この映画を通して、自分の本当の「いま」を見つけて欲しい
―苛立ちや焦りを感じながらも静かに流れていた日常の中で、ある日、それぞれの感情が爆発する。美咲はヒステリックに喚き、村岡は声にならない声で叫び、宮本は怒りを爆発させる。この怒りの矛先が、目の前の相手だけではなく自分自身にも向かっているような気がしたのですが……。
福間 短期間の撮影であそこまでテンションを上げてくれたのはすごいことだと思います。カット割りせず、できるだけワンカット、ワンテイクで撮っているので、本人たちも熱が入り想像以上のアクションになる。そこに立ち会えた瞬間、「ああ、いいなあ」と監督していて涙が出る。
美咲や宮本が怒るとき、村岡という相手に対して怒っているだけじゃない。この世界に抗議しているし、自分にも腹が立っている。怒りのベクトルは自分と相手と世界へと、本当は3つある。相手に怒っているようで、自分に怒っているようで、それは世界に対して怒っている。

『秋の理由』より。佐野和宏、寺島しのぶ (c)「秋の理由」製作委員会
―それは詩にも通じているところですね。最後に、これから『秋の理由』をご覧になる方へメッセージをお願いします。
福間 今の世の中は、見方によってはひどい世の中になってしまった。それは政治的な意味だけではなく、大事なものが大事にされていない。だからといって絶望するのではなく、そこで生きなくては。それでも生きていくというのはどういうことなのか。自分の本当の「いま」を見つけることだと思うんです。
一方で「人間讃歌」が安易に謳歌されるが、そういうのからどれだけ遠くへ行けるか。
誰も一人で生きていない。でも一人で生きている自分もいる。この映画は普通の地続きの現実ではあるけれど、現実から飛躍している部分もある。
この映画を通して、過去に縛られている現在を「いま」と捉えるのではなく、そこから自由になる「いま」というものを捉えて欲しいです。
<了>
※以上の原稿はメルマガ「映画の友よ」第64号に掲載されたものから、一部をカットした再編集版です。完全版原稿に興味のある方は、ぜひメルマガの方もお読みくだされば幸いです。
映画『秋の理由』
新宿K's cinemaにて公開中
ほか全国順次公開
http://akinoriyuu.com/
●あらすじ
宮本守(伊藤洋三郎)は、本の編集者で、小さな出版社「黙示書房」を経営しているが、経営は苦しく、事務所をたたむことになる。宮本の友人・村岡正夫(佐野和宏)は作家だが、代表作『秋の理由』以降、もう何年も小説を発表していない。精神的な不調から声が出なくなり、筆談器を使っている。宮本は村岡の才能を信じ、彼の新作を出したいと思っている。そして実は、村岡の妻・美咲(寺島しのぶ)が好きなのである。
ある日、宮本と村岡の前に『秋の理由』を何回も読んだというミク(趣里)が現れる。ミクは『秋の理由』のヒロインに似ていて、まるで村岡の言葉から生まれたかのような存在である。
ミクと過ごす時間の中で、宮本は美咲への思いをはっきりと自覚するが、美咲はそれを受け入れてくれない。けれど、美咲と村岡の関係は険悪になる。村岡は、正気と狂気の間を揺れ動き、難民的な男女の群れの中に自分がいる夢をよく見る。村岡は自分のそばに宮本がいることを苦痛に感じ、宮本にそれを言ってしまう。すると、宮本は怒りを爆発させる。村岡に、自分に、そしてこの世界のあり方に。
取材・構成 出澤由美子プロフィール
東京都出身。画家、ソウルデザイナー、インタビュアー。
独自の世界観を表現したアート活動の他、インタビュー・対談などの人物取材、
書籍のディレクション、編集者、ライティングを行う。
取材する人物は、映画監督・ダンサー・俳優・モデル・音楽アーティスト・
占い師・クリエイター・企業経営者など多種多様。
ビジネス書『BBT Real Time Online Case Study』(ビジネス・ブレークスルー大学出版)、
キャラクターブック『ねこあつめ日和』『ねこづくし百景』(KADOKAWA)の他、
野望を持った人物を紹介するフリーペーパー『YABO』を制作。
切通理作のメールマガジン「映画の友よ」
「新しい日本映画を全部見ます」。一週間以上の期間、昼から夜まで公開が予定されている実写の劇映画はすべて見て、批評します。アニメやドキュメンタリー、レイトショーで上映される作品なども「これは」と思ったら見に行きます。キネマ旬報ベストテン、映画秘宝ベストテン、日本映画プロフェッショナル大賞の現役審査員であり、過去には映画芸術ベストテン、毎日コンクールドキュメンタリー部門、大藤信郎賞(アニメ映画)、サンダンス映画祭アジア部門日本選考、東京財団アニメ批評コンテスト等で審査員を務めてきた筆者が、日々追いかける映画について本音で配信。基準のよくわからない星取り表などではなく、その映画が何を求める人に必要とされているかを明快に示します。「この映画に関わった人と会いたい」「この人と映画の話をしたい!」と思ったら、無鉄砲に出かけていきます。普段から特撮やピンク映画の連載を持ち、趣味としても大好きなので、古今東西の特撮映画の醍醐味をひもとく連載『特撮黙示録1954-2014』や、クールな美女子に会いに行っちゃう『セクシー・ダイナマイト』等の記事も強引に展開させていきます。
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