岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その15)

「正しく怒る」にはどうしたらいいか

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

岩崎夏海の競争考(その15)怒り方

 

「怒り」を前向きに捉える

勝つために必要な感性は、喜怒哀楽を取り戻すことによって育まれる。中でも「怒り」を取り戻すことが重要だ。感性が鈍っている人は、たいてい怒れなくなっているからだ。

手塚治虫のマンガ『火の鳥 鳳凰編』の中で、それまで悪行の限りを尽くしていた我王が、芸術に目覚める場面がある。そこで、我王は「怒り」を感じるのである。それは、これまで悪行の限りを尽くしていたときにはなかった感情だった。悪行の限りを尽くしているときは、むしろ自分の怒りを封印して、どこまでも感性を鈍らせていた。しかし怒りが復活したとき、ようやく生産的な考えができるようになったのだ。

これは、普通に考えられていることとは逆である。普通は、怒りが悪行につながり、冷静さは生産性へとつながると考えられている。しかし実際は逆なのだ。怒りこそ、生産への最も重要なエネルギーとなるし、冷静さは、非生産性、あるいは悪行につながりやすい感情なのである。事実、極悪非道な行いをする人は、たいてい冷静である。冷静というより、感情を鈍らせて、ほとんど何も感じない中でそれを行っているのだ。

だから、人は自らの怒りというものをもっと前向きに受け入れる必要がある。怒った自分を反省するのではなく、むしろ許してやる必要があるのだ。反対に、もし怒れなかったらそれを反省するべきなのである。

 

どうすれば怒れるのか

では、「怒り」の感情はどうすれば湧きあがってくるのか? これは、実は簡単なようで難しい。人は、なかなか怒れるものではないのである。

なぜかというと、「自信」がないからだ。「怒る」というのは、何かに「憤る」ということでもある。「憤る」というのは、何か正しく行われるべきものが正しく行われなかったときに覚える感情だ。このとき、多くの人は、自分の「正しさ」に自信がないのである。だから、何か正しくない行いに接した際にも、自分の正しさに自信を持てず、素直に怒ることができない。

例えば、遅刻をした人がいたとする。そのとき、怒れない人はこう考える。

「自分もよく遅刻をするし、相手のことを責められない」

このように、自信がない状態だと、正しい怒りの感情を湧きあがらせることができない。

だから、怒るためには普段から自分を律する必要がある。善悪の規範をしっかりと持ち、そこから逸脱しないよう心がけるのだ。上記の例でいえば、絶対に遅刻をしないようにするのである。そうすれば、遅刻という行為に対し、素直に怒りを持てるようになるのだ。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

古市憲寿さんの「牛丼福祉論」は意外に深いテーマではないか(やまもといちろう)
仮想通貨周りやオンラインサロンが酷いことになっている現状について(やまもといちろう)
なくさないとわからないことがある(天野ひろゆき)
川端裕人×松本朱実さん 「動物園教育」をめぐる対談 第2回(川端裕人)
週刊金融日記 第267号<クラミジア・パズルとビジネスでの統計の使い方他>(藤沢数希)
「狭霧の彼方に」特別編 その2(甲野善紀)
「どこでもできる仕事」と「そこじゃなきゃできない仕事」(高城剛)
技術はなんのために使うべきなのか(西田宗千佳)
ついにアメリカがペンス副大統領の大演説で対中対立の道筋がついてしまう(やまもといちろう)
「ゴールデンウィーク」という呼び名の由来から考えるメディアの寿命(高城剛)
空港を見ればわかるその国の正体(高城剛)
「アジカン」ゴッチと一緒に考える、3.11後の日本(津田大介)
Spotifyでジョギングするとめっちゃ捗る件(小寺信良)
外資系企業の「やり得」を止められるルール作りこそがAI規制の本丸(やまもといちろう)
喜怒哀楽を取り戻す意味(岩崎夏海)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ