※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」2015年4月6日 Vol.097より

「どうすればいいですか?」と聞かれると、私は「本気ですか?」と聞き返します。
何かにつけて「どうすればいいですか?」と聞きたがるのは、現代人の大きな病といえます。というのも出会い頭に「どうすればいいか」を聞いて、それをやり遂げた人を私は知らないからです。人から「方法」を授けられたからといって、それを実践できるかどうかはまったく別の話です。少なくとも、それを半年や一年といった期間、続けることは難しい。
それは「自発性がなければ人は行動しない」ということですが、それ以前に、そもそも人は滅多に、本当の意味で「他人に問う」ということをしない、ということでもあります。僕らが日常の中で目にする「問い」に見えるものの多くは他者への無意識の「謎かけ」であり、相手をコントロールしようという試みに過ぎないのです。
仏教には自内証という言葉があります。自己を証するものは内側にある、という意味だけれど、だとすれば、問いというのはもともと、自分の外にいる「誰か」ではなく、自分の「内側」に向けられたものでなければならないということです。
自分自身ではなく、他人に「どうすればいいですか?」と聞きたがる。その人に欠けているものは「方法」ではなく、「本気になる」ことだと私は考えます。
本気になり、真剣になることで初めて門は開かれます。といっても、私たちは「本気になるぞ」と心に決めたからといって、すぐさま本気になれるというものではありません。
私たちはしばしば、自分が本当にやりたいことを後回しにして、逃げようとします。本当にやりたいことをやって失敗したり、恥をかいたりするのが嫌だからです。しかし、そこから逃げているうちに、人生の月日は光のように過ぎていってしまうでしょう。
「本気になる」ということは、環境と自分との間に生じた、絶妙な駆け引きの結果です。つまり、多くの人が想像しているよりもずっと、「本気」というのは状況依存的なひとつの「状態」なのです。
ですから、単に「本気になるぞ!」というような意識づけによってコントロールすることはできません。環境と自分との間を整えて、「本気の時間」を大切に育み、確保していくことが必要です。具体的には部屋の片付け、道具磨き、勉強や学びの場所選び、スマホ依存の断ち方、友達の選び方、家族との距離の取り方といった多岐にわたった取り組みが求められることになるでしょう。
名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」
目次
00【イントロダクション】「本気」という無意識のゴンドラに乗るために
01【ピックアップ】意志よりもはるかに強い「場(環境)の力」
02【コラム】五月病の正体 「どうせ……」というくせものキーワード
03カウンセリングルーム
[Q1]鬱病の息子に親ができること
[Q2]体癖によって後悔や妄想の中身は違う?
[Q3]両親を仲直りさせたい
[Q4]何をやっても冴えない人はどうすればいい?
04精神科医の備忘録 Key of Life
・時間こそ妄想の本丸
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!
その他の記事
|
世界的な景気減速見込みで訪れる「半世紀の冬」(やまもといちろう) |
|
『小説家と過ごす日曜日』動画版vol.001<IRA’Sワイドショー たっぷりコメンテーター><恋と仕事と社会のQ&A>(石田衣良) |
|
国民民主党を中心に動いていた政局が終わり始めているのかどうか(やまもといちろう) |
|
ライター業界異変アリ(小寺信良) |
|
うまくやろうと思わないほうがうまくいく(家入一真) |
|
言語と貨幣が持つ問題(甲野善紀) |
|
「コロナバブル相場の終わり」かどうか分からん投資家の悩み(やまもといちろう) |
|
人生のリセットには立場も年齢も関係ない(高城剛) |
|
「生涯未婚」の風潮は変わるか? 20代の行動変化を読む(やまもといちろう) |
|
「朝三暮四」の猿はおろかなのか? 「自分の物語」を知ることの大切さ(福岡要) |
|
『戦略がすべて』書評〜脱コモディティ人材を生み出す「教育」にビジネスの芽がある(岩崎夏海) |
|
自分の身は自分で守る時代のサプリメント(高城剛) |
|
【疲弊】2021年衆議院選挙の総括【疲弊】(やまもといちろう) |
|
ニュージーランドに第二のハリウッドを作る(高城剛) |
|
煉獄の自民党総裁選、からの党人事、結果と感想について申し上げる回(やまもといちろう) |












