※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.027(2018年8月24日)からの抜粋です。
テクノロジーが大きくものごとを変えていく。これまでも多くの場面で感じてきたことですが、ここ数年は“当たり前のこと”としてあまり大きな驚きを感じなくなっていました。少々、感覚的に麻痺していたのかもしれません。そんな中でも、これはおもしろいと思った事例について話を聞くことがありました。
それは“卓球”のプロリーグに関する話です。日本でもTリーグという卓球のプロリーグが開かれているようですが、僕が話を聞いたのは「T2アジア太平洋卓球リーグ(T2APAC)」についてです。
世界の各国から24名の男女トップ選手が集まり、4チームに分かれて約半年間で全228試合を行い、勝敗やランキングに応じて賞金150万ドルが分配されるというものです。賞金総額は、例えばコンピューターゲームを用いた「eSports」などと比べて大きなものではないのですが(eSportsは1日開催のイベントでも優勝賞金だけで1億円を超える大会がザラにあります)、卓球というこれまで大きなお金が動いてこなかったスポーツジャンルの大会としては異例の規模と言えるでしょう。
このリーグ、実はマレーシアの映画スタジオで開催されています。スタジオ内には卓球台を囲む観客席の他、トレーニングや練習用の卓球台なども配置され、リアリティショーさながらに、試合以外の練習風景なども中継され、盛り上げるための演出も施されます。
卓球という競技は、スピーディーで駆け引きの要素もあり、また精神面での揺れが試合の流れを大きく変えます。実際に観戦してみると、テニスよりも決着がつくまでの時間が短く、展開もどんどん進んでいき、息をつく暇もありません。僕はテニスをプレーしていたこともあってテニス観戦が好きなほうですが、エンターテインメントとしては卓球のほうがおもしろいかも……と思うほどです。
ところが、プロエンターテインメントとして卓球を成立させるには、大きなハードルがありました。卓球台が小さく、ボールも小さく、しかもボールの速度が速いため、大きな会場で多くの観客を集めてプロの試合を見せるには無理があることです。T2APACはネット中継を前提としたビジネスモデルとすることで、新しいスポーツビジネスの枠組みを作ろうとしているようです。今回はT2APACを起点にしながら、テクノロジーによる社会の変化が、身近なジャンルの事業モデルを変化させていることを見ていきたいと思います。
(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)
本田雅一メールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」
2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。
ご購読はこちら。
その他の記事
俺たちにとって重要なニュースって、なんなんでしょうね(紀里谷和明) | |
“YouTuberの質”問題は、新しいようでいて古い課題(本田雅一) | |
iPhone 12は5Gインフラの整備を加速させるか(本田雅一) | |
コデラ的出国前の儀式(小寺信良) | |
迷走ソフトバンクのあれやこれやが面倒なことに(やまもといちろう) | |
チェルノブイリからフクシマへ――東浩紀が語る「福島第一原発観光地化計画」の意義(津田大介) | |
世の中は感情とシステムで動いている(本田雅一) | |
ゲームと物語のスイッチ(宇野常寛) | |
暗い気分で下す決断は百パーセント間違っている(名越康文) | |
完全な自由競争はファンタジーである(茂木健一郎) | |
空想特撮ピンク映画『ピンク・ゾーン2 淫乱と円盤』 南梨央奈×佐倉絆×瀬戸すみれ×国沢実(監督)座談会(切通理作) | |
サイボウズ青野社長の手がける「夫婦別姓裁判」高裁門前払いの必然(やまもといちろう) | |
狂気と愛に包まれた映画『華魂 幻影』佐藤寿保監督インタビュー(切通理作) | |
個人の情報発信で考えていること(やまもといちろう) | |
リモートワーク時代のエンタメを考える(本田雅一) |