『静かなる革命のためのブループリント』発売記念インタビュー

宇野常寛が考える”社会と個人”を繋ぐ新しい回路とは

――インフラやウェブサービスの事業者たちが見据えているような大きな時代の変化に、宇野さんの抱えていた問題意識がシンクロしていたということかなと思いました。

 

宇野 結果的に、僕自身も予想していなかった需要があったのだから、そうかもしれないね。 こういう問題意識のあり方は、そもそも僕の批評のモチーフと強く関わっているんだよ。例えば、僕は特撮が好きなのだけど、あれは「現実には存在しないキャラクターを一度造形物に落とし込んで半現実化したものを映す」という形でしか成立しない映像表現なんだよね。

一方で僕は、「現実そのものを映したもの」にも、「現実とは完全に断絶した虚構を映したもの」にも興味が持てない。本当に興味があるのは、特撮のように「まだ存在していないけど、これから存在する可能性があるもの」なの。それは個人的な趣味嗜好にも反映していて、だから特撮以外でも、絵画よりも立体造形物の方が好きで、模型も大好き。

このあいだ反響があったレゴ対談も、こうした興味の延長線上で作られている。

▼関連記事 【対談】根津孝太(znug design)×宇野常寛「レゴとは、現実よりもリアルなブロックである」

 

僕自身は、こういう感性というのは、現実に商品やサービスを制作して、それによって新しい文化やビジネスを生み出していくような動きにどこか親和性がある気がするんだよね。実際、イノベーションやマーケットの力というのは、まさに「まだ存在していないけど、これから存在する可能性があるもの」に力を与えていくものなわけでしょう。

1 2 3 4 5

その他の記事

「外組」と「内組」に二極化する時代(高城剛)
なぜ作家に「酒好き」が多いのか(ロバート・ハリス)
気候変動や環境毒のあり方を通じて考えるフェイクの見極め方(高城剛)
NAB2017でわかったHDRのインパクト(小寺信良)
「道具としての友人」にこそ、友情は生まれる(名越康文)
世界のクリエイターに愛されるノートの物語(ロバート・ハリス)
大国の世相変化に翻弄される香港の今(高城剛)
思考実験のための『もし、トランプさんが米大統領になったら』(やまもといちろう)
祝復活! 『ハイスコアガール』訴訟和解の一報を受けて(編集のトリーさん)
会社を立ち上げました–家入流「由来を語れる」ネーミングについて(家入一真)
『仏像 心とかたち』望月信成著(森田真生)
「定額制コンテンツサービス」での収益還元はどうなっているのか(西田宗千佳)
コロナワクチン関連報道に見る、日本のテレビマスコミの罪深さ(やまもといちろう)
一から作り直した「非バッファロー的なもの」–『新おもいでばこ』の秘密(小寺信良)
幻の絶滅鳥類ドードーが「17世紀の日本に来ていた」という説は本当なのか(川端裕人)

ページのトップへ