以前遠巻きにお世話になった会社なのですが、株式会社武蔵野というダスキン方面の会社の社長、小山昇さんが怪気炎を上げているというので見物に行きました。
三流上司は飲みに行かず、二流は「社外の人」と飲む では一流は?
うわ、なんだこれ。
そういえば、中小企業向けのセミナービジネスをやっていたなあと思って調べてみたら、これまた手広くやっているようです。
新卒離職率わずか4%! 株式会社武蔵野の「勝てる採用」の最新メソッドを公開する『新卒採用イノベーションセミナー』を5月17日開催 - 株式会社武蔵野のプレスリリース
私自身も、まあ確かに酒は大好きでありまして、ウォッカ瓶片手にロシア出張を楽しく過ごしたり、変な飲み方をして救急搬送された経験もあり、一時期はビール党としてネットイベントをやったりもしていました。
結婚して三男出生後、40歳にもなったことだし、健康を大きく崩す前に量を飲む酒の飲み方は改めようと考え、いまは卓飲みを中心に週1回か2回程度に飲酒頻度が減り、それに伴って、外でのお誘いでも酒を口につける程度でビール瓶がケースで空けられるような飲み方はしなくなりました。
もちろん、仕事よりも家庭、育児介護に従事するようになり、いまや常勤の仕事は全部辞めたので、この武蔵野社の小山さんが言うようなコミュニケーションのツールとしての酒、飲み会という機能が低下したから、というのは確かにあります。
でも、採用で正面から「弊社では酒を飲めない人は採用しない」と言い切り、飲み会をしない上司は三流と言い切る姿勢は、リップサービスもあるとはいえ理解ができません。時代錯誤というレベルを超えて、これはちょっとした下戸に対する就業差別ですらあるのではないか、と思います。「生まれつき飲めない人を差別していいのか」というのは言いがかりではなく、それを公言すること自体、本当に駄目だと思うわけです。
中小企業だから、大概において面白い感じの変わった経営者がひしめている現状は確かにあるんですよ。ベンチャーだろうがJC所属の老舗企業だろうが、人の上に立ち続けられる人はどこか人間的に変わった存在でなければやっていけないのもまた事実です。しかしながら、この会社のコミュニケーションの主体は飲酒ですと言い切ったうえで、酒を飲まない管理職を三流と言い放つ神経が理解できません。他人の会社の下戸まで一緒に三流と言っとるようなもんですよ。
しかも、採用選考にあたって酒を飲めなければ採用しないとまで言い切るって、どういうことなんでしょう。企業文化を分かりやすく明示しているという以上に、就業に関する差別であって、こんなものが堂々とまかり通り、セミナーをやり、ウェブでインタビュー記事が出て、さしたる問題にもならないってのはどういうことなんでしょう。
で、中小企業のコンサルとしてはそれなりに名前の通った人でもあるようです。どこが惚れられて持て囃されているのか、記事や書籍、セミナーの紹介文を一通り読んだだけではまったく理解できませんが、ある意味で調子に乗っているのか「酒を飲まない管理職は三流」と言い放つ人が新卒採用の極意を語り、思い通りに部下を動かす方策を書籍で記すというのは、旧来型のパワハラ組織みたいなものなんでしょうか。いわば、立場の弱い人を使いたいように動かすことを理想としているようにすら見えますから。
SNSで「これ、ちょっとどうなの」と書いたところ、それなりの立場の人が「そういう感じの会社は少なくない」とか「最初から酒中心の企業文化と書いてくれるのは地雷除けになるのでむしろ助かる」などといった反響も頂戴しました。でも、それっていまどきヤバくないですか。上司が組織掌握のために飲み会奨励するのって、むしろ「酒の力を借りないと本音が引き出せません」という無能の集まりなのではないか、業務改善でアイデアを部下から自発的に出させる社風すら持ち合わせていないんじゃないか、とむしろ心配になります。
まあ、変わった会社が変わった方針を打ち出しているのは別にいいんですよ。ただ、就業差別や能力の規定にまで、飲酒できるかどうかで判断させちゃ駄目だと思うんですけどね。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.239 「酒を飲めない人は採用しない」発言はどうよと思いつつ、インターネット世界観の終焉やガチャ問題リターンマッチの悪い予感を語る回
2018年9月30日発行号 目次
【0. 序文】「酒を飲めない人は採用しない」という差別が騒がれない不思議な話
【1. インシデント1】テクノロジーの進化でもたらされる便利な製品・サービスをどこまで信用するが問われる時代
【2. インシデント2】そろそろ3回目の「ガチャ問題」リターンマッチが始まりそうな気配です
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. ボツ原稿フラッシュ】
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