人間にとって、いったい何が真実なのか
また、このオーストラリアでの例とは別に、人々の行動や行為が宗教的なものと直接結びついた事で、その地域の人々全体の不幸をもたらした例として、イースター島の事も思い浮かびます。
巨大な石像が草原に立ち並ぶイースター島は、かつては謎とロマンに満ちた場所でしたが、その後さまざまな調査によって、この島には豊かな森林があり、人々も多く暮らしていたようですが、巨大なモアイ像を造るために森林を伐採し、不毛な島となってしまったらしいという事が明らかになってきました。
石像造りはアボリジニに対する差別政策よりも、ずっと純粋な情熱と信仰で行なわれたであろう事は十分に想像されます。しかし、それによって島の自然環境は衰え、人々の生活が立ち行かなくなってしまったのです。(これ以外にも理由はあったかもしれませんが、モアイ像の建設が大きな原因であった事は確かなようです)
このようにあらためて歴史を振り返ってみると、これが善だと信じて行なった事が、災厄を招くことになっていた事が少なからずあったのではないかと思い至り、実になんとも言い難い思いにかられました。古くから伝承されてきた事というのは、それなりに意味があると思われていますが、必ずしもそうではないという事も、いくつもあります。
例えば、怪我をした時、その傷口を殺菌消毒する薬を使って乾燥状態を保つ事は、洋の東西を問わず広く行なわれてきました。しかし近年、そうした殺菌消毒のための薬剤を使わず、かつ傷口を乾燥させないで湿潤状態を保った方が、早く綺麗に治ることが広く知れ渡ってきて、一般の病院でも行なわれるようになってきました。もっとも、まだ頑なに消毒を行なっているところもあるようですが、かなりの病院現場で薬剤を使わず湿潤状態を保つようにすることで、傷を早く治すようになっています。
怪我への対応という必然性の高い事であっても、統一見解が無い。そして、まったく違った対応を行なっても、それなりに傷口がふさがり、修復されるという事は、「人間にとって、いったい何が真実なのか」という事を探究しようとする時、大変考えさせられる事ではないかと思います。

その他の記事
![]() |
21世紀、都市の未来は「空港力」にかかっている(高城剛) |
![]() |
僕がネットに興味を持てなくなった理由(宇野常寛) |
![]() |
AIの呪縛から解き放たれ、なにかに偶然出会う可能性を求めて(高城剛) |
![]() |
圧力というものに関して(やまもといちろう) |
![]() |
名越先生、ゲームをやりすぎると心に悪影響はありますか?(名越康文) |
![]() |
「ノマド」ってなんであんなに叩かれてんの?(小寺信良) |
![]() |
「時間」や「死」が平等でなくなる時代到来の予感(高城剛) |
![]() |
「脳内の呪い」を断ち切るには(西條剛央) |
![]() |
週刊金融日記 第284号<ビットコインのおかげで生きたトレーディングの教科書ができました、安倍首相衆院解散か他>(藤沢数希) |
![]() |
ボブ・ディランとぼく(ロバート・ハリス) |
![]() |
AIやロボットによってもたらされる不確実性時代の雲行き(高城剛) |
![]() |
「都知事選圧勝」小池百合子は日本初の女性首相の夢を見るか?(やまもといちろう) |
![]() |
今世界でもっとも未来に近い街、雄安(高城剛) |
![]() |
失敗した「コンパクトシティ」富山の現実(高城剛) |
![]() |
iPad Proは何をどうしようとしているのか(小寺信良) |