名越康文
@nakoshiyasufumi

『SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』より

ひとりぼっちの時間(ソロタイム)のススメ

日常の中で、ふと、胸にぽっかりと穴が空いたような虚しさを感じてしまう。そういう人は、仕事や家族、友人といった人間関係によって、知らず知らずのうちに、消耗してしまっている可能性があります。

そういう人に、よく私がお勧めするのは、「ひとりぼっちの時間」(=ソロタイム)を過ごす、ということです。

日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません。

私自身、病院に勤めていた20代、30代のころ、ときどき、「こんな毎日を過ごしていて、自分の人生に意味があるのだろうか」と、何に対しても意欲が持てなくなってしまうことがありました。そんなとき私はよく、お気に入りの公園を訪れ、一人でぼんやりと時間を過ごすようにしていました。

誰も自分のことを知らない場所を訪れ、一人っきりで静かに、ゆっくりとした時間を過ごす。そうすると不思議と、ふっと気持ちが楽になり、少し前向きな意欲が湧いてきたのです。

精神科救急の激しい勤務を続けていた当時の私は、自分でも気づかないうちに、心と身体をこわばらせていたのだと思います。「ひとりぼっちの時間」は、そうした緊張感から私を解き放ってくれる、貴重な時間だったのです。

皆さんも、一週間に一度くらいは、仕事や友人、恋人や家族など、日ごろの人間関係や役割から切り離された時間を過ごすようにしてみてください。それだけで、心がふっと軽くなる人は、少なくないはずです。

たとえば、喫茶店に行って、一時間ほど文庫本を読むのでもよいでしょう。近所をふらりと、目的を定めずに歩いてみるのもよいかもしれません。もしスケジュールが許すなら、ふらりと一人で旅行に出かけるのも、ソロタイムの過ごし方のひとつです。

私たちの思考や感情は、周囲の人間関係や環境から、常に強い影響を受けています。普段顔を合わせる人や環境から離れ、いつもと違う環境でひとりぼっちの時間を過ごす。

ソロタイムが私たちにもたらしてくれるのは、いつもとは違う思考であり、いつもとは違う感情です。

ひとりぼっちの時間(ソロタイム)、持つことができていますか?(イラスト:伊藤美樹)

 

 

一人っきりの時間を、明るく、爽やかに過ごす習慣を身につけておくことは、生きていくうえで、大きな力になります。

英語には「孤独」という意味を表す、AloneとLonelyという、ニュアンスの異なる2つの単語があります。Aloneは、物理的に「一人である」「孤立」といった、あまり価値判断を伴わない表現です。一方Lonelyという言葉には、単に「一人である」という状況だけではなく、さびしさや孤独感といった、ネガティブな感情表現が含まれています。

「ひとりぼっちで過ごすなんてさびしいし、まっぴらだ」という人は、無意識のうちに一人で過ごすことに対して、孤独感(Loneiness)をイメージしているのだと思います。しかし、「ひとりぼっちで過ごす」ことにさびしさや孤独感を覚えるとすれば、それは結局、今あなたが所属している群れーー会社や家族、友人――を失うことへの不安と恐怖心にほかなりません

私たちは、物やお金を失うことよりも、所属を失うことを強く恐れています。それはいわば「群れへの依存心」です。群れへの依存心を捨てて、ひとりぼっちの時間を過ごすことができてはじめて、人間関係のストレスから解放された、明るく、さわやかな状態が訪れます。

群れから離れ、一人になる(Be Alone)ことによってはじめて、私たちは、辛く、さびしさに満ちた孤独感(loneliness)から、自由になることができるのです。

 

 

話題沸騰! 各所で絶賛!!
『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』


著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊

アマゾン→http://amzn.to/2raktov

電子版(kindle、epub)→https://yakan-hiko.com/dc.php?no=12

honto→https://honto.jp/netstore/pd-book_28512870.html

 

■内容

他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!

5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!

「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」

「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)

<<各所で絶賛!! 話題沸騰!!>>

繋がりを繋がりに戻すためにはひとりの時間が必要です。「ひとりになってみる!」とひとり宣言をしてみる。そしたら思っている以上に勇気が出たり、自分の力を取り戻せていけますよ。(しいたけ占いのしいたけさんブログより)

「メレンゲの気持ち」で森星さんが絶賛! ラジオ「伊集院光とラジオト」「ハフポスト日本版」「ビジネスブックマラソン」など、各メディアで大きく取り上げられました!

 

名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:現:大阪精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『「鬼滅の刃」が教えてくれた 傷ついたまま生きるためのヒント』(宝島社)、『SOLOTIME~ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)『【新版】自分を支える心の技法』(小学館新書)『驚く力』(夜間飛行)ほか多数。 「THE BIRDIC BAND」として音楽活動にも精力的に活動中。YouTubeチャンネル「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。チャンネル登録12万人。https://www.youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk 夜間飛行より、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

津田大介×高城剛対談「アフター・インターネット」――ビットコイン、VR、EU、日本核武装はどうなるか?(夜間飛行編集部)
この冬は「ヒートショック」に注意(小寺信良)
総ブラック社会はやっぱり回避しないといけないよね~~『人間迷路』のウラのウラ(やまもといちろう)
殺人事件の容疑者になってしまった時に聴きたいジャズアルバム(福島剛)
【対談】名越康文×平岩国泰 ほめればほめるほどやる気を失う子どもたち〜「放課後」だから気づけた、子どもの自己肯定感を伸ばす秘訣(名越康文)
「中華大乱」これは歴史的な事項になるのか(やまもといちろう)
2015年買って良かった4つの製品(西田宗千佳)
「犯罪者を許さない社会」っておかしいんじゃないの?(家入一真)
「高倉健の死」で日本が失ったもの(平川克美×小田嶋隆)
五月病の正体 「どうせ……」というくせものキーワード(名越康文)
未来を見据えた働き方 カギは隙間時間にあり(家入一真)
週刊金融日記 第314号【簡単な身体動作で驚くほどマインドが改善する、日米首脳会談は福田財務事務次官「おっぱい触らせて」発言でかき消される他】(藤沢数希)
「5類」強行の岸田文雄政権が僕たちに教えてくれたもの(やまもといちろう)
子どもが飛行機で泣いた時に考えるべきこと(茂木健一郎)
「心の速度を落とす」ということ(平尾剛)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)

ページのトップへ