宇都宮徹壱
@tete_room

ワールドカップの裏の裏

「報道されない」開催国ブラジルの現在

国民に恩恵をもたらさないワールドカップ

 

――さて、ホスト国ブラジルの準備に関して、先ほどスタジアムについてお聞きしましたが、その他のインフラについてはいかがでしょうか?

大野 うーん、そもそもホスト国としての自覚があんまりないような気がする(笑)。迎え入れる準備ができていない。空港の整備もそうだし、ホテルにしてもベロオリゾンテあたりまでいくとかなり怪しいでしょ? 新幹線を作るなんて話も、いつの間にか忘れ去られているし。

――そんな話、あったんですか?

大野 ありましたよ! 日本だって入札に何回も来ていましたよ。総理を辞めたばかりの小泉(純一郎)さんがブラジルまで来て営業活動していたし。でも、毎回入札がずれるんです。5年とか6年ぐらい。今もやっているんですけど、まだ終わってない(笑)。

――いかにもブラジルらしい話ですね。空港もいろいろ問題ありですか?

大野 いつの話か知りませんが、サンパウロの空港が新しい滑走路を作ることになっていて、広い土地があったんですけど、ぼやぼやしていたら不法侵入の住人がいっぱい家勝手に作っちゃって、もう広げられなくなっちゃったっていう(笑)。

こっちでは、いったん人が住むと住居権が発生して追い出せなくなるんです。だからもう広げられない。そういう話がサンパウロだけでなく、あちこちにあるんです。こっちの空港は、いちおう新ターミナルを建設中なんですけど、やっぱりギリギリですね。

――これだけ切羽詰まった状況なのに、なかなかインフラ整備が進まないのって、もちろん国民性もあるのかもしれませんが、そもそも今回のワールドカップ開催が競争なしで決まったというのも、背景としてあるじゃないですかね。つまり国民的な宿願でもって、開催が決まったわけではないという

大野 ほんと、気がついたら決まっていた、みたいな感じでしたよね(笑)。だから普通のブラジル人にとって、ワールドカップって「あまり関係ない」っていうのが正直なところ。サンパウロ市民だったら、交通渋滞はひどくなるばかりで、それでも(開催によって)都市高速ができるわけでもなく、地下鉄が拡張されるわけでもない。一般的な市民にとって、なんにも恩恵がないんですよね。

――ワールドカップの2年後(2016年)にはリオで夏季五輪が開催されますが、そっちについてはどうでしょう?

大野 サンパウロは余り関係ないので、やっぱり知らないうちに決まっていたって感じですよ(笑)。むしろ物価が高くなって、また税金が上がるんじゃないかって不安のほうが大きい。この国って、ものすごく税金が高いんです。収入の4割を税金で持っていかれる。水を飲んでも4割は税金なんです(編注:ミネラルウォーターのこと。水道水は飲めない)。

――4割は確かに高いですね。その分、公共サービスが充実しているんでしょうか?

大野 それがそうじゃないんですよ(苦笑)。普通だったら、4割引かれることによって、福祉、医療、教育、安全、そういうのにリターンされるじゃないですか。でもこの国では、残りの6割から、さらに自分で支払わないといけないわけですよ。つまり二重取りされているわけですよね。そりゃ、怒ってデモをしたくもなりますよ。

――確かに(苦笑)

大野 物価だって、ものすごく高いですよ。日本で大衆車と言われる車が、ここじゃ高級車ですからね。100万円ぐらいのものが、こっちに来ると税金が高いので300万円くらいになる。ちょうど昨日、雑誌で読んだんですが、プレイステーションっていうゲームも、こっちだと4倍くらいするんですって。だからみんな、アメリカまでわざわざ買いに行くそうですよ。

――アメリカのほうが安いんですか?

大野 間違いなく安い! 私も今年の夏にロスに行ったけれど、本当に何もかもが安くって(笑)。ブラジル人は今、海外に行きまくりですよ。赤ちゃんが生まれるとなったら、大きなお腹をしたお母さんたちが、わざわざ赤ちゃん用品を一揃え買いに行くんです。それくらいブラジルよりも安いから。

――物価高に関しては、現地で取材する立場としては、非常に気になるところですね。

 

<このあともメディアに出ないブラジルの話が続きます! 続きはメールマガジン「徹マガ」バックナンバーでお読みください>

「徹マガ」のご案内

26

日本代表からJFL、地域リーグ、さらにはアジアやヨーロッパの辺境まで、そのジャンルは縦横無尽。平均15枚以上の美しい撮りおろし写真と、平均10,000字以上のビビッドな文体を駆使し、フットボールをめぐる新鮮な驚きと愉しみを毎号お届けします!月4回発行。

【 料金(税込) 】 756円 / 月 <初回購読時、1ヶ月間無料!!>

【 発行周期 】 月4回配信(不定期)

詳細・ご購読はこちらから!
http://yakan-hiko.com/utsunomiya.html

 

1 2 3
宇都宮徹壱
1966年3月1日生まれ。東京出身。 東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)、『松本山雅劇場』(カンゼン社)など著書多数。『フットボールの犬欧羅巴1999-2009』(東邦出版)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。2010年より有料メールマガジン『徹マガ』を配信中。

その他の記事

アマゾンマナティを追いかけて〜赤ちゃんマナティに授乳する(川端裕人)
ネットは「才能のない人」でも輝けるツールではありません!(宇野常寛)
『赤毛のアン』原書から、アイスクリームの話(茂木健一郎)
ゲームにのめりこむ孫が心配です(家入一真)
「負けを誰かに押し付ける」地方から見た日本社会撤退戦(やまもといちろう)
人は何をもってその商品を選ぶのか(小寺信良)
違憲PTAは変えられるか(小寺信良)
国家に頼らない「あたらしい自由」を目指すアメリカ(高城剛)
ネットとは「ジェットコースター」のようなものである(小寺信良)
【第4話】キャンプイン――静かな戦いの始まり(城繁幸)
歩き方の上手い下手が人生を変える(岩崎夏海)
気候変動や環境毒のあり方を通じて考えるフェイクの見極め方(高城剛)
「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか(津田大介)
成宮寛貴友人A氏のブログの話(やまもといちろう)
旅行需要急増でのんびり楽しめる時間が残り少なくなりつつある南の島々(高城剛)
宇都宮徹壱のメールマガジン
「徹マガ」

[料金(税込)] 756円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(不定期)

ページのトップへ