やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「なし崩し」移民増加に日本社会は如何に対応するか



 日本では移民を受け入れることそのものについて、議論される機会が少しずつ増えてきました。ウェブニュース界隈でも「移民」のキーワードは増えてきており、最近では過疎に悩む地方が外国人実習生に労働力を依存する記事も出るなど、そぞろ話題になっていくと思います。

 過去の政策論争で言えば、内閣府が「日本は毎年20万人の移民を受け入れれば人口一億人をキープできる」という話をし始め、これはこれで騒ぎになりました。

 言い出しっぺは、2012年ごろから安倍晋三政権の下で経済諮問会議が組成されてそこで人口減少による国力低下や経済力低迷を避けるために何をするべきかという議論をしてきたわけですけれども、実際にはこの産経新聞の記事にあるようにかなりざっくりとした試算で方針決めが行われて、こんにちにいたるまであんまり具体的な政策として移民云々というのはありませんでした。

毎年20万人の移民受け入れ 政府が本格検討開始

 その後、朝日新聞が今年初めに移民に関する議論をし始め、ようやく移民の状況と社会環境に関する議論が進み始めたかなという印象はあります。移民問題が、避けては通れないけど語られないトピックスから、すでに目の前にある課題に昇華したと感じます。

「移民」受け入れ、日本では 定住策の議論欠いたまま

 そして、人口減少の局面に入った日本で、だいたい年間30万人ずつ労働人口が減少していく、とりわけここ数年は団塊の世代のリタイアもあって、嘱託再雇用で労働市場に残る65歳以上男性を除くと60万人近くが生産性のない年金生活に突入します。

 その労働人口をどうにか半分ぐらい埋めているのが、これらの外国人移民や外国人実習生であり、その意味では農業や水産加工業だけでなく、コンビニや飲食店での外国人比率がどんどん増えている、というのが実態です。つまり、なし崩しに国民の受け入れ議論をする前から外国人が入ってきている、というのが現状なのです。

 冒頭でも述べた通り、もはや地方経済もサービス産業もこれらの外国人なしには仕事が回りません。どうにもならない、というのが現実です。したがって、こういう外国人を二代、三代と日本にいてもらい、良い形でご一緒しながら今後の日本を作り上げていくにあたって、民族差別なんかしている状態なのか、彼らにも暮らしやすい平和で公平な日本を作るにはどうするのが適切か、ということを考えなければいけない時代に差し掛かったと言えます。

 このメルマガに限らず、夏の終わりを迎えてそろそろ少子高齢化からの経済低迷、さらには移民と日本はどう向き合うのかを議論できるような記事を書いていきたいと思っています。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.198 移民問題のこれからを考えつつ、謎の中国・海航集団や国家安全保障とICTの関係について触れてみる回
2017年8月29日発行号 目次
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【0. 序文】「なし崩し」移民増加に日本社会は如何に対応するか
【1. インシデント1】日本に集まりだす「問題のある資金」、海航集団が日本の金融行政に与えるリスク
【2. インシデント2】国家安全保障とICTの進化の軋轢はどこかでバランスできるのでしょうか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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