※高城未来研究所【Future Report】Vol.327(2017年9月22日発行)より
今週はパリにいます。
世界中のファッション・アディクトの羨望の地だった「コレット」が、年内を持って閉店します。
セレクトショップのなかのセレクトショップと言われ、90年代から世界のファッションシーンを牽引してきたパリを代表する一店が、ついに終わりを迎えることになりました。
「コレット」は、エレガントなメガブランドと新進気鋭のデザイナーを混在して展示し、先端的ガジェットをファッション・アクセサリーとして扱うことなど、「それまでになかった」セレクトを発揮することで、常に業界を賑わせて来ました。
しかし、その実態は「コレットに展示したい」メーカーからのプロモーションコストで運営する、「それまでになかった」店舗をメディアとして活用するビジネスモデルに過ぎませんでした。
一般的に「コレット」の終焉は、欧州の不況やZARAやH&MなどのグローバルSPAの台頭が原因であると言われますが、僕は「セレクト」するのはショップの役目から、個人に移ったことが大きいと感じています。
「コレット」がスタートした90年代には、今日ほどモノの情報がなく、たとえ情報があっても購入する手立てがありませんでしたので、バイヤーが世界を巡り、商品を集めている時代でした。
時が移り変わり、21世紀の今日は、あらゆる情報が氾濫し、また、購入する手立ても増えました。
さらに、個々がファッションに注力する必要もなくなりました。
かつては、自分のアイデンティティを確立する手段のひとつとして、ファッションは機能していた側面もあり、他の人が持ってないものが個性や存在感につながっていた時代もありました。
しかし現在は、ブログやSNSをはじめとする自分を表現する手段が多くあり、あえて日常的に着飾る必要もなければ、必死になって他人とは違うものを入手しなければならない必要性もなくなってきました。
これは、ファッションに限らず、機能美以外のデザインそのものの終焉が近いことを示しているのかもしれません。
ファッショントレンドの雄であり、時代のメディアを作ってきた「コレット」が、トレンドをつかめない時代になるのは、実に皮肉です。
百貨店が衰退するようにセレクトショップも衰退するのは、必然とも言えます。
かつて(もしくは一部ではいまも)、ファッションの都と言われていたパリの名所のひとつが落城します。
もはや観光以外に大きな産業がないフランス。
フランスは、次の経済ショックの大波に、耐えられないかもしれません。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.326 2017年9月15日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
その他の記事
古舘伊知郎降板『報道ステーション』の意味(やまもといちろう) | |
無我夢中になって夏を楽しむための準備(高城剛) | |
シュプレヒコールのデジャブ感—大切なのは、深く呼吸をすること(名越康文) | |
うざい店員への対応法(天野ひろゆき) | |
小商いと贈与(平川克美) | |
戸田真琴の青春を黒い雨で染める~『コクウ』(『ほくろの女は夜濡れる』)監督榊英雄&主演戸田真琴ロング座談会(切通理作) | |
喜怒哀楽を取り戻す意味(岩崎夏海) | |
「本当かどうかわからない数字」に左右され責任を押し付けあう日本社会(高城剛) | |
僕ら“ふつうのおじさん”が理解できないこと(本田雅一) | |
負け組の人間が前向きに生きていくために必要なこと(家入一真) | |
迷子問答:コミュ障が幸せな結婚生活を送るにはどうすればいいか(やまもといちろう) | |
都民ファースト大勝利予測と自民党の自滅について深く考える(やまもといちろう) | |
ヘルスケアで注目したい腸のマネージメント(高城剛) | |
「5類」強行の岸田文雄政権が僕たちに教えてくれたもの(やまもといちろう) | |
「コロナバブル相場の終わり」かどうか分からん投資家の悩み(やまもといちろう) |