2014年7月1日、集団的自衛権を容認する閣議決定が行われました。中国・北朝鮮・韓国といった国々との緊張関係の中で一定の支持を表明する識者もいる一方で、官邸前では大規模なデモが行われるなど、さまざまな立場・見解のあるこの問題を考えるヒントになる本を11冊、ピックアップしてみました。
もちろん、集団的自衛権や解釈改憲の問題そのものには、新聞雑誌などで最新の状況を踏まえた解説がなされるでしょう。しかしこれらの本は、そうした「今ここ」の問題に、まったく別の角度から光をあててくれるのではないかと思います。
国が戦争を起こすとはどういうことか
日本人にとっての戦争といえばおよそ70年前に終わった太平洋戦争。ではそのとき日本はどのように戦争に突入したのでしょう? 「そんなの知ってるよ」と思われるでしょうか? でも、それをどう描くかについては、さまざまな立場がありえます。
猪瀬 直樹 元東京都知事・猪瀬直樹さんのジャーナリストとしての代表作の一つ。昭和15年、内閣総理大臣直轄の「総力戦研究所」が設置されました。そこでは日米戦争の詳細なシミュレーションが行われていたのです。そのシミュレーションの結果とはなんと・・・・・・。
加藤 陽子
歴史の本でありながら、戦略論の本でもある本書は、先の大戦に関心がある人はもちろんですが、国家戦略、あるいはビジネス戦略に関心のある人にもお勧めです。
半藤 一利
「いちばん長い日」とは、昭和20年8月15日のこと。すなわち日本の敗戦の日です。昭和天皇のポツダム宣言受諾を受け、日本政府にとってはじめての「敗戦処理」がどう進められたのかを、鈴木貫太郎内閣の動きを軸に克明に記録しています。
そもそも日米関係って何なのか
集団的自衛権が容認されると、自衛隊が海外に派遣されてしまい、戦争に巻き込まれる。そういう懸念を示す人はたくさんいます。でもその一方で、アメリカとの同盟関係を強化していなければ、中国や北朝鮮といった周囲の国々からの攻撃を許してしまうではないか、という人もいます。 日米関係を基軸とした戦後日本の外交を考えるための2冊といえばこちら。
孫崎 享
『戦後史の正体』は大ベストセラーですのでご存知の方も多いはず。「戦後日本の外交戦略の背景にはずっとアメリカの思惑があった」という主張には、陰謀論という批判もありましたが、日米関係の成り立ちをもう一度冷静に捉え直してみたい人は、こちらも大ヒットした気鋭の若手論客・白井聡さんの『永続敗戦論』との併読もお勧めです。
白井 聡
「中国の脅威」は本当か?
今回の集団的自衛権で想定される危険には、軍備の増強著しい中国の存在が強く意識されているとも言われています。では中国は本当はどれくらい「危険」な国なのでしょう? それを考えるための3冊。
池上彰
わからないことは池上さんに聞きましょう!(笑) とにかく広大で、日本とは何もかもスケールも歴史も違う中国をどう捉えるか、その基本がわかります。
内田樹
内田樹さんによる、中国の専門家は絶対に取り上げない視点から、中国なる国家の本質に迫る、「予備知識」なしで読める中国論。著者の内田先生自身が「久しぶりにおもしろいものを読んだ」と絶賛(笑)。
中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫)
與那覇 潤
歴史学のホープ、與那覇潤さんの大ヒット作。厳密には中国論ではなく、日中関係史、もしくは東アジア史を描いたものですが、長い時間軸と広い地域を俯瞰的に観ることによって、中国の「今」、そして日本の「今」を立体的に描き出します。
どうやったら「政治」は変わるのか
選挙で選ばれた安倍政権がやることに今更反対するのに意味はない、という人がいます。一方で、デモこそが、市民が政治に意見するための唯一の道なのだ、という人もいます。
しかし、政治を変える方法は選挙だけなのでしょうか? そもそも、今回の閣議決定よりも、その後の法整備のほうが日本の未来の舵取りにおいては重要だと指摘する識者も多くいます。解釈改憲に賛成の人にも、反対の人にも、これからの政治のあり方を考える3冊をご紹介。
津田大介
東日本大震災後のtwitterでの情報拡散、アラブの春など、SNSが政治・行政に影響を与える場面は増えて来ています。ウェブで政治を動かすにはどうしたらいいのかを考えたい人、必読の一冊。
東 浩紀
思想家、東浩紀さんが渾身の力を込めて送る、未来を開く政治思想論。ルソーが提唱した「一般意志」が、googleに代表されるようなIT技術の進歩によって実装可能になりつつある。その具体的な可能性としての「一般意志2.0」を提案します。
来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題
國分功一郎
気づいたら決まっていた道路計画。立ち退きを迫られたら市民には断る権利もない。現在の政治システムの問題は、立法府に送る議員を選挙で選ぶことはできても、最終的に政策を実行する行政に、市民が関与できないことにある。気鋭の哲学者が、実際の道路計画への反対運動を通じて見えた問題を語ります!
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