※高城未来研究所【Future Report】Vol.221(2015年9月11日発行)より
今週は東京にいます。
大雨が続く深夜に、カリフォルニアで開催されたアップルの新製品発表のストリーミングを見ていましたが、正直虚しく見えました。そしてもう、アップルからiPhoneを越える製品が出てくることはないのではないか、と考えるようにもなりました。
現在のアップルの最大の失敗は、apple watchでもMac Bookでもapple musicでもなく、たいした製品をリリースするわけでもないのに、いつまでも大げさに振る舞う発表会にあるように思います。
画期的と思われる製品やサービスをリリースする際には、少しばかり大げさなプレゼンテーションも、時には大切で面白いのかもしれません。しかし、マイナーアップデート同然の商品や競合の模倣商品を発表する際に、過度な演出は逆効果に思えます。
「大仰な発表会」に「説明くさいビデオ」を付け足し、「ダサいおっさん」が続々出てくるようなプレゼンテーションは、もう懲り懲りだというのが、正直な僕の心情なのです。
現実的に、どう考えてもiPad ProはマイクロソフトのSurfaceを後追いしているようにしか見えませんし、その上、OSを考えるとウインドウズ10にアップルは遥かに遅れを取っています。
OSXとiOSが融合しない限りアップルから画期的な商品はもう出ないのでしょうが、その間に他社も含めたデジタルディバイス全般が停滞し、産業として斜陽に向かうことになるように思います。
そう考えれば、2015年秋のアップルのイベントは、もう業界全般としてこれ以上大きく発展することがないお知らせのようなもので、今後どこかで急速にスマートフォン市場とタブレット市場(およびアプリ市場)が縮小に向かうターニングポイントとも言えるでしょう。アップルの功罪は、実に大きいですね。
そして、以前より何度かお話し申し上げてるように、ディバイスで大切なのは「あたらしいサイズ感」です。
iPad Proの大きさであれば、いままでのMacBookでも同じサイズがあり、本来iOSであたらしいディバイスをリリースするなら、Mac Bookでは出せないサイズで出すことが必要だったように思うのです。
ですのでiPad Proと同時に、iPad mini Proを出し惜しみしないで併売リリースすることで、他社にできないサイズの提案をするのが、いまのアップルには必要だったはずです。
このような挑戦をしなかったのは、現在のアップル の経営陣が「失敗したくない」と考えながら、株価を気にしている姿勢が見て取れます。
歴史を振り返れば2001年にiPodとOSXを発表し、それから5年半後にiPhoneを発表。
その三年後にはiPadが発表されました。
この00年代の8年半の間に、アップルは大きな偉業を成し遂げ、世界を一変させました。それは倒産寸前だった企業の挑戦そのものでしたが、残念ながらその勢いは現在停滞しており、気がつくと競合の後塵を拝しています。
アップルは15年間もOSXとその簡易版のiOSをいまだに使い続けており、怖がって次の提案ができずにいるように僕には見えます。
世界が実体経済と乖離し株価だけがあがるように、いつまでアップルは大したことない製品を発表する華美なイベントを続けるつもりなのでしょうか?
僕自身、最近のアップル製品に落胆していますが、代替商品がないのも事実であることを考えると、コンピュータの終焉はもとより、どう考えてもタブレットやスマートフォンが終わりに近づいている気がしてなりません。
東京の嵐の中見たファイナルパーティは、わかっている者(主には投資家等)はダンスを楽しみながら、ゆっくり出口に近づいているように見えました。これはもしかしたら、シリコンバレーの終焉が近づいている、ということのようにも感じています。
などとそれなりのことを書いてますが、実は飛行機に乗り遅れたんです。
ええ、寝坊して(泣)。
これを朝までストリーミングみてたのに、おもしろくない製品を出したアップルの問題にするには、少し無理がありますね。
たとえ、デジタルディバイスの終焉が事実だとしても。
今日は快晴、空港に向かいます。
┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】
Vol.221
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ 2015年9月11日発行 /
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
詳細・ご購読はこちらから
http://yakan-hiko.com/takashiro.html
その他の記事
グルテンフリー食について個人的に思うこと(高城剛) | |
中国人が日本人を嫌いになる理由(中島恵) | |
先進国の証は経済から娯楽大麻解禁の有無で示す時代へ(高城剛) | |
ぼくがキガシラペンギンに出会った場所(川端裕人) | |
知的好奇心の受け皿としての「私塾」の可能性(名越康文) | |
これからの日本のビジネスを変える!? 「類人猿分類」は<立ち位置>の心理学(名越康文) | |
誰かのために献身的になる、ということ(高城剛) | |
週刊金融日記 第308号【日本の大学受験甲子園の仕組みを理解する、米国株は切り返すも日本株は森友問題を警戒他】(藤沢数希) | |
「交際最長記録は10カ月。どうしても恋人と長続きしません」(石田衣良) | |
身体に響く音の道――音の先、音の跡(平尾文) | |
ボツ原稿スペシャル 文春オンラインで掲載を見送られた幻のジャニー喜多川さん追悼記事(やまもといちろう) | |
近年の大ヒット映画に見る「作り方」の発明(岩崎夏海) | |
夜間飛行が卓球DVDを出すまでの一部始終(第1回)(夜間飛行編集部) | |
「罪に問えない」インサイダー取引が横行する仮想通貨界隈で問われる投資家保護の在り方(やまもといちろう) | |
キリシタン大名と牛肉を食する文化(高城剛) |