※名越康文メルマガ「生きるための対話」Vol.087(2014年11月3日号)より
文部科学省での大学改革に関する審議が話題となっています。
参考:旧帝大と慶応以外は「職業訓練校化」すべき? 文科省の「有識者資料」に議論白熱
https://news.careerconnection.jp/?p=3352
これを受けて、大学が本当の意味で「知」を学ぶ場ではなく、職業訓練校になろうとしている、ということがほうぼうで指摘されており、もちろん僕もそのことに危機感を覚えてはいます。
ただ、残念ながら大きな流れとして、大学教育が専門学校化していく流れというのは避けられないでしょう。そうなると問題なのは、ぼくらの知的好奇心の行方です。大学が専門学校化したからといって、僕らの知的好奇心がなくなるわけではありません。特に、日本人はある種の元型的気質として、知的好奇心の高い民族だと僕は考えています。
では、もしも今後、大学が専門学校化していくのであれば、わたしたちの「知」の受け皿はどこに求められるのか。
シラバスを明示して、すでに定義づけられた言葉を、定義づけられた範囲だけで使う学びには、知的な欲求の満足という人間にとっての最も深い充足感をもたらす効果は、おそらく皆無でしょう。
そうしたある種「デジタル的な思考」は、定義を疑わないがゆえに切れ味は鋭いのですが、その源流にあるのは自己防衛の不安であり、この切れ過ぎる思考の剣を鞘に納める技術や自制心を養わない限り、人はどこかで自己矛盾を生じてしまわざるを得ません。
大学の専門学校化というのは、いわば知のデジタル化であり、透明化です。だとすれば、そこでは決して僕らの知的好奇心が満たされることはないでしょう。今後ますます大学が専門学校化していくのだとすれば、その受け皿はおそらく、大小さまざまな形の「私塾」に向かうのではないかというのが僕の考えなのです。
名越康文メルマガ「生きるための対話」Vol.087(2014年11月3日号)
目次
00【イントロダクション】知的好奇心の受け皿としての「私塾」
01【コラム】思考を深める「手書きノート」のススメ
02精神科医の備忘録 Key of Life
・ムーミンとハンニバルに追い立てられる日々
03【特別連載】どうせ死ぬのになぜ生きるのか
04カウンセリングルーム
[Q1]自分の進路にまじめに向き合おうとしない息子
[Q2]6種の美学について
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!
その他の記事
なぜ汚染水問題は深刻化したのか(津田大介) | |
「自由に生きる」ためのたったひとつの条件(岩崎夏海) | |
世の中は「陰謀論に流されない百田尚樹」を求めている(やまもといちろう) | |
中国からの観光客をひきつける那覇の「ユルさ」(高城剛) | |
山岡鉄舟との出会い(甲野善紀) | |
注目される医療サイケデリックの波(高城剛) | |
「英語フィーリング」を鍛えよう! 教養の体幹を鍛える英語トレーニング(茂木健一郎) | |
真の働き方改革、いや、生き方改革は、空間性と移動にこそ鍵がある(高城剛) | |
減る少年事件、減る凶悪事件が導く監視社会ってどうなんですかね(やまもといちろう) | |
「50GBプラン」にして、5G時代のことを考えてみた(西田宗千佳) | |
狂気と愛に包まれた映画『華魂 幻影』佐藤寿保監督インタビュー(切通理作) | |
『好きを仕事にした』人の末路がなかなかしんどい(やまもといちろう) | |
古い日本を感じる夏のホーリーウィークを満喫する(高城剛) | |
「道具としての友人」にこそ、友情は生まれる(名越康文) | |
メガブランドの盛衰からトレンドの流れを考える(高城剛) |