満喫する(高城剛) |