※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2018年1月26日 Vol.158 <人の振り見て我が振り直せ号>より
今年のCESで面白いものを見た。いや、正確には「面白いものがすでに当たり前になりつつある」のを見た、というのが正しい。
CESには自動車関連企業が多数出展するようになっているが、小糸製作所もそのひとつだ。写真は、同社が展示した「アダプティブLEDヘッドライト」だ。
・小糸製作所のアダプティブLEDヘッドライト。実は結構前から高級車などに搭載が始まっているもの。
これは、いわゆる「オートハイビーム」に関する技術だ。ご存じのようにヘッドライトには、照射位置を高くする「ハイビーム」と、低くして手前を照らす「ロービーム」がある。高速運転中や周囲に照明がない場所ではハイビームの方が走りやすいが、ずっとハイビームだと、前を走る車に光が入り、危険なことがある。そこでハイビームとロービームを切り換えながら運転するのだが、いかにも面倒である。そのため、前方の自動車の有無をカメラなどのセンサーで把握して、ヘッドライトの状態を自動切り替えするのが「オートハイビーム」だ。これはけっこう色々な車に搭載されるようになった。
小糸製作所のアダプティブLEDヘッドライトは、ヘッドライトがアレイ式のLEDになっていることを最大限に活かすものである。画像認識で対向車や先行車を発見すると、「その車がいる領域」だけLEDを消す、もしくは弱くする。そうすると、全体としてはハイビームなままで、前方の自動車のドライバーには迷惑がかからない……という仕組みだ。なかなか賢い。画像認識の利用例としても、LEDの利用例としても面白い。
・画像のように、「自動車がいる部分」だけを認識し、LEDヘッドライトの照度をコントロールすることで、「まぶしく」なるのを防ぐ。
この機構、まったくの新技術なのか、というと「そうではない」そうだ。私はよく知らなかったのだが、日本ではすでに2年ほど前から、一部車種にオプションとして導入が始まっている。それらの車種は特に自動運転装備などがあるわけではない。小糸製作所側が、アダプティブLEDヘッドライトのためにカメラから制御モジュールまですべてをセットで開発しており、自動車側のIT化とは別に搭載ができるよう工夫されている。今回CESに持ち込んだのは、アメリカでオートハイビームの導入が進む、との観測からであるそうだ。
この技術のいいところは、最新技術であるが、それをシンプルにパッケージング化していることだ。導入する側に負担が小さい。テクノロジーをうまくまとめあげ、得られる利益はいままでより大きなものになっている。
おそらく、「テクノロジーが普及する」とはこういう状況を指すのだろう。技術を基盤として当たり前に使い、問題の解決ができるようになることが重要なのだ。そういう意味では、音声アシスタント対応家電の急速な普及も、「技術拡散とその基盤化」の速度を示す、わかりやすい例と言えるのではないか。
おなじように、CESの最終日、いつものごとくエウレカパーク(CESのスタートアップ企業集積場。またの名を「面白い技術の砂金掘り」)をまわっている時のことだ。写真のような製品を見つけた。
これは「デジタルスノードーム」という製品。スノードームといえば、振ると中で雪が降るお土産ものの定番だが、そのデジタル版、といったところだろうか。持ち上げてのぞき込むと、そこには映像が見える。モーションセンサーで判別しているので、持ち上げていない時は映像は表示されない。なかなか面白いしかけだ。実にシンプルなものだが、実はこれ、スマートウォッチのディスプレイなどを使って作られているという。それなら開発も楽だしシンプルだ。
これもまた「技術の拡散」のひとつの形である。
・デジタルスノードーム。ちょっとした映像を見るガジェットだが、将来にはこういうものがお土産の定番になるのかも。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2018年1月26日 Vol.158 <人の振り見て我が振り直せ号> 目次
01 論壇【小寺】
「タイアップ広告」の対価問題を考える
02 余談【西田】
「今の技術」はすぐそこにある
03 対談【小寺】
セルフィー文化論 (3)
04 過去記事【小寺】
PTA広報紙を電子化したった (2)
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
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