※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海の競争考(その24)ゆとり世代がブラック企業を育んだ
ゆとり世代には辛抱が足りない
ゆとり世代は、2000年代の半ばから社会に出始めたが、なかなか適応できなかった。彼らはいわゆる「失われた20年」――つまりずっと不況の中で生きてきた。おかげで大変な就職難で、就活にはずいぶんと苦労をさせられた。そのため、そうして苦労して入った会社には石にかじりついてでも残りそうなものだった。しかし実態は違った。そうやって苦労して入った会社であるにもかかわらず、すぐに辞めていった。理由はさまざまあろうが、一番は「彼らの辛抱が足りないこと」だった。
なぜ辛抱が足りないか? 理由は簡単で、それまで「辛抱させられたこと」がなかったからだ。そういう訓練を積めていなかったのだ。よく「競争をしなかったこと」がゆとり世代の最も大きな問題とされている。運動会の徒競走で、手をつないで一斉にゴールしたのがその象徴で、この連載でも幾度となくそのことを取りあげた。しかしそれと同じくらい大きな問題がもう一つあって、それは先述した「辛抱させられた経験がない」ということだ。彼らは「我慢」というものを知らないのだ。
ゆとり教育まっただ中の90年代後半、小学校において大きな問題となったのは「学級崩壊」だった。「学級崩壊」とは、文字通りクラスが崩壊することだ。どう崩壊するかというと、多くの子供がめいめい勝手なことをするのはもちろん、座っていることもできなくて、立ち歩いたり、ひどいときには教室から出ていったりしてしまう。ゆとり教育の最中では、文科省や教育委員会の指導で、教師はこれらを注意してはいけなかった。子供に黙っていることを強要したり、座っていることを強いたりするのは間違いだとされていたのである。
そのためこのとき、子供たちの中に決定的な観念が植えつけられた。それは、「嫌なことはしなくてもいい」というものだ。もっといえば、「嫌なことは我慢するべきではない」という考え方だ。こうした考え方が、彼らにとっての重要な価値観として根づくのだが、それが後々、大きな問題を引き起こす。
その他の記事
ドラッカーはなぜ『イノベーションと企業家精神』を書いたか(岩崎夏海) | |
冬至の日に一足早く新年を迎える(高城剛) | |
ロシア人が教えてくれた人生を楽しむための世界一具体的な方法――『人生は楽しいかい?』(夜間飛行編集部) | |
アップル固有端末IDの流出から見えてくるスマホのプライバシー問題(津田大介) | |
なぜ今? 音楽ストリーミングサービスの戦々恐々(小寺信良) | |
新MacBook Proをもうちょい使い込んでみた(小寺信良) | |
ネットニュース界隈が公正取引委員会の槍玉に上がっていること(やまもといちろう) | |
幻冬舎、ユーザベース「NewsPicks」に見切られたでござるの巻(やまもといちろう) | |
中国バブルと山口組分裂の類似性(本田雅一) | |
人生に活力を呼び込む「午前中」の過ごし方(名越康文) | |
「#metoo」が本来の問題からいつの間にかすべてのハラスメント問題に広がっていくまで(やまもといちろう) | |
スープストックトーキョーの騒ぎと嫌われ美人女子の一生(やまもといちろう) | |
9月は世界や各人の命運が分かれる特異月(高城剛) | |
津田大介×高城剛対談「アフター・インターネット」――ビットコイン、VR、EU、日本核武装はどうなるか?(夜間飛行編集部) | |
週刊金融日記 第268号 <ビジネスに使えて使えない統計学その2 因果関係を暴き出す他>(藤沢数希) |