高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

資本主義の「貪欲さ」から逃げるように拡散するエッジ・ブルックリンの本当の魅力

※高城剛メルマガ「高城未来研究所」 Vol.201より

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今週はブルックリンにいます。

この5年で、ハードウエア的に大きく変わった街といえば重慶やマニラなのでしょうが、ソフトウエア的に大きく変わった街といえば、ブルックリンだと思います。

このハードウエアが意味するところが高層ビルなどの巨大な建造物なのに対し、ソフトウエアが意味するところは、あたらしい生活への取り組み、いわゆるライフスタイルの変化を指しておりまして、ですので「いま注目すべき街、ブルックリン」などの雑誌の触れ込みに引っ張られて、ハードウエア的物見雄山でこの街に出向くと、ブルックリンの面白さはまったく理解できません。

リーマンショック以降、米国が繰り出す量的緩和政策によってマンハッタンの地価が著しく高騰し、同じくリーマンショックを目の当たりに見てきたニューヨークの「目撃者」たちは、新天地に移動し、あたらしい生活を模索することになりました。それがブルックリンなのです。

彼らは、自分たちの目の届く範囲で、自分たちですべてを行うことを目指しています。

これをDIY精神と呼ぶのはいささか安易でして、なぜなら、そのもっとも大きいものは、政府に依存しすぎないコミュニティ作りだからです。

世界有数の資本主義下にある大きな都市のなかにありながら、ビルの上に畑を作り、信頼できる人が作る料理だけを食べるような試みは、いままで他の巨大都市にはないものでした。

このブルックリン活性化は、2008年リーマンショック以降、わずか数年で大きく膨れあがり話題を集めましたが、いまブルックリンは、また別の曲がり角に差し掛かりはじめました。

それは、リーマンショックの「主人公」たちが、相次いでブルックリンに移り住み、コミュニティからはじまった屋外フードフェスや周辺の店に次々と巨額を投資し、気がつくとマンハッタン以上に地価は高騰を続けることになりました。
いま、数年前にマンハッタンから移り住んできた人たちが、今度はブルックリンから押し出されるような現象が起きはじめてます。

ニューヨークをあとにし、ハドソンやバッファローへと次の新天地を求め、この地を去る人も少なくありません。

米国の人気ドラマのなかのセリフで、いまの「ブルックリンはマンハッタン。クイーンズはブルックリン。マンハッタンはクイーンズ」というのがありまして、これはマンハッタンの人々はブルックリンを目指し、ブルックリンにいた人はクイーンズに避難し、マンハッタンは空洞化するような現象が起きていることを指しています。

このような都市において比較的貧困な層が多く住む停滞した地域に、豊かな人々が流入する人口移動現象は、「ジェントリフィケーション」と呼ばれています。

この「ジェントリフィケーション」により、貧困地域の家賃の相場がグングン上がり、それまで暮らしていた人々が暮らせなくなってしまい、結果それまでの地域特性が失われることになっていくのは、近年の世界的な傾向です。

今週も、駅からも遠く、人気のない場所にあるブルックリンのローカルビールで有名な「ブルックリン・ブリュワリー」の倉庫が、60億円以上で売りに出されていることが報道されました。

わずか5年で、10倍以上に地価が高騰した場所も少なくありません。

イーストリバーを挟み、ブルックリンの向こう側はウォール街で、そのウォール街から逃げるようにブルックリンに移り住んだのに、気がつくとブルックリンもウォール街に飲み込まれてしまうことになりました。

しかしブルックリン、ひいてはニューヨークの魅力は、この「変貌の早さ」そのものだと思います。

ブルックリン内でも地価の高騰が続くウイリアムズバーグやグリーンポイントといった地区がウォール街に侵食されても、さらに交通が不便なグアナスやレッドフックが、まだブルックリンにはあります。

資本家が投資をする速度が速いのか、それより早く時代の先端を行く人たちが逃げ切れるのか。

レースは、再びスタートを切りました。

資本主義の「貪欲さ」から逃げるように拡散するエッジこそが、ブルックリンの本当の魅力のように僕は思うのです。

 

 

┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】
Vol.201
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/ 2015年4月24日 /

■目次
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… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4. マクロビオティックのはじめかた
… 5. 身体と意識
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 著書のお知らせ

 

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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