時間の貨幣化
人間が言語を獲得し、概念としての時間が生まれ、時間は節約の対象となりました。食料などの物理的な貯蓄だけでなく、人間は時間の貯蓄、いや時間の削除や節約も行うようになったということです。ここでは時間は貨幣と同じ存在であるかのように認識されています。
内田樹氏は『日本の文脈』のなかで、時間の貨幣化について以下のように述べられています。
「Time is money」という言葉がそもそもいけないと思う。時間をお金に換算できるという発想が間違っている。「Time is time」ですよ。時間は時間であって、それ以外のいかなるものにも置き換えられない。時間は計測できないし、数値化できない。僕たちは時計というものを持っているせいで、時間は計測可能だと信じているけれど、時間て、ほんとうは測れないんですよ。(『日本の文脈』)
言語によって、人間は時間をモノとして認識し、さらに貨幣と結びつけて思考するようになりました。くわえて時計などの計測器によって、時間は実際に計測の対象となりました。その結果として、時間の節約が行われるようになり、甲野先生が最近つとにご指摘されている「暇」や「退屈」といった問題が出てくるようになったのだと思います。
以前どこかで読んだのですが、福祉の分野では先進国と言われている北欧諸国では、自殺率が高いそうです。以前、この自殺率の高さの理由を松下幸之助が「ヒマになったからではないか」と書いていたのを目にした記憶があります。また、戦争中は自殺が減り、平和になると自殺率が上昇するという話もあります。もちろんさまざまな要因が重なっての現象なのでしょうが、暇になるということと自殺率の上昇とのあいだにも、何らかの関係性が存在している可能性はあると思います。
もし、平和になり、暇ができるほど人が自殺をするようになるのであれば、それはとてつもない「皮肉」ではないでしょうか。もちろん、だから戦争にも価値があるなどと言いたいわけではありません。ですが、効率を重視し時間を節約すればするほど、人は暇になり、生への意欲が減退していくという皮肉が生じうることもまた事実であり、我々はその点についても考えていかなければならないと思います。
田口慎也
※この記事は甲野善紀メールマガジン「風の先、風の跡――ある武術研究者の日々の気づき」 2012年04月16日 Vol.026 に掲載された記事を編集・再録したものです。
<甲野善紀氏の新作DVD『甲野善紀 技と術理2014 内観からの展開』好評発売中!>
一つの動きに、二つの自分がいる。
技のすべてに内観が伴って来た……!!
武術研究者・甲野善紀の
新たな技と術理の世界!!
武術研究家・甲野善紀の最新の技と術理を追う人気シリーズ「甲野善紀 技と術理」の最新DVD『甲野善紀技と術理2014――内観からの展開』好評発売中! テーマソングは須藤元気氏率いるWORLDORDER「PERMANENT REVOLUTION」!
甲野善紀氏のメールマガジン「風の先、風の跡~ある武術研究者の日々の気づき」
自分が体験しているかのような動画とともに、驚きの身体技法を甲野氏が解説。日記や質問コーナーも。
【 料金(税込) 】540円 / 月 <初回購読時、1ヶ月間無料!!> 【 発行周期 】 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
ご購読はこちら
その他の記事
|
『驚く力』から『ソロタイム』へ–『驚く力 矛盾に満ちた世界を生き抜くための心の技法』文庫版あとがき(名越康文) |
|
気候が不動産価格に反映される理由(高城剛) |
|
“YouTuberの質”問題は、新しいようでいて古い課題(本田雅一) |
|
まだ春には遠いニュージーランドでスマホ開発の終焉とドローンのこれからを考える(高城剛) |
|
空港の無償wifiサービス速度が教えてくれるその国の未来(高城剛) |
|
苦手を克服する(岩崎夏海) |
|
父親の背中、母親の禁止–『ドラゴンボール』に学ぶ好奇心の育み方(岩崎夏海) |
|
江東区長辞職から柿沢未途さん法務副大臣辞職までのすったもんだ(やまもといちろう) |
|
季節の変わり目はなぜ風邪をひきやすい?(若林理砂) |
|
日本初の「星空保護区」で満喫する超脱力の日々(高城剛) |
|
「キレる高齢者」から見る“激増する高齢者犯罪”の類型(やまもといちろう) |
|
都知事・小池百合子さんは希望の党敗戦と台風対応の不始末でどう責任を取るのか(やまもといちろう) |
|
原発にドローン3機が飛来で大騒ぎに(やまもといちろう) |
|
週刊金融日記 第294号【怪物ビットコイン ~ハードフォークという富の複製、ビットコイン・ダイヤモンド誕生!時価総額1兆7000億円他】(藤沢数希) |
|
「深刻になる」という病(名越康文) |












