『静かなる革命のためのブループリント』発売記念インタビュー

宇野常寛が考える”社会と個人”を繋ぐ新しい回路とは

――インフラやウェブサービスの事業者たちが見据えているような大きな時代の変化に、宇野さんの抱えていた問題意識がシンクロしていたということかなと思いました。

 

宇野 結果的に、僕自身も予想していなかった需要があったのだから、そうかもしれないね。 こういう問題意識のあり方は、そもそも僕の批評のモチーフと強く関わっているんだよ。例えば、僕は特撮が好きなのだけど、あれは「現実には存在しないキャラクターを一度造形物に落とし込んで半現実化したものを映す」という形でしか成立しない映像表現なんだよね。

一方で僕は、「現実そのものを映したもの」にも、「現実とは完全に断絶した虚構を映したもの」にも興味が持てない。本当に興味があるのは、特撮のように「まだ存在していないけど、これから存在する可能性があるもの」なの。それは個人的な趣味嗜好にも反映していて、だから特撮以外でも、絵画よりも立体造形物の方が好きで、模型も大好き。

このあいだ反響があったレゴ対談も、こうした興味の延長線上で作られている。

▼関連記事 【対談】根津孝太(znug design)×宇野常寛「レゴとは、現実よりもリアルなブロックである」

 

僕自身は、こういう感性というのは、現実に商品やサービスを制作して、それによって新しい文化やビジネスを生み出していくような動きにどこか親和性がある気がするんだよね。実際、イノベーションやマーケットの力というのは、まさに「まだ存在していないけど、これから存在する可能性があるもの」に力を与えていくものなわけでしょう。

1 2 3 4 5

その他の記事

冠婚葬祭に思うこと(やまもといちろう)
食品添加物を怖がる前に考えておきたいこと(若林理砂)
「Surface Go」を自腹で買ってみた(西田宗千佳)
ネットも電気もない東アフリカのマダガスカルで享受する「圏外力」の楽しみ(高城剛)
【ダイジェスト動画】名越式仏教心理学を語る(名越康文)
アーミテージ報告書を読み解く――日本は二等国でいいの?(やまもといちろう)
Tカードは個人情報保護法違反に該当するのか?(津田大介)
身体に響く音の道――音の先、音の跡(平尾文)
今世界でもっとも未来に近い街、雄安(高城剛)
武器やペンよりもずっと危険な「私の心」(名越康文)
『好きを仕事にした』人の末路がなかなかしんどい(やまもといちろう)
あれ、夏風邪かも? と思ったら読む話(若林理砂)
デトックス視点から魚が現代人の食生活に適しているかどうかを考える(高城剛)
五月病の正体 「どうせ……」というくせものキーワード(名越康文)
音楽生成AI関連訴訟、Napster訴訟以上の規模と影響になりそう(やまもといちろう)

ページのトップへ