切通理作
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切通理作メールマガジン「映画の友よ」連載寄稿・眼福女子の俳優論

第88回・米アカデミー賞受賞のゆくえは?

若手演技派二大巨頭

お次は主演女優賞、ノミネーションはコチラ↓

・ケイト・ブランシェット『キャロル』(現在公開中)
・シアーシャ・ローナン『ブルックリン』(7月公開)
・ジェニファー・ローレンス『Joy(原題)』(2016年春公開)
・シャーロット・ランプリング『さざなみ』(4月9日公開)
・ブリー・ラーソン『ルーム』(4月8日公開)
 
 
☆受賞予想→ブリー・ラーソン『ルーム』

予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=iqp-fDEMrGU&feature=player_detailpage

公式サイト↓
http://gaga.ne.jp/room/

ブリー・ラーソン(以下ブリー)は1989年生まれのアメリカ出身。『21ジャンプストリート』(2012)で注目を集め、主演作『ショート・ターム』(2013)で作品と共に彼女自身も数々の映画賞にノミネート及び受賞し評価を高める。その他出演作に『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』(2010)、『ドン・ジョン』(2013)、『ザ・ギャンブラー/熱い賭け』(2014)など。

本作は、7年間監禁されたジョイ(ブリー)とジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)親子の逃亡からその後の人生を描き出すヒューマンドラマとなっている。『ショート・ターム』での自身もトラウマを抱えながら、心に問題を抱えるティーンエイジャーのグループホームでケアマネジャーとして働くグレイス役が高評価で、本作でも賞レース後半戦では主演女優賞を連続受賞しており、アカデミー賞でも本命に挙げるメディアが多数なので、受賞はほぼほぼ堅いだろう。
 
 
★受賞予想→シアーシャ・ローナン『ブルックリン』

特別映像↓
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=nsdOJQmCaXs

※日本版公式サイトなし

シアーシャ・ローナン(以下シアーシャ)は1994年生まれのアイルランド出身。『つぐない』(2007)によりアカデミー賞に助演女優賞で初ノミネートを果たし、早くも演技派として名を馳せる。その他出演作は『ラブリーボーン』(2009)、『ハンナ』(2011)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)など。

本作は、アイルランドから仕事を求めてアメリカへ移住したエイリス(シアーシャ)の生き様を描いた恋愛ドラマ作品。

大きく澄んだ青い瞳が特徴のシアーシャは『つぐない』の嫌悪感から姉とその恋人の人生を狂わせる妹のブライオニー役も鮮烈だったが、個人的には『ラブリーボーン』の殺されて天国から家族を見守るスージー役や、『ハンナ』の幼い頃から鍛えられ凄腕の殺しのスキルを持つハンナ役など、個性的な出演作選びが面白いなあという印象があり、なんだかんだ作品をチェックしている女優の一人であった。

着実に幅広い役柄をこなしながら今年再びアカデミー賞にノミネートされ、あの小さかった子がこんなきれいなレディかつ立派な女優に成長して……と親戚のおばちゃんよろしくしみじみとしてしまい、つい応援したくなる。

実は賞レース前半戦では主演女優賞をほぼ総なめ状態だったが後半戦から現在に至るまでノミネートはあるが受賞はならずで、この流れだと残念ながら受賞は難しいように思える。

『タイタニック』コンビ

最後は主演男優賞、ノミネーションはコチラ↓

・エディ・レッドメイン『リリーのすべて』(3月18日公開)
・ブライアン・クランストン『TRUMBO(原題)』(2016年夏公開)
・マイケル・ファスベンダー『スティーブ・ジョブズ』(現在公開中)
・マット・デイモン『オデッセイ』(現在公開中)
・レオナルド・ディカプリオ『レヴェナント:蘇えりし者』(4月22日公開)
 
 
☆受賞予想★受賞希望→レオナルド・ディカプリオ『レヴェナント:蘇えりし者』

予告編↓
https://youtu.be/Q9oOfyF4k00

公式サイト↓
http://www.foxmovies-jp.com/revenant/

レオナルド・ディカプリオ(以下レオ)は1974年生まれのアメリカ出身。10代の頃から俳優業で活躍し『ギルバート・グレイプ』(1993)でアカデミー賞に助演男優賞で初ノミネート。歴史的大ヒット作『タイタニック』(1997)で一躍スターダムにのし上がり、以後数多くの映画に出演し、多くの映画賞でノミネートと受賞を果たす。その他出演作に『ロミオ+ジュリエット』(1994)、『ディパーテッド』(2006)、『インセプション』(2010)など。

本作は、熊に襲われ重傷を負ったハンターのヒュー・グラス(レオ)が、自分を見捨て息子まで殺した仲間を追うサバイバル復讐劇。普段映画を見ない人でも知っているであろう、プロフィール紹介が不要なくらいの世界的大スターのレオだが、まだ一度もオスカーを手にしたことはない。

今回含め5度ノミネートしているが過去4度では受賞に至らず、また『タイタニック』は作品賞はじめ14部門ノミネート中11部門受賞という快挙を成し遂げているが、彼はこの時ノミネートすらされなかった。また『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)では主演のレオではなく助演のダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞でノミネートされるなど、その他の映画賞は受賞が多いのにオスカーはなぜかご縁が無い模様。

しかし今回は、本作の公開が他作品に比べ遅かったためか賞レース前半戦はほぼスルーだったものの、後半戦で一気に巻き返し主演男優賞をかっさらっており、間違いなく追い風が吹いている。

もし今回受賞して、さらに助演女優賞をケイトが受賞した場合、『タイタニック』コンビが仲良く壇上に揃うこととなる。

公開時には実現しなかった、悲劇の恋人ジャックとローズがアカデミー賞同時受賞をしたら……洋画ファンならたまらず想像したくなるシチュエーションを思うと、さっそく涙ぐみそうになる。

すでにこれまでの賞レースの授賞式で、レオとケイトが並んだ2ショットは何度も目撃されているが、アカデミー賞でとなるとまた一味違う。

レオの初受賞にこんなに相応しいタイミングはないはずで、一般人の私ですら分かってるんだから、本場のアカデミー協会の会員だってその空気を察知しているはずだ。

主演男優賞ノミネートの他のメンバーも全員素晴らしい俳優陣であるのは間違いないが、ここは空気を読んでレオを一押ししたい。

もういい加減、お願いだからオスカーあげてくださいお願いします!

おまけ

参考までに、主要2部門のノミネーションも載せておく。

監督賞、ノミネーションはコチラ↓

・アダム・マッケイ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(3月4日公開)
・アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ『レヴェナント:蘇えりし者』(4月
22日公開)
・ジョージ・ミラー『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(リバイバル上映
中)
・トム・マッカーシー『スポットライト 世紀のスクープ』(4月公開)
・レニーアブラハムソン『ルーム』(4月8日公開)

作品賞、ノミネーションはコチラ↓

・『オデッセイ』(現在公開中)
・『スポットライト 世紀のスクープ』
・『ブリッジ・オブ・スパイ』(現在公開中)
・『ブルックリン』(7月公開)
・『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
・『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(3月4日公開)
・『ルーム』
・『レヴェナント:蘇えりし者』

私事ですが、今年は授賞式当日に休みが取れたので、生中継を見ながら眼福予想がどこまで当たるか朝から大騒ぎしながら楽しみたい。年に一度のお祭り騒ぎ、ノラなきゃ損々である!
 
 

<筆者プロフィール>

小佳 透子(こけ・とうこ)
1985年生まれ。「映画の友よ」創刊号より、海外の俳優・女優の魅力に迫った本連載を寄稿。これまでに取り上げた人物は、チャニング・テイタム、ジェニファー・ローレンス、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ミア・ワシコウスカなど。その他の得意執筆ジャンルは、海外ドラマ、洋楽、洋食器。
 
 

 

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31「新しい日本映画を全部見ます」。一週間以上の期間、昼から夜まで公開が予定されている実写の劇映画はすべて見て、批評します。アニメやドキュメンタリー、レイトショーで上映される作品なども「これは」と思ったら見に行きます。キネマ旬報ベストテン、映画秘宝ベストテン、日本映画プロフェッショナル大賞の現役審査員であり、過去には映画芸術ベストテン、毎日コンクールドキュメンタリー部門、大藤信郎賞(アニメ映画)、サンダンス映画祭アジア部門日本選考、東京財団アニメ批評コンテスト等で審査員を務めてきた筆者が、日々追いかける映画について本音で配信。基準のよくわからない星取り表などではなく、その映画が何を求める人に必要とされているかを明快に示します。「この映画に関わった人と会いたい」「この人と映画の話をしたい!」と思ったら、無鉄砲に出かけていきます。普段から特撮やピンク映画の連載を持ち、趣味としても大好きなので、古今東西の特撮映画の醍醐味をひもとく連載『特撮黙示録1954-2014』や、クールな美女子に会いに行っちゃう『セクシー・ダイナマイト』等の記事も強引に展開させていきます。

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切通理作
1964年東京都生まれ。文化批評。編集者を経て1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。批評集として『お前がセカイを殺したいなら』『ある朝、セカイは死んでいた』『情緒論~セカイをそのまま見るということ』で映画、コミック、音楽、文学、社会問題とジャンルをクロスオーバーした<セカイ>三部作を成す。『宮崎駿の<世界>』でサントリー学芸賞受賞。続いて『山田洋次の〈世界〉 幻風景を追って』を刊行。「キネマ旬報」「映画秘宝」「映画芸術」等に映画・テレビドラマ評や映画人への取材記事、「文学界」「群像」等に文芸批評を執筆。「朝日新聞」「毎日新聞」「日本経済新聞」「産経新聞」「週刊朝日」「週刊文春」「中央公論」などで時評・書評・コラムを執筆。特撮・アニメについての執筆も多く「東映ヒーローMAX」「ハイパーホビー」「特撮ニュータイプ」等で執筆。『地球はウルトラマンの星』『特撮黙示録』『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』等の著書・編著もある。

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