岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その16)

正しい正しさの持ち方

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

岩崎夏海の競争考(その16)正しい正しさの持ち方

 

「正しい正しさ」と「誤った正しさ」

自然と怒れるようになるためには、「正しさ」という価値観が必要だ。ただし、「正しさ」には「正しい正しさ」と「誤った正しさ」があり、「誤った正しさ」を持ってしまうと、道を大きく踏み外すきっかけになる。例えばヒトラーなどは、「ユダヤ人は悪である」という「誤った正しさ」を持ち、それを基盤にした怒りを暴走させ、この世に大変な厄災をもたらした。「誤った正しさ」には、そういう重大な危険性が宿っているのである。

「誤った正しさ」があまりにも危険なために、第二次大戦後しばらく(なんとおよそ50年!)は、「正しさ」という概念そのものが否定されていた。「この世に正しいも正しくないもない。価値観は人それぞれ」という相対的なものの見方が流行したのだ。

これは、「誤った正しさ」が暴走すると危険性が高いので、それならいっそ「正しい正しさ」も含め、「正しさ」という価値観そのものを捨ててしまおう――という考え方だ。そうすれば、とりあえず「誤った正しさ」が暴走して世の中に厄災を招く危険性は減る。

しかしながら、これには「正しい正しさ」までをも葬り去ってしまうという副作用があり、そこでは「ものごとの本質に肉薄できない」という弊害が生まれた。この「競争考」では、21世紀に現出した世知辛い競争社会でいかに生き残っていくかということについて論じており、それには競争に勝つことが不可欠なのだけれども、厳しい競争に勝つためには、どうしても本質に肉薄する必要が出てくる。だから、「正しさ」という概念も今一度、取り戻す必要性が出てくるのだ。

ただし、くり返しになるが「誤った正しさ」を持ってしまうと本当に危険なので、ここでは、それを回避しつつ、「正しい正しさ」を持つ――ということの道筋について考えていきたい。これだと、もちろんその危険性を完全にぬぐえるわけでないが、かなりの確立で避けることができるのである。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

見た目はエントリープラグ? 驚異の立ち乗りロケット「ティコ・ブラーエ」を見てきました(川端裕人)
コデラ的出国前の儀式(小寺信良)
トヨタが掲げるEV車と「それは本当に環境にやさしいのか」問題(やまもといちろう)
「プログラマー的思考回路」が人生を変える(家入一真)
3月移動に地獄を見た話(小寺信良)
職業、占い師?(鏡リュウジ)
変化のベクトル、未来のコンパス~MIT石井裕教授インタビュー 後編(小山龍介)
人はなぜ初日の出に惹かれるのか–数万年の心の旅路(鏡リュウジ)
NYの博物館で出会った「カミカゼ・エクスペリエンス」(川端裕人)
週刊金融日記 第307号【確定申告の季節ですがこれから事業をはじめる人にアドバイス、出口戦略言及で日本円が大躍進他】(藤沢数希)
ようやく到着 ポータブル原稿書きマシン「Gemini」(小寺信良)
世界旅行の際にちょっと得する航空券の買い方(高城剛)
マイナス50キロを実現するためのホップ・ステップ・ジャンプ(本田雅一)
言葉で言い表せない不思議ななにかが起きるとき(高城剛)
廃墟を活かしたベツレヘムが教えてくれる地方創生のセンス(高城剛)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ