『もののあはれ』の実装は可能か――「necomimi」作者・加賀谷友典が師・江藤淳から継承した思想
1972年生まれ、慶應義塾大学総合政策学部卒業。フリーのプランナーとしてデジタル・ネットワーク領域で多数のプロジェクト立ち上げに参加。新規事業開発における調査、コンセプトの立案、チームマネジメントが専門。主な事例としては坂本龍一インスタレーション作品「windVibe」「Phonebook」「iButterfly」(電通)、「GEOCOSMOS」(日本科学未来館)、読売新聞yorimoプロジェクト、脳波で動くネコミミ”necomimi”など。
necomimiの作者は何をつくろうとしているのか
宇野 僕は加賀谷さんを人に紹介しようと思う時に、いつもどう紹介したらいいか悩んでしまうんですよ。加賀谷さんのような立場でものづくりに関わっている人って、僕の知る限りほとんどいない。効率化と最適化を行うコンサルティングだけでもないし、単に表層的なアイディアを出すのでもない。何か思想を含めた、トータルなビジョンを提案しているように感じるんです。
加賀谷 そうですね。僕のやっていることは説明が難しいんです。最近自分のことを「新規事業開発専門のプランナー」と言えばなんとなく耳慣れていて納得してもらいやすい、ということを覚えたんですが……(笑)。もっと本質的なことですよね。
僕は情報ジャンキーなんで、純粋に知りたい欲求で動いているんです。だからたまたま物事がメジャーになる手前でキャッチすることが多くて、それをプロジェクトにしていく感じです。例えばphonebookはまだガラケー全盛のスマホ黎明期に、タッチパネルを使って絵本を作ったプロジェクトでした。
▲phonebook
その後はiButterflyという、ARとGPSを組み合わせて、ある場所にしかいない蝶を捕まえてクーポンをゲットするアプリケーションを作りました。
それでスマホはだいたいやったな、と思ってシリコンバレーに遊びに行ったら、脳波テクノロジー・ベンチャーのニューロスカイ社と仲良くなり、それでnecomimiに繋がっていったわけなんです。
▲necomimi
宇野 加賀谷さんのプロジェクトって、言ってしまえば全てコミュニケーションなんです。でもその捉え方が普通と少し違っているのが興味深い。
そもそも情報機器によるコミュニケーションって、文字とハイパーリンクによって人間の内面を陶冶していくような話が多いじゃないですか。しかも、現在のネット空間を見ていると、その可能性を語るのはかなり厳しくなっている。ところが、加賀谷さんのプロジェクトはそんなふうに人間を文字で内面から陶冶する可能性なんて一度も検討したことがないような気さえする(笑)。
加賀谷 まさに、そういうところからは距離をおいてますね……。だって、動物の生態系なんて、非言語的ではあっても、情報のやりとりはなされているわけでしょう。別に言語に拘る必要はないじゃないですか。
その他の記事
![]() |
ロシア人が教えてくれた人生を楽しむための世界一具体的な方法――『人生は楽しいかい?』(夜間飛行編集部) |
![]() |
オーバーツーリズムに疲弊する観光都市の行方(高城剛) |
![]() |
ゲンロンサマリーズ『海賊のジレンマ』マット・メイソン著(東浩紀) |
![]() |
「価値とは何かを知る」–村上隆さんの個展を見ることの価値(岩崎夏海) |
![]() |
日本人に理想的な短期間ダイエット「七号食」(高城剛) |
![]() |
僕たちは「問題」によって生かされる<後編>(小山龍介) |
![]() |
19人殺人の「確信犯」と「思想の構造」(やまもといちろう) |
![]() |
古代から続くと言われるハロウィンの起源から人類の行く末を考える(高城剛) |
![]() |
PS5の「コストのかけどころ」から見える、この先10年の技術トレンド(本田雅一) |
![]() |
「日本の電子書籍は遅れている」は本当か(西田宗千佳) |
![]() |
週刊金融日記 第280号 <Instagramで女子と自然とつながる方法 〜旅行編、米朝核戦争に備えビットコインを保有するべきか他>(藤沢数希) |
![]() |
就活解禁になっても何やっていいのかわからない時に読む話(城繁幸) |
![]() |
気候変動や環境毒のあり方を通じて考えるフェイクの見極め方(高城剛) |
![]() |
被差別属性としての「キモくて金のないおっさん」とは何か(やまもといちろう) |
![]() |
バーゲンプライスが正価に戻りその真価が問われる沖縄(高城剛) |